最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

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レビュー : 238
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864725378

作品紹介・あらすじ

あなたの余命は半年です-ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。だが、副医院長・福原は奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない。対立する二人が限られた時間の中で挑む戦いの結末とは?究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか?それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 難病患者と向き合う二人の医師の物語。
    両者は極端に異なる医療方針を有するが、そのそれぞれに完全には否定しづらい信念があり、それゆえにいずれの気持ちにも共感する読者がいることだろうと思う。また、両者の中間に位置する見解を持つ友人医師に救われる者もいるであろう。それゆえに「最善の医療とはなにか」という究極の命題を読者に問いかける作品となっている。
    病気あるいは死への向き合い方を考えさせられる良書である。

  • ライトな読み口ながら、問題提起はとても重い。
    東京藝大のルポを書いた二宮さんが、こんな小説も書いておられたとは知らなかった。

    武蔵野七十字病院には『死神』と呼ばれる医師がいる。
    桐子は、末期患者に、治療を続ける必要はない、死を敗北にするのもしないのも自分次第だと告げる。

    「僕たち医者は患者を救おうとするあまり、時として病気との戦いを強いるのです。最後まで、ありとあらゆる方法を使って死から遠ざけようとする。患者の家族も、それを望む。だけどそれは、はたして患者が本当に望んでいた生でしょうか?医者や家族の自己満足ではないか?患者が他人の自己満足に巻き込まれ、死に敗北するようなことがあってはなりません」

    「死に振り回されると、往々にして生き方を失います。生き方を失った生は、死に等しいのではないでしょうか。逆に、生き方を維持して死ぬことは、生に等しいとは言えないでしょうか」

    他方で、桐子の同期であり、副院長でもある福原は、患者の命が尽きるまで病と闘い続けることを求め、絶対に最後まで生きること、奇跡が起きることを諦めない熱血漢である。

    死は敗北だと思う福原と、死を敗北にしてはならないという桐子。そして、二人の同期であり、医師としてのあり方に悩む音川。

    読み終わったあと、しみじみと、自分がいかに、死について深く考えず、平均寿命を生きることを前提に漫然と生きているのかを実感した。
    病は誰にでもふりかかる。静かに進行し、突然牙をむくこともある。
    私たちは、どう生きるかより、どれだけ生きるかを医療に求めてきたのだろう。辛いだけの延命以外に、短くとも自分らしい生き方を求めることが当たり前になっていい。どういう治療を求めるかは、自分が残りの生をどのように全うしたいかにつながる。
    しかし、家族が病に倒れたら、その生き方を悩みなくサポートできるかというと…考えてみてもわからない。自分の治療を決めるよりも、ずっとわからないかもしれない。

    治療方針が自分の意に沿わないからといって病室から追い出したり、元同僚なのに誰一人力を貸さなかったり、合鍵一つで手術室勝手に使えたり、どんな病院やねん?と素人ながらに舞台設定に疑問を感じるところだけど、本作は病院内の描写のリアリティは追究されていないのだと思う。
    二人の対極にある医師が、最終話で悩み衝突し、共に力を尽くす。
    続編があるらしいから、是非この二人のその歩みを読んでみたい。

  • 久しぶりに何度涙したか分からない作品です。助ける事に最後の最後まで諦めずに全力を傾け、正義感や情熱に溢れる福原、一方、絶対助からないと分かっている患者に最後の命との向き合い方を冷静に勧める桐子、時が流れ、かつて友であった者同士が、相反するアプローチにより仲違いしている。そんな二人の大切な友である音山の病気により、二人は悩み始める。

    この作品は、命は長さではなく、どう過ごせるかと言った事について、究極の死を前にした状態で考えさせられる、とても深い深いテーマだったと思います。自分もいつか死にます。明日かも知れない、だから時間を大切に過ごす、それがいま自分に出来る事。でも死を直前にして、そんな綺麗事言えるだろうか、いや自信はない、、
    それでも毎日時間は過ぎていく。やはり今はやれる事をやろう。

    素晴らしい作品でした。著者の作品は初めてでしたが、是非とも他の作品も精読させて頂こうと思います。

  • ★4.5

    あなたの余命は半年です――。
    究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか…?
    それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。
    息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ!

