2030年の世界エネルギー覇権図

著者 :
  • 飛鳥新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864105132

感想・レビュー・書評

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  • 2016年の本ですが、2020年現在でも、有益な情報がありました。アメリカやロシア、中国などの大国のエネルギー事情について知ることも出来ましたし、これから先、ウランという有限な資源で稼働する原子力発電から脱却するためには、再生可能エネルギーへの大きな転換が必要なことも。現在に於いて日本は、化石燃料に大きく依存していますが、将来はもちろん同燃料に依存していくことはお金の面からは、高コストに耐えきれなくなり、アメリカのシェールだけにも頼るわけにはいきません。これから先、日本が発展していくためにも、新しいエネルギーの開発は避けて通れません。

  • 石油中東依存の危険性がわかった

  • <b>「海中小型原発」→「プラグイン原潜」ということで、おk?</b>

    ほぼ、上念さん以外の共同執筆グループが書いているのではと思う。
    まるで、文体が違うし、オタクっぽさがない。
    「原油依存では国庫が破たんするぞ」などと別著と矛盾するような主張が見られる。
    でも、反中国、原発推進で押しまくるトーンは、上念さんも同じ方向性だとは思う。

    (1)米シェールガス産業が、厳しい市場により、成長したというのは意外。
    投資失敗例を聞いていたので停滞気味なのかと思っていた。
    ハードルとなりそうな環境問題(化学物質噴出など)は、米国だから押し切るでしょう。

    (2)原発→再生可能Eをつなぐ「小型原発(海中・海上)」開発
    本書では、SFファンタジー的な10万年事業となる放射性廃棄物の費用問題がほぼ抜けている(核燃料サイクルでごまかしている)。
    それも示さず、つなぎで新規原発を作れとはナンセンス。と思った。
    海中では、廃棄物の違法投棄が起こりそうで、リスクがありそうだし。

    しかし、真意が、
    「海中小型原発」→「プラグイン原潜」、
    「海上小型原発」→「プラグイン原子力空母」
    といった、電源確保よりも軍備増強を果たす妙案であれば、同意したい。
    この軍備を背景に、中国とのシーレーン、原油獲得競争を戦うというのはいかが。

    (3)その他キーワード
    ・産油国のパワーバランス (サウジ、イランの対立)
    ・北極海開発 北極海シーレーン 有望なら温暖化を維持しないとw
    ・日本の電源比率シナリオ
    ?現状 化石燃料(火力)依存:他国動向で揺さぶられる
    ?2030〜2050 原子力:大型発電所から小型(海中、海上)発電所へシフト
    ?2050〜 再生可能エネルギーで大部分を賄う
    ちなみに、私は、ずっと、火力依存のままだと思うよ。
    民主主義がこじれている日本は、原発再稼働も難しい。

  • 世界はエネルギーの奪い合いで動く。それを意識しないでは今後の未来は語れない。
    海中原子力発電は、反対強すぎて実現できないだろうが、面白い。

  • 日本の安全保障とは、エネルギーの輸入ルートの確保とほぼ同義。石油の確保について、危機管理的な観点で検討すべき。世界の警察官を辞めたアメリカ、中東地域の不安定化。

    エネルギーをめぐって、国家や様々な勢力が争奪戦を繰り広げている、ということを再認識しました。持たない日本であるということも。

  • これは現代進行形の歴史副読本だ!
    読むべし!

  • 米国大統領の選挙の去就が明らかになる前(2016.10)に書かれた、上念氏によって書かれた本で、世界エネルギーに関する解説がなされた本です。

    日本では東日本大震災(2011.3)の後に、エネルギー政策の転換(見直し)がなされて、原子力に頼ることは難しい状態が続いているような雰囲気です。それまで15%程度の発電を担っていたので、その代替えとして、主に天然ガス火力発電が使われているようですが、今後どうすべきなのでしょうか。最近はエネルギー価格が一時期より下がってきた様ですが、日本はその恩恵を受けているのでしょうか。

    アメリカはトランプ大統領になろうがなるまいが、この5年間でシェールガス・オイルの生産を増加させて、久しぶりにエネルギー大国へ復活しています。その影響が、将来的には日米安保にまで影響するかどうかは不明ですが、この本に書かれている内容は、エネルギー業界をお客さんに持つ業界に身を置くものとしては参考になる点が多かったです。

    以下は気になったポイントです。

    ・2015.11にIS(イスラミック・ステート)の犯行によるパリ同時多発テロ事件を、ローマ法王フランシスコ一世が、これは第三次世界大戦の一環であると述べたことは衝撃的であった(p14)

    ・ISの混乱を生み出した元凶は、2003年にアメリカがフセイン政権を打倒するために起こしたイラク戦争とその戦後処理の失敗である(p20)

    ・ブッシュの石油会社に資本参加した人物の中に、911を主導したウサマビンラディンの兄がいたことは知られている。ラディン家とブッシュ家はその時まで30年間も持ちつ持たれつであった。(p22)

    ・イラクは石油輸出の決済をドルからユーロへ移行することを決定していた、これが実現するとアメリカドルの基軸通貨としての地位が揺るぎかねなかったので早めに潰した(p24)

