残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する

  • 飛鳥新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864105750

作品紹介・あらすじ

今すぐ「思考」と「行動」をアップデートせよ!目標達成のために不可欠な要素として世間一般で広く信じられてきたことの多くは、手竪くて正論だが、今や完全に間違っている。そうした神話の長所、次いで反論や矛盾を取り上げる。裁判のように賛否両論を検証、最もプラスになる結論を導きだしていく。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    自己啓発本は、本によって書いてあることがバラバラだ。やり抜く力が大事と言ったと思えば見切りをつけろと言ったり、外向的な人のメリットを説いたと思えば内向的な人の長所を述べたりと、まぁ当てにならない。どれもこれも言いっ放しで終わるため、結局普遍的な成功の法則なんて学び取れない。

    本書は、自己啓発本に書かれた玉石混交の成功法則を、すべてエビデンスベースで検証する一冊だ。つまり、様々な本に書かれたメソッドのうち、科学的に研究が進められ、ある程度の評価が得られたものだけをピックアップし紹介している。

    例えば、やり抜く力(グリット)と見切りをつける力のどちらが大切なのか。
    これは文句なしに、「グリットが大切」である。何事かを成すには、質よりも方法よりもまず回数を重ねなければお話にならない。時間をかけて様々な物事に取り組んだ人のほうが成功しやすいのは明らかだ。
    しかし、見切りをつける力も同様に大切である。それは「グリットに代わり」ではなく「グリットと合わせて」真価を発揮する。「〇〇のために●●を諦める」という戦略的放棄は、その分エネルギーを一番大切なものに回せる。大切なのは2つの兼ね合いであり、見切りをつけることでグリットし続けることができる。同時に、グリットし続けると自然とたくさんのことにチャレンジするため、どれを取捨選択するかという「諦め力」が向上してくる。双方の利点を生かすのが一番効果的というわけだ。

    本書の内容のほとんどがこのように、「○○vs△△と言われているが、実際には二つの良いとこ取りをするのが一番効果的だよ」という結論に落ち着いている。「善行vs悪行」、「自信vs謙虚」など、項目自体は二項対立だが、その間でバランスを取るような結論に収まる。

    大富豪の成功体験が人によって違うように、成功を収めるための道や手法というのは、100人いれば100通りあるものだ。極論を言えば、本書で書かれている「良いとこ取り戦略」も人によっては当てはまらず、どちらかに振り切ったけど成功したという人はごまんといる。そもそも、大富豪や成功者といった統計学上の外れ値に対して「共通する法則を見つけ出す」というアプローチに無理があるのだから、おのずと手堅くて無難なアドバイスに帰着してくる。
    大切なのは、本書を読んで大まかに「堅実なアプローチ」を知ったあと、それを自分に合うようにチューンしていくことだ。そうして自ら活路を切り開いてきた者こそが「成功者」と呼ばれるのだから。
    ――――――――――――――――――――――

    【まとめ】
    0 まえがき
    自己啓発本には2つのタイプがある。
    ①著者の個人的な経験から、「わたしはこうやって成功した(お金持ちになった)のだから、同じようにやればいい」と説く本
    ②歴史や哲学、あるいは宗教などを根拠に、「お釈迦さま(イエスでもアッラーでも)はこう言っている」と説く本

    これらの本には、エビデンスがない。
    玉石混交なビジネス本を、エビデンスベースで検証して本当に正しい成功法則を見極めるのが本書だ。


    1 天才と優等生の育成環境
    カリフォルニア大心理学教授のディーン・キース・サイモントンによれば、「創造性に富んだ天才が性格検査を受けると、精神病質(サイコパシー)の数値が中間域を示す。つまり、創造的天才たちは通常の人よりサイコパス的な傾向を示すが、その度合いは精神障害者よりは軽度である。彼らは適度な変人度を持つようだ」という。
    私たちは「最良」になろうとしてあまりに多くの時間を費やすが、多くの場合「最良」とはたんに世間並みということだ。卓越した人になるには、一風変わった人間になり、あなたの個性を開花させねばならない。

