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- / ISBN・EAN: 9784863855885
作品紹介・あらすじ
眼の奥に錆びた秤が一つあり泣けばわずかに揺れる音する
『悪友』で熱烈な支持を集める著者の、無二の進化を遂げた渾身の第二歌集。
【栞文より】
「救われたくない。ゆるされたくない。そう何度も叫んでいる。(中略)できれば全て脱ぎ捨てたいのだ。そうすればふたたび穢れず生きていける」(江戸雪)
「榊原の美意識は現代短歌において実に独自性が高い。そしてその根底には、神秘への思慕がある」(黒瀬珂瀾)
「この作家の器の大きさに感嘆した。自在な言葉が相応な重さを持って宇宙の謎に拮抗している。人間が人間である悲苦から逃げることなく、現代人の知性によって真っ向から対峙している。(中略)怖るべし・怖るべし・怖るべし」(水原紫苑)
【収録歌より】
銀漢に表裏があれば手触りは違うのだろう 指輪を外す
百合のように俯き帽子脱ぐときに胸に迫りぬ破約の歴史
額縁を焼(く)べてきたかのような貌ゆっくり上げてただいまと言う
ボトルシップの底に小さな海がある 語彙がないから恋になるだけ
ヘアバームのくらいにおいだ泣くのなら最初の一粒から見ていたい
【栞】
江戸雪「滅びの思考」
黒瀬珂瀾「かずかぎりなきあなたとわたし」
水原紫苑「宝剣の一行」
感想・レビュー・書評
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『koro』はエスペラント語で「心臓」を意味する言葉だそう。
平積みされたこの詩集の装丁が美術品のように美しくて、どうしたって目を引かれてしまう。
短歌も、とても美しい。
装丁のイメージをそのままに、榊原さんの、高貴な美意識というか芸術作品を手にしましたという感じ。
ただ時折、際(きわ)を感じる歌に出会ってドキリとする。
そして同じように、真っ赤な小冊子である栞にもドキリとさせられる。
これ、とてもお洒落だし歌集の深みも増して、素敵な仕掛けだと思った。
こちらには帯に言葉を寄せられている方々の解説あり。
『切り花を支える水の厚さ もうこれきりと知り硬貨を払う』
ん?と一瞬思ったが、多分どなたかの死期を知ったということか?
お見舞いの切り花を買うのは、もうこれきり。
"支える水の厚さ"と表現されているところに、これまでの様々な想いと、命の豊かさと儚さを感じる。
『明晰夢は呼び合うという。銀の塔の根元で待ち合わせする』
"明晰夢"とは、夢の中で"これは夢だ"と自覚のある夢のこと。
"銀の塔の根元"が何処かを調べるなんて野暮かなーと思いつつも検索すると、
フランスに、"銀の塔(フランス語でトゥールダルジャン)と呼ばれる、太陽の光に反射して銀色に輝く雲母で飾られたトゥールネル城の塔"
なるものがあるらしいと知った。
夢の中で待ち合わせをしたのはここかしら?
それとも、そことは全く関係なく、明晰夢の入り口を"銀の塔の根元"と詠んだのかしら?
『イカロスを幾度も墜とした手で作るオランジェットを舌にのせれば』
とても好きだと思った。
"イカロスを幾度も墜とした"とは、単にチョコレートを溶かした事を言っているのか?
それとも何かの喩え?
"墜とした手"がやけにリアルに感じられ、少し怖いのも好き。
他にも、お気に入りを幾つか。
『指だけを繋ぎ隣で泥船を見送っていた 星燃える夜』
『銀漢に表裏があれば手触りは違うのだろう 指輪を外す』
『ロングドレスをそうするように魂をたくしあげつつ死までを行こう』
『何度でも立ち尽くしたいありとある花を欲する花瓶のように』
『音を立て白木蓮が散ってゆく郵便受けを何度も覗く』
『ボトルシップの底に小さな海がある 語彙がないから恋になるだけ』
『寝た人の息がこの世を深くするそこまで落ちるため眼を閉じる』 -
一句一句に物語が広がる。私のような素人でもその美しさや本質を感じ取れてしまう三十一文字は、ぱらぱら適当に読んでみるのがおすすめ。
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「ロングドレスをそうするように魂をたくしあげつつ死までを行こう」p.27
読了されたのですね。
いくつか榊原さんの歌を読んだときは、私にはちょっとむずかしそう、と、思ったのですが...
読了されたのですね。
いくつか榊原さんの歌を読んだときは、私にはちょっとむずかしそう、と、思ったのですが、傍らに珈琲を。さんのコメントで少し理解できた気がします。
硬質な歌で、黒装丁がぴったりですね。
実は榊原さんの第一歌集『悪友』を図書館からお取り寄せ済みです。
どうもあるアニメの推し短歌にぴったり!と評判になったそうですが、そのアニメを観ておらず、置いていかれ感あります。
レビューするかは未定ですが、読むのが楽しみです♪
って、推し短歌とは、もしかして呪術廻戦ですか?
わー知らなかったー!
もしそうなら買わなけれ...
って、推し短歌とは、もしかして呪術廻戦ですか?
わー知らなかったー!
もしそうなら買わなければっ。
私、呪術廻戦すきなんです~。
榊原さんの短歌、かっちりと高貴な感じしますよね。
他を寄せ付けない凛々しさというか…。
そんな中でも、少し意味が分かったかなーと思う歌に出会うとホッとします 笑
あ、でも間違った解釈してるかもですよー!
私も、間違ったっていいのだ精神で楽しんでいるので♪
『悪友』って第2回笹井宏之賞大賞受賞してるんですね。
私はここに、第1回受賞の柴田葵さんの『母の愛、僕のラブ』を積んでます♪
呪術廻戦みたいですよ〜
他にも映画やら漫画やらの推し短歌っぽい短歌もあるので、お好きな方なら何倍にも楽しめそうです。
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呪術廻戦みたいですよ〜
他にも映画やら漫画やらの推し短歌っぽい短歌もあるので、お好きな方なら何倍にも楽しめそうです。
榊原さんは『推し短歌入門』という短歌入門書も出されていて、そちらも気になります。
「間違ったっていいのだ精神で楽し」む!
短歌とか芸術とかは作者のものでありながらも、(発表された時点で)公共のものでもあり、また、読む人それぞれのものでもありますもんね。
自身も歌を詠まれる西加奈子さんは「短歌は”わからなさ”を許してくれる」と、どこかでおっしゃっていました。
『母の愛、僕のラブ』気になってます。
キュアおでんの歌がめっちゃくちゃキュートで、でっかい愛を感じます。