常識から疑え! 山川日本史 近現代史編 上 「アカ」でさえない「バカ」なカリスマ教科書 (Knock-the-knowing 4)

著者 :
  • ヒカルランド
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864711715

作品紹介・あらすじ

歴史とは民族の結束のために必要な政治の道具であり、支配の道具であり、そして外交の武器である。山川日本史に代表される日本の教科書がダメなのは歴史観以前の記述力の問題、そしておかしな日本史学会のあり方と日本史学者の能力の問題だ。

感想・レビュー・書評

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  • 痛快です。受験生にとってバイブルとなってる山川教科書に痛快にメス入れする。と思ったら後半から段々とただの悪口になっていくのが、また面白い。

  • 今から30年以上前になりますが、高校時代に世界史と日本史を勉強しましたが、その時の教科書は「山川出版」のものであったと記憶しています。

    私は真面目な生徒でなかったので、教科書を触れ合ったのは、定期試験の数日前くらいでしたので、試験後にはすべて中身を忘れてしまいました。

    この本の著者の倉山氏によれば、山川教科書の中身はオカシイとのことです、歴史とは自国を正当化することになるとも言っています。この本では、倉山氏の解説する、真実の歴史が語られています。

    以下は気になったポイントです。

    ・教科書の編纂者たちの第一の関心事は、同業者にいかに文句をつけられないか、突っ込まれないかである(p16)

    ・欧州で生まれた、ウェストファリア条約の考え方を理解できない国は、アメリカ・中国・韓国・北朝鮮、である、アメリカは、その成り立ちからして、ウェストファリア体制を否定するところから始まっている(p39)

    ・海洋国家である覇権国家であるイギリスに対して、陸のチャレンジャーがロシア、それに続くのが、フランス、ハプスブルク家のオーストリア、プロイセンが幕末時代の五大国(p46)

    ・ロシアは、凍らない港を求めて、オスマントルコ、ペルシア、アフガン、インド、清国に進出しようとしていた。それをイギリスが阻止しようとしていた。日本がアメリカと和親条約を結んだのは、英露双方と敵対することなしに、友好国を得て両大国に対抗できる力をつけるため(p50)

    ・アメリカのペリーの肩書は、東インド艦隊司令長官、ペリー艦隊はインド洋からやってきた、太平洋ではない(p51)

    ・ザビエルが日本に布教にきたのは、当時、プロテスタントの宗教改革に「対抗宗教改革」を仕掛けていたカトリックの、イエズス会の明確な意図に基づく。大阪の役、島原の乱は、カトリックとプロテスタントの宗教戦争で、三十年戦争の代理戦争でもある。これを跳ね返して、新教国オランダに好意的な武装中立を実現したのが江戸幕府の鎖国である(p52)

    ・7年戦争では、欧州が戦場となっただけでなく、欧州各国の植民地争奪戦(世界大戦)もあった、イギリスは欧州よりも海外植民地を獲得した、カナダとインドを奪っている。このとき、イギリスはスペイン領のフィリピンを陥落させている(p54)

    ・日本にキリスト教が伝来したのは奈良時代、ネストリウス派のキリスト教が中央アジア、唐を経由して伝わっている(p56)

    ・ファシズムとは、一国一党の体制のことであり、国策の最優先事項が軍事である、つまり軍部が一番強い軍国主義とは相いれない(p70)

    ・千島樺太交換条約(明治8)では、日本は樺太に持っていたいっさいの権利をロシアにゆずり、その代わりに千島全島を領有した、これはロシア相手に当時の日本が対等条約を結んだ凄いことである、これは榎本武揚が国際法を駆使してロシアと渡り合ったから(p75、76)

    ・新政府に版籍を奉還するというのは、財政破綻していた諸藩にとって債務を新政府が肩代わりしてくれることを意味した。そんななかで、藩政改革に成功して金を余っていた藩が幕末の政局にかかわれた(p79)

    ・イギリス憲法や大日本帝国憲法では、大事なことは条文に書かない。その代わりに運用でしっかりする。大事なことは全部書かれているはず、という考え方はあくまでアメリカ憲法の考え方に過ぎない(p96、98)

    ・朝鮮は、「皇」の文字を使ってよいのは中華皇帝様だけなので、明治天皇が使ってはいけない、勅命の「勅」の字もだめ、これが明治政府が朝鮮に行った時の彼らの不満の真相である(p110)

    ・日本は不平等条約を改正してもらうために、文明国としての体制を整えてきた。文明国として国際法を順守し、東アジアに居留する帰国の居留民に被害が及ばないよう十分配慮する所存である、いかがすか、という脅迫で不平等条約の改正を要請した(p117)

    ・三国干渉にドイツが絡んだ理由として、当時、露仏同盟に挟まれて圧迫されていたが、ロシアの圧力をそらすために、この大国の目を方法にそらせれば良いと、ドイツ皇帝(ウィルヘルム2世)が考えた(p119)