    統計学的にも、 並外れた能力について考えるとき、平均値は何の意味もなさない。重要なのは分散で、標準からの散らばり具合だ。人間社会ではほぼ普遍的に、最悪のものをふるいにかけて取り除き、平均値を上げようとする。だがそれと同時に、分散も減らしている。釣鐘曲線の左端を切り捨てることは、たしかに平均値を改善するが、同時に、左端と思われながら、じつは右端の素晴らしい資質と不可分一体の特性を切り捨てることになりかねない。

    では、先天的特性をこれといって持たない我々は、どうやって能力を成長させるのか?
    ①あなたがもしルールに従って行動するのが得意だったり優秀な人なら、その強みに倍賭けする。明らかな答えや規定のコースがある整った環境で功績を挙げよう。
    ②規格外でアーティスティックなあなたは、自分で道を切り開くことだ。
    ①、②いずれにおいても、自分という人間のことをよく知るのがよい。自分が得意とし、一貫して望んだ成果が得られているものはなにかを捉えよう。そして、自分ができることを高く評価してくれる組織・環境を選ぼう。


    2 いい人と悪い人はどちらが成功する?
    短期的には、いいやつより悪いやつの方が成功する。上司は成果よりもゴマすりのほうを高く評価する傾向にあり、同調性の低い人間のほうが平均年収が高めに出ることがわかっている。
    しかし、利己的な人は、彼らが成功するために必要な環境そのものを破壊する。長い目で見れば、組織内で利己主義はうまくいかないのだ。

    一方で、いい人間はどうだろうか?
    ペンシルバニア大学ウォートン・スクール教授のアダム・グラントは、「成功」という尺度で見たとき、最下位のほうにいるのはどんなタイプの人なのかを解析した。するとじつに多くの「ギバー(受けとる以上に、人に与えようとするタイプ)」がいることがわかった。しかし同時に、トップの方にいるのもまた「ギバー」だった。マッチャー(バランス型)とテイカー(多く受け取る)は中間に位置する。
    最下位のギバーとトップのギバーの違いはなにか。それは、最下位はあまりに利他的すぎて自らを消耗し、テイカーに付け込まれることにある。無私無欲が行き過ぎているのだ。そのため、ギバー活動に縛りを設ける(例えばボランティア活動の時間を制限する)のがいい。

    実社会で有用なのは、ギバーとテイカーのハイブリッドである「しっぺ返し戦略」だ。
    ①まず協調する。自分からは裏切らず、相手から好かれるよう行動する。
    ②無私無欲にはならない。相手にうらぎられたらそっくり相手に返す。
    ③懸命に働き、そのことを周囲に(特に上司に)知ってもらう。
    ④相手を許す。


    3 粘り強いvs切り替えが早い
    やり抜く力(グリット)は我々に成功を与えるが、見切りをつけることも時に最善の選択となる。

    グリットを貫いて成功した人が持つ習性は、「ポジティブな心のつぶやき」だった。何かがあっても楽観的な目線を持つことで、心身が健康になり、目標達成に向けた継続力が生み出される。

    一方で、切り替えの早さのメリットはなにか。それは、限界と機会費用を知れることだ。「〇〇のためには●●を諦める」という戦略的放棄を学べば、その分エネルギーを一番大切なものに回せる。

    大切なのは2つの兼ね合いだ。グリットは諦めることなしでは成り立たない。私たちはつねに、より多くのものが必要だと考える。もっと助けを。もっと意欲を。しかし、今日の世界では、むしろその逆が正解だったりする。すなわち、より少なく求めることだ。気を散らすものをもっと少なく。目標をもっと少 なく。責務をもっと少なく。優先事項に最大限のものを振り向けるためだが、肝心なのは「何をより少なくするか」だ。

    まず、自分がやり遂げる目標を見つけるために、たくさんのことにチャレンジしてみよう。そして何か興味の焦点が見つかったら、自分の時間の5〜10%を小さな試みに当てよう。次に、目標への推進剤として、「5年後には〇〇になりたい」「死ぬまでに〇〇してみせる」といった有意義なストーリーを作ろう。そして、生活や仕事にゲームの要素を取り入れ、問題を小さな課題として再構成してみよう。

