亡国の農協改革

著者 :
  • 飛鳥新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864104388

感想・レビュー・書評

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  • 私は北海道で農業に関する仕事に従事しており、農協改革に興味があって本書を手に取った。

    結論から言うと、戦後の農協設立の歴史については勉強になったが、内容としては現在の農協改革の問題の指摘にとどまり、対策が書かれていないために、それ以上に得られるものはなかった。

    また、書かれていることが、地方の農協や農業の現場の感覚とズレすぎている点が気になった。

    例えば、JAピンネのAコープについての話。

    新十津川町と浦臼町をエリアとするJAピンネについて、「街には他のコンビニエンスストアも、商店街もない」と書かれているが、石狩川を渡った隣町である滝川市には、コンビニもガソリンスタンドも揃っている。JAピンネから、車で10分もかからない場所である。
    さらに、車で1時間も行けば、北海道第2位の都市である旭川市がある。

    JAけねべつについても、周りにコンビニやガソリンスタンドがないように書かれているが、車で20分もかからない中標津町内に、東武サウスヒルズという巨大スーパーがあり、生活に必要なものはほとんど揃う。

    確かに、車で移動しなければならない距離に買い物に行くのは、高齢者には困難なこともある。だからこそ、コンパクトシティ化の議論がでてきているのが現状である。

    JAの担当エリアだけを見れば、コンビニやガソリンスタンドがないかもしれないが、隣近所の市町村には、衣類や書籍も売っている民間のスーパーや、24時間やっているコンビニがあることが多いのではないか。

    本書は、ものごとの一面だけを見て、JAの必要性を論じているように感じられた。

    安全保障の面から、東京への一極集中を避けるべきというのはその通りだが、その、一極集中を避けるためにも、中規模都市のコンパクトシティ化などの議論が盛り上がっているのが時流である。

    農協やAコープが、地域を維持するために不可欠だというのはそのとおりだが、何も変わらずに今のままでいいかというと、そんなことはないだろう。

    各地域に人口を分散したままの状態が、果たして日本国を守るための安全保障の状態としてベストの状態なのか。
    今後、農協の理事に経営者を招いたり、いくつかの単位農協を合併するような流れは避けられないだろう。
    守りすぎも問題だし、攻めすぎも問題である。攻めと守りのバランス、経済活動と伝統を守る活動の両立ができるような仕組みが必要なのかもしれない。

  • 「日本は先進国なのだから食料は海外から輸入すれば良い」「和牛など海外から求められる高品質の食品を輸出するなどして農家は自助努力によって所得を向上させるべき」といった誤った考えを改めさせられた。また、よく理解もせずに農協は既得権益を守るために自由貿易を妨害している団体と看做していた事を反省した。海外では自国の農業を保護するための多額の補助金を農家に給付していること、JAはそれぞれ専門の企業では進出できない(利益が出ない)地域におけるインフラを担っていること、農家はJAから農薬を買わざるを得ない訳ではないことなど、これまでの自分のインプットが開放を推進する側(それによって利益を得る側)の情報に偏っていたことを認識した。この本に書いてあるように、農協の解体が進み、日本の食料が海外資本に牛耳られることとなった場合、まさに新型コロナウイルスのような世界規模の災害が起きた時、国内のマスク不足の問題を上回る食料危機を招くのではないかと危惧している。この問題について逆方面から触れる本を読んで両側面から判断をしたいと思う。また、発刊から数年が経っており、現在の情報にアップデートした改訂版を読みたい。

  • 先程この本を読み終わったんだけど、全然知らなかった。

    JAは悪だみたいな漠然としたイメージを持っていたけどJAが過疎地域にとってインフラとして機能していることや、別に農薬買う必要がないこと、JA全中がアメリカで日本に安心安全なものを輸入するために頑張っていることなどなど、全く知らない事実の連続でした。

    そして、JAが非営利団体である事でどれだけの恩恵を消費者が受けているかという事。

    株式会社が偉いというような認識は農家の人が税金で守られていない(アメリカやヨーロッパは国から農家へ多額のお金が支払われていて安定的に食物を作れる、輸出出来るようになっている、実質お給料の出どころをみると公務員のようなもの)この国ではJAは必要だと思わされた。ただ、今、農家が株式会社になる事がすごく増えててそれは国からお金が出るからみたいなことを誰かが言ってたけどその辺りは今度調べてみたいと思うが。