    地域基幹病院・武蔵野七十字病院。
    死期を迎える患者に対して、無理な延命治療よりも「死」を受け入れ、
    残りの日々を大切に生きる道もあると説く。死神と呼ばれる桐子。
    患者の意向を曲げてでも情熱を傾けて治療に全力を尽くし、奇跡を信じ、
    奇跡を起こそうと諦めない副院長の福原。
    患者と共に悩み迷い葛藤し、答えが出せなくてもその苦しさを分かち合う音山。
    大学時代、友人同士だった3人の医師たちの「生」について「死」についての物語。
    患者が残された時間をいかに使うかを共に考える患者と医師たちの生きる物語。

    両極端な医師が敵対するシーンが多くあり、ここまで極端な医師はいないだろうって
    思いましたが、誰も間違っていないし、誰も正解でもない。
    もしかして、一人の医師の心の中に3人がいるのかもしれないなぁって感じた。
    命と向き合うお仕事、本当に大変です。彼らは本当に凄いです!

    何度も何度も病や死について考えさせられました。
    頭ではわかってる。いつどのように病がやってきて日常の歯車から外され、
    病院という大きな中でベルトコンベヤーに乗せられるかもしれない…。
    人は必ずいつか死が訪れる…。
    でもそれは、普段意識してなくって、どこか他人事。
    自分自身は漠然と延命治療したくないなぁって思っていましたが、
    福原の様な医師に熱く説かれると嬉しいだろうし、揺れてしまうんじゃないかな。
    また桐子の様な医師に説かれると、やっぱりそうだなぁって思いそう。
    自分自身の死生観。大切な人の生命に関する決断をする時…。
    しっかりと話し合い考えなくてはいけない。
    でも、いざその時…やっばり揺れるんだろうなぁ(*T^T)

    読みながら、何度も何度も泣けました。
    そして、健康に過ごせている事の有難さも感じました。
    一日一日大切に生きようと思った。

  • 余命わずかな患者にとって、医師として何をすることができるのか、すべきなのかを問いかける三編の物語。
    医学生時代からの友人同士だった、三人の医師が登場する。

    「死神」とあだ名され、辛く困難な治療を受けさせる事よりも、逃れられない死を受け入れることを勧める医師、桐子。
    対して、病院の副院長で外科医としても一流の腕を持ち、あらゆる手段を尽くすことを理想とする福原。
    そして、かつて友人同士だったふたりが、いつしか治療に対する考え方の違いから仲違いしていることに心を痛める音山。

    急性骨髄性白血病、ALS、そして下咽喉癌。
    壮絶な治療、患者や家族の苦悩がこれでもかというほどに描写され、桐子の考え方も否定しきれない思いにひきずられるが…
    音山の選択は、自分の大切な人を最後まで苦しめることなく生きる、彼にとっての“最善の生”を選択したということだった。
    福原=生、桐子=死、という単純な話ではなく。


    kanegon69さんのレビューを読んで、ずいぶん前からブクログの本棚に並んでいた本。
    二宮敦仁人さん、初読。
    読みやすい明快な文章で、よく出来た作品、という感じ。

    夢と希望に満ちて笑いあっていた三人の医学生たちが、同じ病院で患者と向き合っていた間に、何故こういう考えに至ってしまったのか。
    恩師の楠瀬教授がご存命だったら、表し方は違えど同じように情熱を宿した教え子たちに、何かを教えてくれたのだろうか。
    そんなことを思いつつ、けれど続編を読むのは、体力気力のある時にしよう。

    また、テーマの性質上、患者には死に至ってもらわなくてはならないのだから仕方ないが…
    急性骨髄性白血病もALSも癌も本当に厳しい病気で、作中のように進行することがあるのは否定できないが、これを読んでいた人がもし同じ病名を告知されたら…もう、すぐに桐子の考えに傾いてしまいそうだ。
    けれど、実際には必ずしもそうではない。
    実際に助かった人も、いるのですよ。本当に。

    福原に、単純に奇跡、奇跡と連呼させるだけではなく、いくらかのページを割いて、医学の進歩と現実的な希望も見せてくれたら、と思った。


    他の方も書いていたけれど、『ブラック・ジャック』のDr.キリコと同じ名前を使ったために、脳内映像があの姿になって困った。

  • 初読みの作家さん。
    日本に帰ってから良く行く書店で、面陳されていた一冊。

    桜の花びらが舞う本の装丁に惹かれ手にしてみると、そのバックはお墓だった。
    そして、このタイトル。
    一度は買わずに帰ったのだが、やっぱり気になって手にした一冊。
    コミックにもなっている。