    ・ロシアでなぜ日露戦争中に折よく革命がおきたかは、陸軍の明石大佐の工作により、軍隊が労働者のデモ隊に発砲する「血の日曜日事件」が首都(サンクトペテルブルク)で起きたから(p126)

    ・アメリカが日露講和を仲介する動機として、大国ロシアの講和を仲介するとアメリカの権威が高まる、抗争に勝った親分よりも、抗争を調停した親分よりも格が上、というヤクザの論理(p129)

    ・日本は、イギリスとは同盟国、アメリカは友好国かつ中立国として、それぞれ仲よくした巧みな外交の結果が日露戦争の勝利であった(p130)

    ・ハーグ条約でのポイントは、1)宣戦布告前の攻撃(日露戦争の日本のやり方)を違法化する、2)占領地での法律改廃の禁止(アメリカが行った日本国憲法の押しつけはハーグ条約違反となる)、しかし国際法は、これをやったら文明国とは言えない、という慣習的なルールを明文化したもの、守らなければいけないものではない(p133)

    ・日露協約では、39度線どころか南満州まで日本がとるということが決定されたので、ロシアはバルカン半島に目を向けるようになった、これは自分が安全地帯にいながら、英・ロ・仏と結んで対独包囲網を作ったことを意味する(p134)

    ・21箇条の要求という呼び方は、実は、14条の要求と、7条の希望。14条のポイントは、1)ドイツを駆逐した権益の承認、2)日露戦争で獲得した権益の承認、3)外国を不用意に介入させない、である。権益=中国に進出している日本企業の権利と安全を保障する、という程度のもの(p143)

    ・ベルサイユ条約における「バルカン半島と中東の新秩序構築」は、ようするに、ハプスブルク帝国は八つ裂き、オスマントルコ帝国は抹殺、これにより、20もの国が独立した(p154)

    ・1921年のワシントン会議に始まり、日英米の補助艦の制限を決めた1927年のジュネーブ会議、不戦条約が結ばれた1928年のパリ会議、新たな海軍軍縮条約が結ばれた1930年のロンドン会議に至るまで、米英はお互いの最大の仮想敵であった(p163)

    2017年7月2日作成

  • 憲政史家の倉山満が、既存の教科書の代表である山川教科書について、その内容を検証し、かつ新しい価値観を提示する一冊。

    倉山の本を読んでる人にはおなじみの言説が多かったものの、改めて既存の「アカ」でさえない教科書が
    無意味なものかということを再確認した。

  • くららの歴史

  • 歴史学とは、自国正当化の手段。黒船来航時のアメリカはまだ小粒の新興国。小学校の時から、真面目に史実ばかり教える歴史教育より、諸外国のように面白いお話や歴史観を教える方がよい。201409

  • 山川の教科書がボロクソwwww

    って、私最近、「もういちど読む山川日本史」読み始めたばっかりなんですけどーーー。

    まぁ、こんな時期にこのような本を同時進行で読もうとした私がバカでしたw

    私が通っていた高校はなぜか、歴史教科書が山川ではありませんでした。
    でも世間の歴史常識のスタンダードが山川なら、やっぱり山川は是非読むべきでしょう、と思い、「もういちど~」を読み始めたのですが、それが非常識だったとなると・・・
    もうこれは、山川をあえて読んで、意味不明な記述や言葉足らず過ぎな記述部分を自分なりに他著を読みつつ、世界史視点を含めながら勉強しなおすしかないな~。

    本著に書かれていた、日本史学者がタコツボ化しているというのは何となく感じます。世界史視点はおろか、自分の専門の他の時代のことも知らない、さらにいえば自分の専門の時代の一事件のことにはやたら詳しいが、その当時の将軍の名前がわからないなんて人も実際にいたとかw歴史って言うのはいろんな要因がからみあって動くものなのに学者がこれでは・・・

    日本の近代史を理解するためには地政学、外交史を学ぶべしという言葉、まさにその通りだと思います。

  • ちょっと言葉遣いが悪いところもあるが、気になるほどではない。また、タイトルからは山川の日本史の教科書がターゲットのように見えるが、中身を読むと、それは一番使われている教科書だから代表させているだけで、本来の趣旨は、日本史の学会というか学者のダメさを指摘するものである。確かにこの本を読むと、少なくとも近現代史の背景が明確になる。

  • かなり過激な論調ですが、その分わかりやすいです。なので、妥当性があるのかを読者に考えさせる力を感じます。裏テーマとして、知識と信念の欠落した教科書による思考停止を憂いているのではないでしょうか。NHKが言っていることは、みんなOKみたいな。

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著者プロフィール

憲政史家

「2023年 『これからの時代に生き残るための経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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