ムチャチョ (EURO MANGA COLLECTION)

制作 : 大西愛子 
  • 飛鳥新社
4.46
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本棚登録 : 48
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864101592

作品紹介・あらすじ

1976年、独裁政権下の中米ニカラグア。教会の壁画制作を任された若い修道士ガブリエルは、「ものの表皮」の奥に隠された美を知り、貧しい村人やゲリラとの接触を経て革命に身を投ずる。困難な時代を駆け抜けたある少年の成長の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 1976年、Tachito大統領の独裁下にある中央アメリカのニカラグア。
    優れた絵の才能を持つ、神学生の Gabriel は、神父の Joaquin に連れられて、 Joaquin の友人の Ruben 神父の教会の壁画を描くため、Nicaragua の奥地の村へ赴く。  Gabriel は、アメリカから父親が持ち帰った、宗教画集からヒントを得たクロッキーを Ruben へ見せるが、Ruben は、「その様な絵じゃ、自分の名前すら、ろくに書くことの出来ない、この村の人々を感動させることは出来ない」と言い、Gabriel へ、村へ出て、村人の姿をスケッチするよう勧める。

    その頃、村では、Tachito 大統領の支配下にある軍隊の、村人に対する暴虐無人に振舞いに、村人の怒りが爆発し、レジスタント運動が広がりはじめていた。 村人との接触を通じて、人間的に成長を遂げた Gabriel は、ついに、村人たちを感動の渦に巻き込む、壁画を描くことに成功したのだが・・・


    水彩画を思わせる、グラフィックは、どんな小さなコマですら、構図、表情、細部の色使い等、手を抜くことなく、丁寧に描き込まれています。 南アメリカの貧しい村、そして、村人の様子はもとより、ジャングルの中の生い茂る植物、巨大な根を持つ巨樹、うねる枝、夕日に紫色に染まった空、黄色に染まった木々、夜のジャングル・・・等、絵にするのがとても難しい草や木ばかりのジャングルの風景を、繊細な表現力を持って表現し切った著者の技量には、感嘆の念がもれました。 

    才能のある写真家が撮影した、人物写真を見ると、その人の人生が透けて、見えてくるような感覚を覚えることがありますが、このBDの絵にも、それに似た思いを抱きました。 このBDの作中人物は、もちろん、架空の人物だと思いますが、その絵を通して、彼らの人生が伝わってくるような気がしました。
    又、一般的なフランスの漫画の様に、登場人物の台詞で、状況説明をするのではなく、ほとんどの行動が絵で表現されているんで、快適な読み心地を味わうことが出来ました。

    又、ホモセクシュアルという、これも、また、とても扱いにくいテーマが出てくるのですが、これも、芸術的に、とても美しく表現されているので、読んでいても、ショックを受けるどころが、著者の表現力の豊かさに、ため息が出てしまいました。

    一人のブルジョア生まれの少年が、政府の横暴に苦しむ村人たちの生活を知り、ジャングルの中でゲリアと行動を共にしながら、成長してゆく姿に併せて、真の芸術は一部の特権階級のものではなく、民衆の心を掴む力を持っていなければならないという、メッセージを、読者に投げかけているストーリーには、骨があり、読み応えバッチリ。

    あるフランス人が、「manga(日本の漫画)は、娯楽。だけどBDは芸術」と豪言していたのを聞いて、

    「manga だって、芸術とまでは行かなくても、かなりいい線いってるのもあるし、BDだって、かなり下らないものあるので、これはとんでもない偏見」と、憤慨した事があるのですが、このような作品を目にすると、彼の言葉にも一理ある事を認めなければならないと思いました。  

    昨年から、読み応えのあるBDの邦訳が、ぼちぼち出版される様になりましたが、そんな中でも、BDファンなら、これは買っておいて損はないと思う一冊なのですが、あまりBDなんか興味のない、腐女子系の方にも、お勧めしたい、BDには、珍しいタイプの最高のグラフィックに、骨のあるストーリー、そして、読み易さ満点の、3拍子そろった、超超お勧めのフランス漫画です。

    本レビューは、以前ブログにアップした「Muchacho、tome 1」(http://bibliophilie.blog3.fc2.com/blog-entry-142.html)と
    「Muchacho、tome 2」(http://bibliophilie.blog3.fc2.com/blog-entry-143.html)のレヴューを元に書かれています。邦訳は未読。

  • バンドデシネ初挑戦。オールカラーでとにかく美しい。心理描写がなくても人々の喜怒哀楽が感じられる。背景が白とか黒とかある種の記号と化した日本の漫画とは違って、背景はそのまま背景なのだ。三人称の神の視点で見る絵画というイメージ。
    ムチャチョはスペイン語で少年という意味らしいですが、ゲイの男が主人公にムチャチョ(坊や)と呼んでいます。響きが日本人には馴染みませんね…タイトルもそうだけど表紙は人物より風景画をメインにもってきてもらいたかったかなぁこの作品の素晴らしさがあまり伝わらない。同性愛は後半あたりから展開されます

  • 前々から、よく行く本屋さんのアメコミと銘打った棚にあって気になっていた本。よく知らないけどこれはアメコミじゃないような…というツッコミと、表紙の力強さに惹かれて結局購入。結果大満足。

     ある集落の協会の壁画を任されたガブリエルが、村人やゲリラと触れあい、成長・生き抜くストーリー。壁画を描く前に、自らも筆をとっていたことのある教会の神父から、人間の表皮の内側を描くように指導され、村人をスケッチし、少しずつ本質を見出そうとしていき…表紙から伝わる力強さが作中でも伝わってきて、混迷の時代を生き抜く強さと輝かしさが…読み終わったあとに切なさと感動がブワワッときて鳥肌モノでした。
     ゲイであり、父が国の有力者であり、なおかつゲリラに賛同し自らも身を投じるという、どの方面から見ても味方をつけにくい状況で、彼自身が成長し自らの道を決めていこうとするのは、見ていて苦しいけど、とても輝かしい…!

     ここ数年で、久々にすべてに納得・感動した漫画でした。素敵!

  • 書店で通りすがりに出会い、色彩のすばらしさで購入。

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