- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864030953
作品紹介・あらすじ
小山田信茂はなぜ武田勝頼を裏切ったのか!?不明な点の多い一族の系譜や武田氏との関係、支配領域等、通説に鋭く切り込む。国衆論や取次論など最新の研究成果を駆使し、小山田一族を「不忠者」という評価の呪縛から解き放つ。
感想・レビュー・書評
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小山田信茂はなぜ武田勝頼を裏切ったのか。
不明な点の多い一族の系譜や武田氏との関係、支配領域等、通説に鋭く切り込む。国衆論や取次論など最新の研究成果を駆使し、小山田一族を「不忠者」という評価の呪縛から解き放つ。(2013年刊)
第一章 院政期・鎌倉期の小山田氏
第二章 南北朝・室町期の小山田氏
第三章 小山田信長・弥太郎と武田氏の内訌
第四章 小山田越中守信有の武田氏従属
第五章 小山田出羽守信有による「月定」朱印の創出
第六章 小山田弥三郎信有の法令と裁判権
第七章 小山田信茂と武田信玄
第八章 小山田信茂と武田勝頼
第九章 小山田氏の家臣
第一〇章 滅亡後の小山田一族
著者は、史料を駆使し、院政期・鎌倉期、南北朝・室町期の小山田氏の動向に迫っている。 いちいち出典を明記しているのには感心させられる。
(出典が明記されていると、再現性が高くなるので好感が持てる。私好みである。 普通は文章が読みにくくなるのであるが、苦痛を感じさせない。)
それにしても、鎌倉時代の何と凄惨なことか。忠誠を尽くしても将軍の不興を買うと簡単に粛清されてしまう。御恩と奉公とは言うが、当時の御家人のメンタリティーはどの様なものであったのか興味深い。
戦国時代は今川、北条、武田の三国の争いが本格化し、国境に位置する都留郡主である小山田氏も巻き込まれていく。小山田氏は、武田氏と争いながらもやがて従属し、国衆でありながら武田氏の被官でもある存在となる。
飢饉、災害、度重なる軍役負担。本書を読んでいると中世の社会の実相が浮かびあがる。各章では、小山田氏による内政の状況も解説されており興
味深い。上位権力である武田氏との関係などは、イメージとしては、現在の県と市町村の関係に近い気がした。武田氏の影響を受けて内政が整備されており、朱印を使っている事にも驚かされた。
小山田信茂はかなりの教養人であり、有望な若手侍大将として期待され取次としての活躍が目立つ。
信玄の西上作戦、勝頼の治世、長篠の敗戦、武田氏滅亡など、丸島先生の見解が読めて面白い。以下箇条書きすると
小山田信茂が投石隊を率いたという説は否定。(水役之者が投石)
長篠の合戦、俗説の武田騎馬隊(ほぼ全軍が騎馬隊)は否定するが、武田氏や後北条氏が兵科別の編成をしていることや、騎馬部隊による馬入りという戦法があった事を紹介している。
長篠の戦いでは重臣が多数戦死しているが、城代クラスの壊滅により、軍政外交上の影響が大きかった事がわかる。(逆にこの状況から7年余、武田氏が勢力を保ったという事が凄いと感心した。)
以後、三河、遠江、駿河と武田氏の勢力が衰え、ジリジリと後退していく様子がよくわかる。
国衆は戦国大名に従属し、その軍事的安全保障体制の保護下に身を置くことで家と領の存続を図ってきた。その双務的な関係に綻びが生じた結果、武田体制は一気に崩壊することとなった。
著者は、従来、裏切り者というレッテルにより不当な評価を受けてきた小山田信茂の行動にも理がある事を示している。
本書を読んで、小山田氏の事例から国衆の立ち位置が理解出来たのが良かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦国時代、武田氏に従属した国衆である小山田氏の概説。関係文書を編年式で辿る形式で、歴代の統治や政治行動がどのように変遷していったかが分かりやすい。鎌倉・室町期からの系譜の考察も興味深かった。
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国衆!