- 本 ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864100496
感想・レビュー・書評
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「捨て」に共感できない部分も多いけれど、一歩抜きんでたギャグマンガを書けるのは、こういう変わった人なんだ、と納得。
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『じみへん』などの作品で知られるマンガ家が、自らの特異な生活ぶりを語った一冊。
「変な作品を作っているクリエイターが、会ってみたら意外に普通の人だった」というのはままあることだが、これは「変なマンガを描いている中崎タツヤは、やっぱり変な人だった」という本だ(笑)。
タイトルからもわかるとおり、中崎は徹底した「もたない生活」を送っている。本書には巻頭8ページにわたって彼の仕事部屋がカラーグラビアで紹介されているのだが、あたかも「人が引っ越していったあと」のように何もない。
とはいえ、本書は僧侶が出すような「無所有」の哲学を説いた本ではないし、最近流行の「断捨離」のすすめでもない。「無所有」や「断捨離」がモノへの執着を断つ(減らす)ことで心を自由にしようとするものであるのに対し、中崎はむしろ「もたないこと」「捨てる」ことに執着しまくっているのだ。
《CDを買い始めると、好みはめちゃくちゃなりに、ジャンルごとに揃えていこうと思ったりもします。
しかし、ときどき並んだCDをみながら、無駄なものはないかと血眼になるくらいの勢いでチェックしていって、捨てるものをみつけてしまうからたくさん揃わないんです。無駄なCDを間引いていって、少しずつ厳選され、最後には一枚もなくなってしまいます。
(中略)
いつも部屋の中をぼんやり見回しながら、捨てるものはないかと探しています。》
「捨てる技術」に長けているというより、捨てることにとらわれた強迫神経症に近いのである。
《このビョーキを私は“スッキリ病”と称しているのですが、そのくらいライトな感覚で自分の性癖をとらえています。》
じつは私にも、中崎ほど重症ではないが、よく似た傾向がある。モノを捨てることに快感を覚えるのである。
もう二度と読まないであろう本やCDなどは、ガンガン捨ててしまう。資源ゴミの回収日とかもちゃんと把握していて、毎回いそいそとモノを捨てる。つい先日もカセットテープとビデオテープを全部捨てて、すごくスッキリした。
加齢とともにそうした傾向は深まりつつあり、最近では、若いころには大事にとっておいた思い出の品(つまり、なんの実用にもならないモノ)なども、抵抗なく捨てられるようになった。
ゆえに、中崎の“スッキリ病”に共感を覚える部分もある。が、中崎は私にはとても真似できない境地に達している。なにしろ、自分が描いたマンガ原稿を捨ててしまう(!)というのである。
《二年くらい前に、すべての原稿を捨てました。(中略)ついでに一冊ずつとっておいた自分の単行本も全部断裁して捨てました。
(中略)
出版社から返却された漫画原稿は、自分でシュレッダーにかけて捨てています。》
ううむ……。このへんの記述はファンが読んだら複雑な気分になるだろうな。
断捨離ブームに冷水をぶっかけるような、ある種の「奇書」。もっとゲラゲラ笑える本かと思っていたのだが、読んでみたら笑えるというより絶句するような突き抜けた内容だった。 -
装丁がいいね!そのままでもいいけど、カバーを取ったときのデザインが好き。カバーの紙も好き。
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これは超好きだわーっ
要らないものを持ちたくない
視界をクリアにしておきたいんだよね
なにもなくて身一つでふらふらする自由ってなんといいものなんでしょう
これは読み返すね
カーテンがなかったら青空が見えて気持ちいいんだけど、防犯的には最悪だから仕方なくつけている私
CDもさっさと処分したいし。
やる気がわくんだかわかないんだかよくわからなくなるけど、でも気持ちはわかる -
モノを捨てる方法論的なものをイメージしていたのですが,
モノを持たないことに関するエッセイ的な感じでした。
ちょっと――かなり?――病的な感はするが,
本人はちょっと変わっているくらいの認識である。
なぜならば,人に危害を加えているわけでもないし,
反社会的な行いをしているわけではないから
――と中崎さんは言っている。
本書に関する形式的なことを言えば,
「もの」ではなく「モノ」や「物」と表記した方がよい。
ものの云々…などと文章が続くと読みづらい。
モノを溜め込んでしまっている人が,
なかなか重い腰を上げられないとき,
本書を読めば,モノを捨てるモチベーションが上がるかもしれない。
極論,人間が生きていく上で必要なモノはあまりなく,
故に,大抵のモノを捨ててしまっても,
案外,どうにでもなってしまうものである。
某掲示板の以下の書き込みが思い出される
――一部改変,要約してある。
病院に入院中の人が,病室のキャビネットに納まる荷物で
毎日過ごしていたら, アパートにあるたくさんの荷物の
無駄さに気付いた。
人間,病院で死ぬ人が多いわけだから、
最後まで持っていける荷物の量はあのキャビネット分だけである。 -
巻頭に筆者の仕事部屋の写真が掲載されており、その極限すぎるシンプルライフに驚きます。断捨離とは次元が違う”もたない”っぷりは圧巻。不要なものをそぎ落としていく過程が淡々と綴られているのがシュールです。
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この本の前では、断捨離なんて生ぬるい。
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一漫画家さんの、「無駄」を捨てる本
巻頭に仕事場としているアパートの部屋が写真として載っているが、これが本当になにもない。冷蔵庫ない。キッチンのガスコンロさえ取り外してあるのでポットも鍋もインスタントコーヒーさえない。仕事机は組み立て式のパイプ机一つ。椅子に至ってはクッションどころか背もたれさえもない待合室風の簡単な丸椅子一つ。お引越しするときにはあきらかに普通乗用車一回で済みそうなほどのものしかない。ここまできたら、仕事場もいらんのじゃないかと私なんかには思えてしまう。
ご夫婦で四国遍路を巡られたときは途中、出発時より荷物の量を1kg減らしパンツも換え1枚にされたらしい。恐るべし。
無駄なものは捨てる。捨てる性分なのに物を買う。が、それが無駄だと思うとまた容赦なく捨てる、たとえ高額で買った商品だったとしても。
ポケットティッシュや薬を持たずに外出するなんて不安で到底出来ない私にはなんだかようわからない世界で、こんな生活をしている人もいるんだなぁと教えていただきました。
中崎タツヤの作品