    これで、試すことと諦めること双方の利点を生かしつつ、目標に向かって行動できる。


    4 外向的vs内向的
    外向性は、仕事の満足度、給与水準、生涯における昇進の回数などとプラスの相関関係にある。リーダーとして見られるためには、有能かどうかよりまず外向的に見られることのほうが重要なのだ。
    そしてビジネスだけではなく、私生活においても、外向的な人は内向的な人より幸せである。外向性と幸せ、もしくは主観的幸福感 (SWB)との関係は、SWB関連の文献でくり返し強固に裏づけられてきた事実の一つである。じつは、外向的な人は独りでいるときも、内向的な人より幸福感が高い。そしてある調査によると、内向的な人が外向性を装っただけでも、幸福感が増すという。

    しかし、外向的な人は素晴らしいネットワークから貴重な資源を活用することができる反面、本当に重要だと思うことに十分な時間を使えなくなってしまう。独りで精勤する時間が侵害されるからだ。内向的な人のとびきりの強みは、それぞれの専門分野でエキスパートになれる可能性が、外向的な人よりはるかに高いことだ。『外向性は個人的な熟達度と負の関係にある』という研究がある。要は、外向的であればあるほど、業績が落ちるというわけだ。

    とはいえ、どちらの型の人間にもある程度の人脈は大切だ。ビジネスで「人脈」というとうさんくさく聞こえるが、要は「友達作り」と考えればいい。
    ・長年の友人たちに久しぶりに連絡を取る
    ・スーパーフレンドを見つける
    ・お金と時間を用意する
    ・グループに参加する
    ・常にフォローアップする

    そして人脈においていちばん大切なことは、良きメンターを見つけることだ。
    ジェラルド・ロシュは1250名の企業幹部を対象に調査を行い、被験者の3分の2にメンターがいて、そうした役員は平均給与が高く、また自分の仕事に対する満足度も高いことがわかった。「メンターがいる企業役員の平均給与は、メンターがいない者より平均で28.8%高く、ボーナス平均の増加分65.9%と合わせると、現金報酬の額は平均で29.0%高いことが明らかになった」という。


    5 自信があることは成功につながる?
    成功する人は同業者にくらべて、自己評価が高い傾向にある。研究によると、人は自信過剰なほうが生産性が伸び、より困難な課題に挑戦するようになり、それにより職場で頭角を現すことになる。
    ただし、自信が過剰であることは、妄想や高慢さにもつながり、やがて手痛い失敗を招く。

    私たちは、能力がないことを嘆くのに多大な時間を費やすが、自信過剰であることのほうがはるかに大きな問題だ。
    なぜか?能力がないことは、経験不足な人びとの問題であり、ほかの条件が同じなら、私たちは未熟な者に権力や権威を委ねたりはしない。一方、自信過剰はどちらかというと熟達者に見られる問題であり、そうした者はしばしば大役を任せられる。能力のなさにイライラさせられるのはもちろんだが、無能な者が深刻な被害をもたらすことはそれほど多くない。むしろ取り返しがつかない事態を引き起こしかねないのは、自信なのだ。

    また、自信がないことにはメリットもある。謙虚で他者の考えを柔軟に受けいれるため、組織全体を成功に導きやすい。また、自分自身の欠点に目が向くため、自己改善につながる。

    というわけで、自信の有無はあてにならない。代わりに、自分への思いやり(セルフ・コンパッション)を重視するのがいい。
    自尊心を煽るのではなく、自然体で自己や自分の能力に満足していられたらどんなことが起こるだろう?ズバリ、人から好かれる。過剰な自信が共感性を失わせるのと対照的に、自分への思いやりを育むと、他者への思いやりも増すことが神経科学の研究に よって証明されている。自分を信じることは素晴らしいが、自分を許せることはもっと素晴らしい。


    6 仕事かワークライフバランスか
    何事かをなすには、とにかくスタミナと時間、向上心、それに労働量が必要だ。寝食を忘れて仕事を楽しむことができれば、人生のすべてが有意義になる。しかし一方で、働きすぎによるストレスと疲労は命を蝕む。

    燃え尽き症候群は自分に適していない職業についたときに起こるという。果たすべき役割が自分に合っていないとき、負担が重すぎるとき、あるいは職務が自分の期待や価値観と一致しないとき、あなたに及ぶ悪影響は、ストレスの問題だけではなくなる。恐いのは、ものの見方が変わってしまうことだ。いくら努力しても自分が進歩しないと感じ、やる気を失い、ついには疑り深くなり、悲観的になる。