    ・今日のアメリカを支えるパワーは、1)軍需産業、2)ウォール街の巨大金融資本、3)移民労働者(p28)

    ・2016年7月16日、ノルウェーの調査会社の試算により、石油の埋蔵量はアメリカが2640億バレルと、ロシア(2560)、サウジ(2120)を抜いて世界一であると報道された、10年前には想像できなかった(p31)

    ・2015年に米国上院は、原油輸出解禁を盛り込んだ2016会計年度歳出法案を可決した、40年ぶり(p35)

    ・2016年1月16日に、IAEAはイラン側が合意を守っていることを確認し、アメリカとEUがイランに対して行ってきた経済制裁を解除すると発表した。これは、アメリカがサウジを見捨ててイランに乗り換えることを意味する(p53、55)

    ・2010年にはイラン制裁を強化するアメリカの圧力で日本は撤退を余儀なくされ、その穴を埋めたのは中国。日本が援助して作ったコントロールルーム(アデカザン油田)で指揮をとるのは全員中国人(p67)

    ・エクソンモービルに次ぐ全米第二位の天然ガス生産企業、チェサピークエナジーも苦境に立っている(p106)

    ・採算分岐点が80ドルといわれるシェール業界も、今や40ドルでも経営がなりたつシェール業者が生まれつつある(p111)

    ・サウジアラビアの原油生産は2030年から徐々に減っていくことは誰もが知っている。イランはまだ大丈夫(p116)

    ・アメリカは1979年にスリーマイル原発事故後、新設原発はなkったが、2011年に初めて原発推進を打ち出した(p127)

    ・米海軍が所有する288の艦船は、核燃料で推進する航空母艦と72の潜水艦を除き、石油に頼っている。これが液化炭化水素燃料の開発により、海上で燃料補給することが不要になる(p136)

    ・ロシアにとって2016年早々、原油安と同じくらい頭が痛い話は、イランの国際社会復帰である。イランは2030年にはEU向け天然ガスの主要国になる可能性がある(p150)

    ・グリーンランド領域内には、サウジの約42%にあたる油田、北海油田の3分の1にあたる油田があるといわれている(p167)

    ・長江の三峡発電所は世界最大級の水力発電施設であり、2250万キロワットである、日本最大の奥只見(56万)と桁違い(p172)

    ・なぜ日本は戦争をしたのか、つまり対米参戦と太平洋戦争の原因として、エネルギー資源の確保があるから。アメリカのイラク戦争、湾岸戦争も同じ(p182)

    ・核燃料サイクルとは、1)軽水炉サイクル:プルトニウムとウランを混ぜた燃料を、既設の原子力発電の軽水炉で燃やす「プルサーマル」、2)高速炉サイクル:もんじゅの実験炉で、放射性廃棄物の消滅処理を行う、高速炉燃料製造工場(p184)

    ・MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物)を通常の燃料の代わりに利用することをプルサーマル発電、ウランの利用効率を既存原発で26%、高速増殖炉で100倍以上向上できるのが、核燃料サイクルの最大のメリット(p184)

    ・マラッカ海峡は、世界のシーレーンの中でも重要で、スエズ運河・パナマ運河・ホルムズ海峡と並ぶ、四大航路の一つ(p207)

    ・自動運転は、2050年には一部運輸業務以外は、ほとんどが自動運転に取って代わられる(p234)

    ・2040年になっても化石燃料が依然としてエネルギー供給量の4分の3を占める見通しである。その中でも天然ガスの成長が速く、石炭を越えて世界第二位の供給量にあんる(p261)

    2017年2月19日作成

  • エネルギーが国益の根幹という前提を
    改めて記していて 読み易い。

    国家/政府のゴール≒国益
    で、
    対する絶対要件がエネルギー資源の確保であると。

    という当たり前すぎる当然の前提をふまえると、
    日本にとっての生命線が
    シーレーンの担保である!と腹に落ちる。

    で、このシーレーンに対する脅威は、
    中国の覇権主義と ISを中心にするテロ。

    ソリューションは、
    脅威への直接対策

    シーレーンに依存しない代替エネルギー

    ロジカルに
    小気味よく文章が展開されていて、
    読みやすくスッキリする良質な解説本でした

  • アメリカのシェールガス革命を中心に中東、東アジア、ヨーロッパのエネルギー政策と資源争奪、戦争・紛争の裏について判り易く書かれています。”超大国アメリカ”、この言葉が意味が凄く理解出来る本です。その点、日本は。。。

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著者プロフィール

経済評論家。1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は1901年創立の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。著書に『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書)、『タダより高いものはない』『経済用語 悪魔の辞典』(イースト・プレス)、『官僚と新聞・テレビが伝えないじつは完全復活している日本経済』(SB新書)、『日本を亡ぼす岩盤規制』『経済で読み解く日本史(全5巻)』(飛鳥新社)などがある。2013年12月より毎月、八重洲・イブニング・ラボ(https://y-e-lab.cd-pf.net/home)の主任研究員として講演活動を行っている。

「2019年 『大手メディアがなぜか触れない 日本共産党と野党の大問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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