静かなる旅人

制作 : 野口園子 
  • 静山社
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本棚登録 : 13
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863890862

作品紹介・あらすじ

書に魅せられ、単身、混乱の中国へ-世界的フランス人画家の自己実現を求めた闘いの半生記。

感想・レビュー・書評

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  • 今回は、ライブラリー・ワークショップ企画「総合科学営業 『僕の読み解く数冊の本』」で展示させてもらっている本を紹介します。

    本のテーマは「極めるということ」。次の6冊を展示しています。

    『ファンタジア』ブルーノ・ムナーリ (視座 『自然に触れる』)
    『マン・オン・ワイヤー』フィリップ・プティ (視座 『人と触れる』)
    『日本語ほど面白いものはない』柳瀬尚紀 (視座『人と触れる』)
    『先生とわたし』四方田犬彦 (視座 『人と触れる』)
    『静かなる旅人』ファビエンヌ・ヴェルディエ (視座 『人と触れる』)
    『フェルマーの最終定理』サイモン・シン (視座 『ものに対応する』)


    一見ばらばらの本ですが、読んでいるうちに私の中でつながりを感じて、このテーマに集約されました。


    「極める」にも色々あります。芸術を極める、研究を極める、自分の夢を実現する……。

    そしてまた、これらを語る本の切り口も様々です。

    道を極めた人のものの見方を示すもの、極めた人の人生について語るもの、極められた研究の成果を理解するもの……。


    これらの本を読んで共通に感じたのは、何かを身につける、自分が納得いくまで極める、という領域へは、当然のことながら自分で感じ自分で動くことでしか至ることができないのだ、ということ。

    それには、本物に触れ、現実に触れる、ということが必要になってきます。

    誰かのフィルターを通じて現実を見ていては、そこには至れません。

    ネットで何でも調べられる今だからこそ、地上に足をつけて歩く感覚をしっかりつかみたい。

    きっとそんなことを考えていたのだと思います。


    実は、この本を集めたときに、もう一つ、テーマの候補がありました。

    それは、「良い師を得る」。これらの本のいくつかには、「師」が登場します。

    「良い師を得る」ということは、数百冊の本を読むのに匹敵するな、と感じたのです。

    それは、道を極めるためのヒントを得られる、とか、近道を教えられる、ということではありません。

    師が持っている知や技の世界の前に立たされて、自分の力でその意味を捉え、自分の世界と照らし合わせて自分のものにしていく、という作業を繰り返す中で、本を読んで得る知識よりもはるかに多くの、有機的に繋がりのある「自分にとって必要なもの」を得る、ということ。


    大学図書館ができることは、多くの方に学びのきっかけを掴んでもらうことだと思っています。

    そして、学生のみなさんには、大学で良い師に出会うきっかけがあるはずです。


    今回展示している本はほんの10数冊ですが、これが、誰かにとって「師」のような存在、あるいは良い師に出会うきっかけになれば、と願っています。


    http://opac.lib.tokushima-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?materialid=210006164

  • 文化大革命以後、中国の伝統を受け継ぐものはわずかだった。その黄先生もとで心血をそそいで修行したフランス人女性の話。真の芸術家の探究心と師との交流が本当にすばらしい。

  • 文化大革命後の中国で、中国ではほとんど排斥されてしまった書家を師匠として書道の修行をしたフランス人女性の自伝。すごいよ、芸術家!やっぱり何がしかの道を究めたい、という人は尊い。そして、中国の不可解な部分と、日本にも大きな影響を与えている深遠な思想とのギャップのすごさ。ここに身をおいて暮らした人の語る言葉は深くて重い。「人間は言葉に頼りすぎる」という師匠の言葉に「はっ」とした。この人の作品を見ないと本当のことは理解できないのかも知れないなあ。

  • フランス人の芸術家である著者は1983年(当時21歳)から中国四川省の大学に留学。当時の四川省は欧米人はほとんど見かけることもなく、とても貧しい状況であった。
    中国では、文化大革命(1966年~1976年)の時期に多くの伝統芸術が迫害され、失われた。芸術家たちは文革期に迫害を受け、死に追いやられるか心を閉ざしてしまっており、著者が留学をした時期においても、真の芸術を学ぶ師を見つけることは容易ではなかった。
    そのような状況ながら、著者は出会った尊敬できる人々と人間と人間として関わりあい、芸術・思想を学びとっていく。
    自国と他国の違いというような視点ではなく、人間と人間の関わりあい、とでもいうような著者の視点が共感できるとともに尊敬出来た。自分自身もこういう関わりあい方をしたい。
    この本を読んで改めて、中国の歴史的な深みに興味を持ち、現地での出会いを如何に良質なものに出来るかを再考させられた。
    また、文革とはなんだったのか、共産党とは何か、天安門事件とはなにか、これを知らぬまま中国に行くわけにはいかないと悟った。

  • 一人のフランス人書家の物語。情熱に身を任せ、遥か異国へ旅立った彼女を待っていたのは厳しい現実だった。全体主義の国というまるで刑務所のような場所で、その環境に翻弄されながらもめげることなく、最後には中国そのものを自分の中に飲み込んでしまった強さに脱帽…。アーティストの物語でありながら、精神修行者の物語なっているほど、この女性の精神性の高さには感動させられる。

    中国という国に住み、中国の人と同じ生活をした人間にしか分からない視点で描かれている中国像というのも新鮮だった。日本のマスゴミのように、適当なことを賛美するだけのいい加減な情報より遥かに真実味がある。最後には国境を超えた異文化の融合にまで到達しているのが素晴らしい。

    非常に読み応えのある本。

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