    2014年のギャラップ調査によると、アメリカ人就業者の39%は週に50時間以上働き、18%は60時間以上働いている。こうした残業がもたらす利益は何か?スタンフォード大学の調査によれば、無に等しい。55時間を超過すると生産性は急激に低下するので、「週に70時間働く者は、余分な15時間で何も生産しないことにな る」という。生みだされているのはストレスだけだ。
    また、ストレスや残業を減らし、リラックスしてこそ創造性が発揮されることが数々の研究で証明されている。

    ワークライフバランスには、「どこで限界を設定するか」という問題が付きまとう。「さんざん働きまくって目標は達成した、ではそろそろ人生を楽しもう」と、いつ判断すればいいのか?

    まず、計画を立てよう。
    ①時間の使い方を追跡調査してみる
    ②業務の見直しについて上司と話す
    ③to doリストではなく予定表を作る。to doは所要時間をまったく考慮に入れていないからだ。不要な活動を控え、優先事項に力を入れ、どうでもいい仕事には「ノー」と言う。
    ④自分がおかれた状況をコントロールする。ウェブブラウザを閉じ、スマホは別の部屋に置く。雑音をシャットアウトできる部屋で一人で仕事する。
    ⑤プライベートのスケジュールもきちんと確保し、退社時間を守る。


    7 本当に人生を成功に導く法則はなにか
    成功者となるために、覚えておくべき最も重要なことは何だろう?

    ひと言でいえば、それは「調整すること(アラインメント)」だ。

    成功とは、一つだけの特性の成果ではない。それは、「自分はどんな人間か」と「どんな人間を目指したいか」の二つを加味しつつ、そのバランスを調整することだ。
    成功の秘訣は、たとえばあなたの強みであるスキルを最適な職務で活かすこと。周りをギバーに囲まれたギバーになること。あるいは、あなたが前進できる形で社会とつなげてくれるストーリー。あなたを助けてくれるネットワークと、あなた本来の内向性、外向性を活かせる仕事。また、ものごとを習得するときも、失敗した自分を許すときも、たえずあなたを前進させてくれるセルフ・コンパッション。そして、多方面で豊かな人生をつくる四要素間のバランスである。

    まずは「汝自身を知れ」に尽きる。あなたの増強装置は何だろう?あなたはギバーだろうか?それともテイカー、またはマッチャーだろうか?あなたはどちらかと言えば内向型だろうか?それとも外向型だろうか?自信過剰か、それとも自信不足のほうだろうか?

    次に、そうした自分の特性と周囲の世界を最適な関係に調整しよう。まずは自分にとって最適な環境を選ぼう。あなたの増強装置を活用できる仕事を見つけよう。あなたを前進させ続けてくれるストーリーを作ろう。”小さな賭け”をして可能性を広げよう。
    なかでも重要な調整は何だろう?自分が望むような人になっていくのを助けてくれる友人たちや愛する人たちとつながることだ。金銭的な成功もいいが、人生で成功をおさめるには幸福感が必要だ。人間関係は、キャリアだけでなく人生そのものを幸せにする。

  • 成功できる人はどういう人か。
    エリートか、いい人か、諦めない人か、外交的な人か、自信がある人か、仕事だけをする人か。
    従来信じられてきた常識が覆る。
    ただし発行が2017年、今では考え方が変わったものもあり、常識を考え直してきた。
    とはいえ、いくつかは多少なりとも驚きはあった。
    相対することも大事だし、突き抜けるものがあった方が成功しやすいのだと思った。
    280冊目読了。


  • エビデンスベースで書かれた自己啓発本?
    ギバーとテイカー、マッチャーの例や、高校の首席の優等生たちはその後それなりに立派なしごとに就いているが、偉大なリーダーにはなっていない、それは何故か?美人はそうでない人よりも生涯年収が高い、論争をなくし良い結果だけを得るルール、自分を思いやる、セルフコンパッションなど、全てエビデンスをベースに語られている。
    「スマホ脳」にも登場したマシュマロ・チャレンジについても述べられていた。
    それでも読み終えた後に強く印象に残っているエピソードはなかったのは、日本人の感覚には少し合わないからか?あとがきでそのようなエピソードはいくむか割愛されているとあったが、本書で語られている内容で既にしっくり来なかった。
    邦題は原題とは全く違うし、全然邦題のイメージに合う内容ではなかった。
    自分を思いやる、セルフコンパッションは意識してみようかな。

