長男の出家 新版

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  • 芸文社
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本棚登録 : 16
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863961210

感想・レビュー・書評

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  • 名前が身を現します。

  •  芥川賞を受賞した「長男の出家」と、描き下ろしの「長男の出家・その後」の二編を収録し、2年程前に再版されたものである。
     小説、というよりも、ドキュメンタリーと捉えた方がいいのかも知れない。
     特に「長男の出家・その後」は完全なドキュメンタリーだろう。
     小学校3年生の長男が「僧侶になりたい」と突然父親に言いだし、実際に中学になって禅寺に出家させるといった内容。
     出家というのは、戸籍まで抜いてしまうことだというのを、ここで初めて知った。
     父親としての葛藤、母親としての葛藤、妹の葛藤、夫婦間の葛藤、つまりは息子が本当に出家してしまったことで発生した家族の葛藤が描かれている。
     特に夫婦間の葛藤は、出家によって発生した事象だけでなく、出家によって表面化した事象も含まれており、読んでいるこちらも非常に不安になる。
     僕としては、どちらかというと父親の「ちょっと責任転嫁気味」な態度にイライラさせられた。
    「縁」だとか「修行」といった言葉で誤魔化してしまおう、という意図が(実際にはそういう意図はなかったとしても)見え隠れして、読んでいるこちらまで、どうにも煮え切らなかった。
     文章や語り口はいい意味でクセがなく、非常に読みやすい。
     内容も割と面白いのでスイスイと読めてしまうのだが、例えば「何故この息子は僧侶になりたかったのだろう」といった初動を含め、出家した息子に関する情報は少ないようにも思えた。
     父親の一人称で語られており、また出家した息子との連絡や面会もままならない状態が続いていたこともあり、それは致し方ないことなのだろう。
     それと、僕のような独身で、もちろん息子も娘もいない人間が読むのと、親として子育てに従事したことがある人間が読むのとでは、読後の印象にかなりの違いがあるのだろうと思う。
     独身者である僕としては、やはり第三者的な視線でもって面白がるのが限度だったように思う。
     それ故の星三つってところです。

  • 1987下半期 芥川賞

  • 1987年、今から約四半世紀前の芥川賞受賞作が、昨年復活。 新たに『長男の出家・その後』が追記された新版の形で。
     時が過ぎて初めてわかること、親の年齢になってやっと気づくこと、親子の縁、夫婦の縁・・・読み進むうちに自分自身の人間関係と重なり、考えさせられる一冊。
     なぜ、今、再び出版されたのか? まるで公案を受けとったような心境になります。

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著者プロフィール

三浦清宏(みうらきよひろ)1930年生まれ。小説家、心霊研究者。元明治大学理工学部教授。アメリカ・サンノゼ州立大学卒業後、アイオワ大学ポエトリー・ワークショップ修了。1988年「長男の出家」で第98回芥川賞受賞。2006年「海洞」で第24回日本文芸大賞受賞。2009年『近代スピリチュアリズムの歴史』で第3回湯浅泰雄賞を受賞。著書:『イギリスの霧の中へ――心霊体験紀行』(南雲堂)、『長男の出家』(福武書店、新版は芸文社)、『カリフォルニアの歌』(福武書店)、『摩天楼のインディアン』(同)、『海洞――アフンルパロの物語』(文藝春秋)、『近代スピリチュアリズムの歴史――心霊研究から超心理学へ』(講談社)ほか。

「2014年 『見えない世界と繋がる 我が天人感応』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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