- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863895034
作品紹介・あらすじ
【告解】罪を告白し、神に許しを求めること――。しかし、父が犯した罪は中学3年生の息子が思っていた以上に重かった。人を殺した父は、そしてその息子は、許されることを願ってもいいのだろうか……。ある日突然「加害者家族」となった少年の、再生とゆるしの物語。
感想・レビュー・書評
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父親が逮捕される…。突然、事件加害者家族となった主人公。その苦悩が描かれます。
加害者家族ではあるけれど、では、家族の責任とは。果たして世間は、子どもだからと切り離して考えてくれるだろうか?
主人公は、自分の環境がめまぐるしく変わっていきます。父親が人を殺し、逮捕されたから。
大人たちの判断に流されるしかなく、子どもたちの心は不安定になっていきます。
印象的だったのが、『裁判に有利』という理由で、弁護士が、被害者遺族に謝罪の手紙を書くように、と、母親に言う場面です。
主人公は目の前の、このやり取りを、どういう思いで見たでしょう。まだ事件の全容もわからなく、父親は家族との面会を拒否した状況で。
やがて、主人公は、自分の中の暴力性に気づき、父との血の繋がりを自覚します。
加害者家族だからと言って、家族がみな加害者だとは思いません。しかし、では家族は被害者かと言えば、世間はそう見てくれない。
自分や自分の回りにこのようなことがあったら、どう生きていくのが正解だろう。
この問題の答えは、あるのでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
父が殺人を犯し、一夜にして加害者家族になってしまった一家の物語です。
毎日のようにどこかで殺人事件が起こっていますが、その倍する人数が加害者家族となっているのですね。自分は何も変わっていないのに、世間からの目が一気に変わってしまう。本当に悲しい事だし、どうしようも無い事でもあります。
特に親が犯した罪を子供が償う必要がどこに有るのやらと思いますが、世の中にはそう思わない人が沢山居るんですね。「犯罪者の子供」という冷静に考えれば異常なこの言葉が
、正義として扱われる頭の中というのは非常に恐ろしいものがありますが、そうでなくともはれ物に触るような態度になってしまう事は否めません。
本書は他のこの手の本としては青少年向けという事で柔らかくなっていますが、実際のドキュメンタリーを見てもこんなものではないと思います。
進学、就職、結婚に暗い影を落とすことになる事は明白です。個人ではなくチームで罪を被る辺りが本当に日本的だなあとしみじみ思います。生まれてしまえば違う人間なのに変な感じです。
とは言え、少年が殺人を犯せば、親としての責任を追及してしまうであろう自分もいるんだよなあ・・・。でも世の中から蛇蝎のごとく扱われる必要だけは絶対ないと断固として言えます。 -
大人向けとしたら物足りないけれど、YAと思えばとても良かった!
父親が殺人犯になったとしたら…
現実はもっともっと辛い思いをするだろうし、人間不信になってもおかしくないだろうけれど、そういうドロドロは大人向けにお任せしましょう。
明るい希望を与えてくれる結末は、未来ある子供たちには絶対的に必要なものだと思うのでこの終わり方はとても良かったと思います。
それにしても、いとうみくさんの書く物語の中の親はどうしてもどこか不甲斐なかったり、こうはなりたくないと思わせられるんだけど…
これはあえてなんだろうなぁ、と今さらながらに気づいた。
親のいないところで子供は格段に成長するのだろうし、また私みたいに親目線で読んだ時に、あるべき親の姿を考えさせるという狙いなんじゃないかなぁ。
たとえ現実がどうあろうとも、やはり子供たちには、未来は明るいんだって思ってもらいたい。そういう世の中にしていかなければならない。そのことは、忘れないでいたいな…
↑こういうのを、子供たちは敏感に感じでしらけちゃうのかもしれませんが… -
いとう みくさん、初読み。
資料種別はティーンズだったが大人が読んでも考えさせられる。
いつもと変わらない朝の風景、突然訪問して来た警察官に父は連行されて行く。
どこにでもいそうな一家族が父の逮捕によって今までの生活が一変し「加害者家族」となってしまう。
中学3年生の涼平の目線で物語が展開して行くが、殺人を犯してしまった父親に対する思い、母親や弟、そしてクラスメイトへの思い、それらが丁寧にリアルな心理描写で描かれている。
本当の被害者は当然殺された者だが加害者の家族もある意味では被害者だ。
誰もが陥る可能性のある物語。 -
お父さんが殺人をし、犯罪加害者家族になってしまった。15才の涼平の立場で書かれています。
父に対する愛情や悲しみや怒り。
自分ではどうすることもできない犯罪加害者家族という立場。そこから逃げたい気持ちと、向き合わなければならないという気持ち。
それまでは、なんの屈託もない15才の中学生だったのに、その日からガラッと変わってしまう。
周囲の心ない言葉や他人事のような慰め、腫れ物にさわる態度。そういうものに傷つけられていく。
小学校低学年の弟、周平も彼なりに受け止め乗り越えようとする姿が心を揺さぶる。また、涼平は、周平や母の辛さを助けたいと思う気持ちもある。
息もつまるような苦しい気持ちをよく書いてくれたと思います。
そのなかでも、希望の見える終わりかた。
人を傷つけ不幸にするのも人だけれど、人を助け温めてくれるのも人なのですね。 -
この本は四人家族の長男視点であるが、もし幼い次男視点だったら、もし母だったら、もし人を殺めてしまった父だったら、また別の描写があった。
読み手の家族が円満であればある程、この本は危機感を与えてくれるかもしれない。
一番身近にいて一番信頼できるはずの家族の誰かが犯罪を犯してしまう。しかもそれは突然起こる。
さっきまで平凡な日常を送っていたとしても、これから明るい未来が待っていたとしても、突然に起こる。
家族、友人が苦境に立たされた時、排除せず手を差しのべる事ができるだろうか。 -
重いテーマだけど中学生の息子目線で分かりやすかった。
よい家族、よい友人に恵まれて、加害者家族の環境がこうだといいな、的に立ち直っていく。
弟を守りたい兄、子を守りたい母、娘を守りたい親、優しさにじんわりする。
でもYAの域で、大人目線だと小説としてはもの足りない。 -
これも中学生向けくらいの感じで書かれている感じがした。父親が殺人犯になったら。そんな状況の中で、家族が巻き込まれて行くあれこれは、あくまでこの物語の中でこそ成立はしているけど、それは現実のものとは若干かけ離れていて、デフォルトされている気がした。まあ現実のものをそれほど詳しく知っているわけではないから、あくまで違和感としてしか語れないのですが。多分、それぞれが一貫し過ぎているんだな、すごく小説然としている印象。小説なんだけど、でも人間を描くなら、なんかこうもっともがくだろうし、足掻くだろうし、気持ちや考えの面で矛盾もすると思う。ちょっと美し過ぎたかな、テーマの割に。でも読みやすく、1時間程度で読めてしまいました。