  • 1.仕事ばかりする人は成功者といえるのか、証拠が欲しくて読みました。

    2.成功の法則と名付けられている本書では、成功する人との共通点を科学的に調査した本です。一流が皆幸せな生活を送っているのか、家庭との付き合い方や仕事との付き合い方はどうなっているのか等を調査しました。

    3.仕事のみの生活をしていると家庭は崩壊するうえに、退職した後は孤独感に苛まれて終わります。現に、バリバリ仕事をしていた人が退職をしたら、急に認知症になったという話は良くあります。これは、フル稼働していた脳が急に稼働しなくなったことで異変が起こると言われています。私の周りでは、仕事ばかりに目を向けている人は大抵離婚してます。私は家庭を持ったら、しっかりとバランスをとっていきたいと思うので、ここのバランスを間違えないようにしていきたいです。

  • この本は先週(2017.12)本屋さんで偶然見つけましたが、凄い本でした。成功するために巷でよく言われている法則に対して、科学的な考察を加えて具体的にどのようにすれば良いかが書かれています。

    それを説明するために、歴史の事例や、著者が具体的に体験した例が引用されたりしています。さらに驚くべきは、参考文献の多さです、その紹介ページだけでも 33ページもあります、文献数は400は下らないことでしょう。つまり、この本には著者がそれらの文献を読み込んだ上で、さらに自らの経験も踏まえて書かれています。

    世に言われる成功法則は、このような姿勢でとりくまなければならない、という人生訓の塊のような本でした。もう少し早い時期にこの本に出合えていれば、という気持ちもありますが、あと10年切ったとは言え、まだ大事な社会人生活を残している私にとっては、忘れられない素晴らしい本となりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・この本はエビデンスのある主張をしている、デタラメな成功法則でも偶々うまくいく人はいるが、エビデンスのある法則を実践した方が成功率は間違いなく上がる、この本ではそのような定説をあばき、大成功する人と一般の人を分けている科学的背景を探り、私たちがもっと成功者に近づくためにできることは何かを探る(p5、17)

    ・高校でのナンバーワンが実社会でそうならない理由として、1)学校とは、言われたことをきちんとする能力に報いる場所、自己規律・真面目さ・従順さが成績に繋がる、2)全ての科目で良い点を取るゼネラリストに報いる(p23)

    ・大学時代のGPAと、人生での成功には関係がないことが裏付けられた、700人以上のアメリカの大富豪の大学時代のGPAは、中の上=2.9であった(p24)

    ・ユニークな資質とは、日ごろはネガティブな性質・欠点だと捉えられていながら、ある特殊な状況下で強みになるもの(p28)

    ・最良とは、たんに世間並になること、卓越した人になるには、一風変わった人間になるべき(p37)

    ・自分のタイプと強みを知ったら、次にすべきステップは、自分に合った環境を選ぶこと(p47)

    ・最後は善人が勝つと教えられてきたが、驚くほど多くの領域(情報、経験、人物など)で、悪いもののほうが良いものよりインパクトが強く、持続効果があることが明らかになった、イヤな奴が成功するのは、自分の欲しいものをはっきりと主張する、成し遂げたことを臆せず人に知らせる(p57)

    ・行いには、良いこと・悪いこと・皆がやっていること、の3つがある(p59)

    ・海賊が発生した頃の商業船のオーナーは独裁者で、船長は職権を乱用していた、船員から戦利品の分け前を奪い、逆らえば処刑した。こうした略奪への対応と、上層部に痛められずに航海したいという船員たちの思いから海賊は誕生した、海賊船では全ての規則は全員一致で祖父品されなければならない(p65)

    ・人に与えすぎないように自制するには、ボランティア活動は週に2時間と決めて、それ以上はやらない(p72)

    ・最強の倫理システムは、しっぺ返し戦略、初回ラウンドではまず協力し、その後は前回のラウンドで相手が選んだ選択を真似し続けること、前回相手が協調したなら今回も協調する(p77、82)