    いずれにしても、国は六次産業とか諸々良さそうなことを言ってるけどいっこうに農家を守ろうとはしていなくて、モンサントを始めとした穀物メジャーの数十年に渡る戦略にのってしまっているんだなということがよくわかった。

    食料安全保障ということを全く考えたことはないけど、そういう大きな問題がほとんどの人が知らない間に何かしら進行しているんだなと思うと、恐ろしくなる。

    今度はJAに批判的な人の本を読んでみようと思う。

  • 間違って三橋貴明の本など借りてしまったのだが、農協準会員問題も含めて論を展開しており、なかなか面白かった。

  • 反TPPの主張根拠が良く分かった。納得。しかし、農協を守り抜いたその先に何が待っているのか…

  • 農業と農協、TPPなどを分かりやすく説明した本ではあるが、対象が善悪ありきで少々偏っている。著者の本全体に言えることだが、データを示すのはいいがもう少し客観的に冷静に物事を記して欲しい。

  • 世間の人の知らない農協をちゃんと書いて、伝えてた良書。ほんっと世間の人たちは適切に農協批判をしていない。農協が知らせてないし、みんな知ろうともしてないからだけど、農協は意外と素晴らしいよ、ほんとに。しかし、批判すべき点ももちろんあるので、とりあえず批判したい人はこの本読んで、ちょっとでいいんで農業かじって出荷まで持ってくといいと思う。農協の役割がわかるから。

  • 日本の食料安保の基礎となっている農協の役割について、マスコミの表面的な論調とは一線を画す、歴史の紹介や分析が述べられている。
    視点としては正論で説得力もあるが、農業の現場に立ち、実際に農協という組織に接してきた立場から一つ言わせてもらえれば、農協という組織を担っている職員及び管理職そしてトップにまで言えることだが、三橋氏が言う農協のその基本的役割をどの程度理解し仕事をしているかという問題だ。
    巨大組織とその歴史に甘えて、組織防衛に眼が眩み、組合員ひいては日本の農業の育成、そして食糧安保の大儀を忘れている農協構成員、そして実際に農業を担っている農業人の意識の問題にも切り込めていれば、なお一層の説得力がもてただろう。
    そこのところの分析と具体策を筆者には期待したい。

  • 食料自給率 カロリーベース 39% 生産額ベース 65%
    日本の穀物輸入のシェア アメリカ 小麦52% とうもろこし 45% 大豆60%
    サウジへの原油依存度 30%

    レントシーキング 政府の政策により特定の分野に新規参入を果たし、既存のパイから他人のGDPを奪い取っていく行為

    1945/8/14-1947にかけての日本の飢餓
     鉄道輸送の破壊により都市への食料の輸送が滞った
     農民 戦争中政府に無理やり食料を供出され不信。そのため食料供出がすすまず
     1945年 40年ぶりの不作
     朝鮮半島、台湾からのコメの移動ができなくなる

    カロリーベースの自給率 破棄分が分母にはいってしまう

    農協
    代表機関 JA全中
    経済事業 JA全農
    信用事業 農林中金
    共済事業 JA共済連

  • 興味深い内容だった。規制改革を真っしぐらに行った結果が現在。良かったことなどあるのかと疑問になるほど悪い結果になっている。国とは何か、ビジネスとは何か、深く考えさせられる。

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著者プロフィール

東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業、NEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立、09年に株式会社三橋貴明事務所を設立した。
2007年、インターネット上の公表データから韓国経済の実態を分析し、内容をまとめた『本当はヤバい!韓国経済』(彩図社)がベストセラーとなる。その後も意欲的に新著を発表している。単行本執筆と同時に、雑誌への連載・寄稿、テレビ・ラジオ番組への出演、全国各地での講演などに活躍している。また、 当人のブログ「新世紀のビッグブラザーへ」の1日のアクセスユーザー数は7万人、推定ユーザー数は21万人に達している。2012年1月現在、人気ブログランキングの「政治部門」1位、総合ランキング2位(参加ブログ総数は約90万件)である。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/
主な著書に『国民の教養』(扶桑社)、『疑惑の報道』(飛鳥新社)、『2012年大恐慌に沈む世界 蘇る日本』(徳間書店)、『増税のウソ』(青春出版社)、
『三橋貴明の「日本経済」の真実がよく分かる本』(PHP研究所)などがある。

「2012年 『ユーロ崩壊!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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