日本の教育の危機はどこにあるか

  • 水王舎
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864700597

作品紹介・あらすじ

教育界のカリスマによる初のコラボレーション!これからの教育はどのように変わり、子どもを教える側は何をすべきなのか。保護者の絶大な支持を受ける二人による、学校・塾の先生必読の書!

感想・レビュー・書評

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  • ソニー生命が中高生1000名に対し「中高生が思い描く将来についての意識調査」を実施した結果
    「日本の10年後の将来のイメージ」の調査で、「明るい」と答えた中学生は39%、高校生は31%。
    かなり衝撃的な結果です。

    中高生という、多感かつ感受性が強い時期に、
    高校生の場合は7割が、
    未来に対して悲観的な見方をしている。
    この結果、格差が今よりも広がるであろう予測ができる。

    経済格差は以前から指摘されているが、今では希望格差(未来への悲観)に広がっている。
    教育の崩壊、崩壊と言われるが、これは現場の先生方だけではなく、
    社会全体が関心を持つべきことだが、現状は批判をすることが目的化している。
    「言う」のは、簡単、そして「実行する」先生方は、
    批判を受け入れるだけの時間と余力は、
    ないのかもしれない

    この対談は、知名度抜群のお二人だけあって、
    お二人の教育に対する問題意識は
    根底の所で共通しているように思えた。

    今のままだと、人口の1割~2割ぐらいが豊かな生活を享受できて、
    残りは、豊かさを感じられないぐらい経済的そして心理的に、
    困窮する社会になる可能性は非常に高い。
    現に今の日本社会は、そのようになりつつあるように思える。
    この対談で、そうならないために、どうすればいいかという点で読み、
    かなり有益だと思いました。

  • 教育現場では大規模な改革が進められています。
    アクティブラーニング、クリティカル・シンキング、大学入試制度改革、などなど、目新しい言葉を並べるときりがない上、世の中には第四次産業改革などという言葉も出てきて、AIの登場で職のこれからも変わるといわれる昨今、どんな生徒像をもっていけばいいのか?教育界のこれからはどうなるんだろう?と現場で働いていても見通しができない状況です。

    私自身は「言葉がいかに大切か」ということを痛感して、国語を教える立場となりました。この本でも国語教育の重要性を力強く述べているのですが、自分の授業の中では見通しが甘かったのではないか、という反省をさせられました。
    とにかく多くのことを今回の学習指導要領は盛り込もうとしているわけですが、アクティブラーニングも論理的な言葉遣いを訓練せずに行っても意味をなさないという話や、漢字や計算を徹底的に行うことで変わっていくという話など、基礎的な力、生涯必要な力というのを考える必要があると思います。

  • [墨田区図書館]

    やや二人の知識や情報の紹介にとどまった感はあるが、現在の入試改革やPISA、論理力といった言葉を知らない方にはある種導入編ともいえる一冊。これを読んでも具体的にどうなるからどうしたらいいとか、紹介された用語について詳しくなれるわけではないが、ある二人の教育者が同意しあう形でこれまでとこれからの日本教育について説明し、憂える対話文からある程度の教育の流れを伺い知ることが出来る。

    第1章「陰山英男が見てきた教育現場」では、陰山さんの減点である百マス計算が2000年に認められたこと、その機動力となったのは、1999年6月に出版された「分数ができない大学生」と、その年の3月に山口小学校で4年連続で担任した子ども達の大学入試の結果(50人中10人が国公立の大学、うち5人が医学部)が出たことであるというのが一番印象に残った。

    第2章「出口汪が見てきた教育現場」では、引き抜き制だった塾講師の裏側を語ったり、代ゼミが全盛期⇒東進が伸びた背景として、少子化による"現役生"獲得を意識して地方塾とタイアップして、配信型の授業を 増やしたからとあって、そういうもんだったのか(?)と思った。ちょうどこの辺は関係ない下の代だし、もう当時の状況もわからなかったしな。

    第3章「従来の教育が通用しない新時代の教育」では、基本は結局基礎であり、言語を身体化したあとに論理を身に着けていくことが肝心で、大学が乱立される一方で少子化の波を迎えて定員割れを起こす現状では、主体性がある優秀な今の子ども達の側が大学を選んでいく時代だ、とあった。その中で今の入試制度や小中学校という閉鎖空間しか意識しない教育体制が自由な教育が行き詰っているいくつかの具体例が挙げられていた。

    第4章「日本の教育はどこで間違ったのか」では、小学校の国語教育での言語事項の少なさを皮切りに、「論理力」を鍛えることなしにただ行うクリティカルシンキング一辺倒への問題意識や、PISAやアクティブラーニングの説明を交えつつ、「あらゆる言語を翻訳することが可能であり、世界で最も学びやすい言語である」とされる日本語の、包容力や変容力ともいえる良さを再提示していた。

    第5章「2020年、大学入試改革の行く末」では、大学入試改革の仕組みも多少説明しつつ、日本の大学の国際的な地位の低下に歯止めをかけられるのかという点において、東大とハーバードの違いなどを語っていた。両者の決定的な違いは、ハーバードでは世界をリードしている人から直接話(講義)を聞けるが東大ではそれが出来ないなどの人的ネットワークらしい。アメリカはいわば中間層が少なくトップと下位が多いのに対して、日本は中間層が厚くその代り下位は少ないがトップも少ない、という状況。これを生み出している高校までの「答えを詰め込む」、「自分で考えない」教育を正すのが肝心。また学問で身を立てたかったら奨学金制度もある東大(年収400万以下なら無料)や医学部を狙うべきで、実際東大は基礎ができている地方の若者を求めている、という話。

    第6章「グローバル社会の中で親や教師はどうあるべきか」「貧乏でも安定しているほうがいい」という答えが多かった十年ぐらい前と逆で、近年は「混乱していても豊かなほうがいい」と言う人が増えてきた。特に女性に多く、幕末のような状況。今後は将来あるだろう職業や世界のあり方などを考えながら親も先生も変わっていかなければならない時代であり、幼児や小学生については、やはり「生活習慣も含めてしつけが大事」で、次いで「基礎学力」。そして次いで「読み書きそろばん=言語」。

    第7章「国語教育を考える」では、やはり「論理的思考を身につける場がない」というはなしから、センター入試に小説が出ない(というわけでもないらしいが)という話や、その理由として、「解答に一意性のある問題」を求める過程で、文学面の研究家が「客観的把握」と「鑑賞評価」を間違えて一緒にしてしまっている話などがあり、最終的には、「客観的に文章を読んで、分析して、論理的に考えて、伝える」トレーニングが必要だという話。

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プロフィール

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。
百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。
近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。
現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。
全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。
また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。

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