    ・創造的な人は常に成功を収めるわけではない、しかし失敗したときに、嘆いたり責めたり断念したりせずに、失敗を一つの学習経験と捉え、そこから学んだ教訓を将来の試みに活かしていこうとする=グリット、この通りにいかない理由として、1)グリットが何によってもたらされるか知っていると思っているがそれは間違い、2)成功への道には、見切りをつけることが最善の選択の場合もある(p93)

    ・人は毎分、頭の中で300-1000語もの言葉をつぶやいている、そして前向きな言葉は、私達の精神的な強さや、やり抜く力に大きなプラスの影響をもたらすことがわかった(p97)

    ・この世で最も過酷な場所で恐怖に耐えて生き続けられるのは、屈強な者でもなく、若者でもなく、生きる意味を見出している者であった(p104)

    ・自分の仕事が天職であると分かっている人は、ストーリーを自分に語っている人で、仕事に意義を見出し満足している(p109)

    ・自分なりのストーリーを見つける方法として、自分の死について考えること(p113)

    ・なぜ危機的、極限的な状況で闘い続けられたのか、それは「これはゲームだと考えて、目標物を設定したこと」、仕事にも応用できる(p119、125)

    ・コカインから快感が得られることを知っているが、大多数の人は「いりません」と断る。それは、あなたのストーリーと一致しないから。ストーリーを変えれば、あなたの行動を変えられる(p123)

    ・面白いゲームに含まれる共通要素は、1)勝てること、2)斬新である、3)目標、4)フィードバック(=ささやかな成功を祝う)(p125)

    ・成功者がたえず精進する時間を捻出するためにどれほど多くの活動を諦めているかに気づけば、時間数が肝心であることも頷ける(p138)

    ・運は、その人の選択によるところが大きいことが明らかになった、運のいい人の性質は、新しい経験を積極的に受け入れ、外交的で神経質でない(p145)

    ・人々は、失敗したことより、行動を起こさなかったことを、二倍後悔する。その理由は、失敗を正当化するが、何も試みなかったことについては正当化できないから。運のいい人は、失敗についてくよくよ悩まず、悪い出来事の良い面を見て、そこから学ぶ(p146)

    ・日頃と異なる分野で異なる課題に向き合うことは、ものごとを別の視点から見て、思い込みにとらわれずに解決策を見出すことに役立つ。多くの異なる発想をぶつけあうことは、創造性を高めるカギとなる(p154)

    ・夢見ることは、お酒に酔うのと同じ効果が精神的に得られる、夢から覚めると、抑うつ的になる。夢に描くことは、目標の達成前にご褒美としてもらってしまうので、肝心の目標達成に必要な活力を弱らせる(p159)

    ・夢を達成させるためには、計画を持つこと、いつ・どこで・どのように行動をするか、ざっくりと計画しているだけで、目標を実現できる確率が40%以上も上がる(p160)

    ・WOOP:1)W:自分の願いや夢をイメージする、2)O:望む成果を具体的に描く、3)O:障害について考える、4)P:障害に対する計画を考える(p161)

    ・MITの力添えによって成功した、ハーバード大学の電波妨害技術は、ナチスをパニックに陥れさせた、1年も経たないうちに、連合軍の船舶撃沈は117隻(1942.11)から、9隻(1943.9-10)へと激減した(p190)

    ・人類には他の生物種には不可能な規模での協力関係、これが人類が種として繁栄した秘訣であった、これがあなたが個人として成功するための秘訣である(p194)

    ・自分があんな風になりたいと思った人々からなるグループに参加することが重要(p203)

    ・メンターが、あなたのために特別に骨を折ろう、と思ってくれるのは、考えられる全ての途を試したが、もはやメンターの助けなしには万策尽きました、とあなたが証明できたとき(p213)

    ・セールスマンのような口調では反応を示さないが、誠実な態度で、犯人の心情に焦点を合わせるやり方は、効果的な解決に結びついた(p227)

    ・人は提供された食事をとる間、提供者に対して一時的に服従の心理状態になる、この心理は食事中が最も強く、食後は急激に弱まる(p228)

    ・論争をなくして良い結果だけを得るルール、1)落ち着いてゆったりとしたペースで話す、2)傾聴する、質問はオープンクエスチョンで、3)相手の気持ちにラベルをはる、それは辛いですね、怒るのも無理ないね、4)相手に考えさせる、間違っても相手の問題を解決して何をすべきかを提示してはいけない(p232)

    ・あなたを支えてくれた人々を訪ねて、感謝を伝えること(p234)

    ・直面したからといって、全てを変えられるわけではない、だが直面しなければ何一つ変えられない、謙虚さの利点は、1)現実を把握できる、2)傲慢にならずにすむこと(p260)

    ・自信に変わる概念として、「自分への思いやり」がある。自分自身への思いやりを持てば、失敗したときに成功の妄想を必要もなければ、改善の見込みがないと落ち込む必要もない、敗北者だと感じることも少ない(p265、266)

    ・毎日小さな勝利をあげることに集中する、成績や外聞を気にするのではなく、ひたすら技量を磨くことに集中する(p272)

    ・その分野に従事する者の上位10%は、同分野の標準的な就業者より生産性が80%も高い、下位10%よりも700%高い、これだけの差は効率では説明できず、当然長時間働いていることになる(p281)

    ・IQは、120を超えてしまえば、それ以上IQの数値が増えても業績への効果はほとんどないことが調査え明らかになった、違いをもたらすのは、投入された時間数(p262)

    ・有意義な仕事(自分にとって重要、自分が得意とする、の両方を満たす)に従事し続けた者は、最も長生きした(p284)

    ・仕事は、しなければいけないことでできているが、遊びは、しなくてもよいことでできている(p285)

    ・死を目前にした人々の大きな後悔の一つに、仕事を頑張り過ぎたがある、これは二位、一位は「他の人が自分に望む人生ではなく、自分に誠実な人生を生きる勇気を持てばよかった」が一位である。他者との関係は三位であった(p286)

    ・理想の仕事が無くても驚くに当たらないが、もしあなたが夢中になれる仕事でもないのに、死にもの狂いで働いていたら、深刻な弊害がもたらされる(p296)

    ・本当の意味で創造的になるには、過度の緊張状態から脱して、心を自由にさまよわせる必要がある、空想にふけることは、じつは問題解決と類似している。空想にふけるときと、難題を解いているときに活性化する脳の領域は同じ(p303)

    ・あなた個人にとっても成功を定義すること、他者との比較で相対的に成功をおさめようとするのは危険、意思決定は、あなたがしなければならない。全部自分で決める、それをしないと周りが決めることになる(p321、322、328)

    ・幸福の測定条件として、1)幸福感、2)達成感、3)存在意義、4)育成(誰かの未来の成功を助けている)、行動としては、楽しむ・目標を達成する・他者の役に立つ・伝える、となる(p324)

    ・モンゴル帝国を築いた「テムジン」は、遊牧民族がはまっていた抗争サイクルの元凶である親族関係を断ち切った、スキルと忠誠心が評価され、能力主義の社会を確立した(p330)

    ・ストレスを減少させる最も効果的な方法は、計画を立てること、である。前もってどんな障害があるかを予想し、克服法を考えておくと、状況をコントロールできていると感じる(p333)

    ・計画を実行するための手順、1)時間の使い方を追跡調査、2)時間を浪費している時間帯を把握、2)上司と話す、3)TO-Doリストではなく、すべてを予定表にする、4)自分だけの時間をつくる、5)予定した時間に一日を終える(p346)

    2017年12月17日作成

  • 私は自己啓発本が嫌いだ。ほぼ読んだことがない。非科学的で占いの範疇で論理的でないものが殆どだから。また教育論のように個人的経験にのみ立脚した視野の狭いものも多いし。
    この本もタイトルはハッキリ言って嫌いだが、成功法則を科学的に解明し、かつ古今東西の物語を挟みながら面白く読めるようになっている。タイトルとは反対で、残酷どころか読後すごい納得感と多幸感を感じた。面白かったです。

  • 世間で言われている成功に関して科学的に解析し、世間で言われている常識に対する洞察をまとめた本
    ネットワーキングに関してやエリートコースが世間でいう成功に対して必要なのかを
    文献、専門家への調査を経て、コメントを書いている
    個人的には参考になる部分もありつつ、あまりとらわれる必要性はないなと総論感じた
    と言うのも、仮に成功した場合は、巷の常識に対して当てはまっているか否か、一つの事例が増えるだけであると言えるから
    ただ成功の確率の上昇もしくは、個人的に失敗したと思っている事例に対して背反的な洞察もあるので
    挫折した時に読むのが良いかも知れない

  • 巷で言われている成功法則について、エビデンスを用いて検証する一冊。

    成功者を分析すると、ギバーが多いことが判明した。しかし、一方で底辺にいるのもギバーが多いことが同時に判明する。
    これはどういうことかというと、自己犠牲を伴うギバーはテイカーに徹底的に食い尽くされるから底辺に落ちてしまう。
    しかし、自己犠牲を伴わないギバーは成功するということを表している。

    また、有名な囚人のジレンマ実験の話は興味深かった。
    自分が裏切った場合、友人が裏切った場合のシュミレーションをコンピューターでしたところ、最も利益を上げたのは、しっぺ返し戦略。
    つまり、一番最初は相手に協力するが、相手が裏切った場合は次回は自分も裏切るという戦略。
    実社会も同じで、この信頼ゲームは長期にわたって繰り返される。
    初回で協力すると早い段階では貧乏くじを引くが、時間が経つにつれて悪者は協力者ほど大きな利益を得られなくなる。評判を大切にした方が良いという教訓。

    成功とは、一つだけの特性の成果ではない。
    「自分はどんな人間か、どんな人間を目指しているか」の2つを加味しつつ、そのバランスを調整することが大切。
    また、成功の定義も人それぞれ。
    価値観が多様化した現代において、単にお金持ちであれば成功者とはいえない側面もある。

  • 自信がありすぎる勘違い野郎って最強だなって思ってたけど、この本を読んでそれが虚構であることに納得できた。本当に仕事ができる人はそんなのではないと論理的に説明してくれて、ありがとうございます!

  • えぐい。最近の注目されている研究や概念のメタ分析。
    一つのトピックに対して、複数の論文を出しながら、成功に紐づく行動様式を分析していく。

    メタ分析は精度が高いと言われるが、本当にその通りだと思った。たとえば、外向性と内向性で外向性が良いという研究結果が多いので、まずはそれをメタ分析して、結論を出していく。その上で内向性のメリットも出して、両方をフラットに見ることに成功している。

    おおよその研究はポジションをとって、ある特性のメリットを中心に描かれるので、本質的な理解が難しい場合がある。というか思考が偏る。

    ただしこの本ではメタ分析という手法を通じて、フラットにニュートラルに研究結果を分析できており、多面的な理解、本質的な理解、偏らないフラットな理解が可能になる。

    ただのメタ分析だけなら、まあ、という感じだが、この人は、最近世間的に認められている様々な研究者と繋がりがあり、その性質や考え方の精度も高いと思われる。
    (GIVE &TAKEのアダムグラントがよく登場する。ドラッカーからはインタビューを断られているが。。)

    さらに特筆すべきなのが、翻訳の素晴らしさ。難解であるはずの本書だが、すいすいと頭に入ってくる。
    比較したいのはドラッカーのマネジメントで、非常に難解なまま、翻訳されていて、よくわからない抽象的な表現が多い。途中で本を閉じたくなるくらい。

    本書は非常にわかりやすく、外来語をそのまま使うことすくなく、難解な日本語を使うこともなく、日常的な用語を中心に使用し、非常にわかりやすい。

    この本は傑作だ。
    100回読みたい。

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著者プロフィール

大人気ブログ“Barking Up The Wrong Tree”の執筆者。『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙、『タイム』誌などが度々その記事を掲載し、米最重要ブロガーのひとりと目される。脚本家としてウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、20世紀フォックスなどハリウッドの映画会社の作品に関わった経歴をもち、任天堂のゲーム機「ウィー」のマーケティングの指針を助言するなど独自の研究に裏打ちされたビジネス才覚は一流企業からも信頼が厚い。世の中のありとあらゆる成功ルールを検証した本書は、初の書き下ろしにして全米ベストセラーになり、邦訳も12万部突破した。

「2020年 『残酷すぎる成功法則 文庫版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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