    医療をテーマにした本は数多ある。
    決して諦めない医者。
    患者に寄り添う医者。
    これまで色々な医者を主人公にした本を読んできた。
    彼らは確固たる信念を持っていた。

    が…
    この本の主人公たちは違う。
    自分が信じる道を突き進んできたつもりだったのに、揺れる。
    悩み、悶え、揺れる。
    それがとても自然に思えた。

    武蔵野七十字病院の皮膚科医、桐子修司。
    患者たちから「死神」と言われる彼は、諦めない、積極的な治療が正しいとは思っていない。
    患者には死を選ぶ権利があるとして、主治医でもないのに、患者と面談をする。

    福原雅和は七十字病院の天才的外科医であり、副院長。
    決して諦めないことが患者のためという信念のもと、技術を磨くことに余念がない。

    そんな二人は大学の同期。
    そして、もう一人の同期、神経内科の音山晴夫。
    二人を理解し、二人の危うさ理解し、手を取り合うことを望む。

    本を開いて、目次でもちょっと衝撃。
    第1章 とある会社員の死
    第2章 とある大学生の死
    第3章 とある医者の死

    読む前から、この患者が最期を迎えることがわかっている。
    何というか、話のスピードよりも、気持ちの方がゆっくりと追いかけていく感じ。
    まさに、自分も悩んでいたんだ…

    1章、2章では、桐子も福原も自分の考えに全く迷いがない。
    正反対の考えを持ち、お互いに受け入れられない。
    しかし、第3章の「とある医者の死」では、迷い、悩む。
    気持ちは揺れて、揺れて、揺れて。

    余命を告げられた時、自分ならどうするか。
    何を望むか。
    真剣に考えさせられた。

    自分と向き合ってくれる医者に望むこと…
    色々あるだろう。
    自信を持って治療してもらえると、頼もしいことに間違いはない。
    だけど…
    自分と一緒に考え、悩んでくれること、答えは出なくても、必要かもしれない。
    人生の終わり方に”正解”を求めるわけではないと思うから。

    「最期の医者は雨上がりの空に君を願う」というタイトルの続編が既刊。
    こちらも読んでみよう。

  • 私の死生観にあったお話。
    死神の言わんとすることはよくわかります。
    尊厳を持っていのちを全うしたいものです。

    しかし、、この本の
    「息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ誕生!」とか
    「大反響!感動小節第一位!」とか
    いうオビは要らん。。。

    ドラマならより良いのかもしれません。
    本だと表現がやや浅い感じがします。

  • 二宮さんのホラーが好きで…あまりにも違う系統なのでびっくりしました。
    キャラが立っていてとても読みやすいです。しかしそういうところがラノベ風味になるとこほでもあります。
    どの話も泣いてしまいました。1つしかない命に誰にも平等に死が訪れる。
    どのような死が幸せな死なのか?と考えた時に自身が納得して死んでいけるそんな境地になれる事が大切なのかなと思いました。
    もちろん先が気になって続編を購入しました。

  • 奇跡を信じ、最後まで諦めずいろんな治療をしてでも患者の命を助けようとつとめる医師がいる。
    相反して、余命が短いのであれば患者に「死」を受け入れてもらい、残りの日々を大切に生きていくという道を説く医師がいる。

    どちらがいいのか。自分だったら、苦しい治療をするより自分らしく最後を全うしたいかな。
    でもこれが自分の子供だったらと考えると、どうやってでも生きていて欲しいと願うだろう。

    なかなか考えさせられる、いいお話だったと思います。

  • 奇跡が起こる可能性を信じ、最後まで最善を尽くす医師の福原。
    病気の進行度、治癒の可能性、どう生きて死ぬのが患者の為なのかを考える医師の桐子。
    その同期の医師2人の仲裁役で、どうする事が患者にとって最善なのかを模索する医師の音山。
    この3人を中心に物語は進む。

    3人の患者を通して、「生きるとは何か?」という命題にぶち当たる。
    愛する人が重度の病に冒された時、どんな状態であれ生きていて欲しいと願ってしまうかもしれない。
    でも、その患者にとっての「生きる」ということは、他人が願う形とは異なるかもしれない。
    「どう生きるか?」=「どういう最期を迎えたいか?」ということかもしれない。

    福原医師と桐子医師の、
    患者の生きる長さや生きる価値という考え方は真逆だ。
    でも、親友の死に直面した時に、
    今まで医師として客観的に捉えていた「死」がぐっと身近な物になった。

    対極ながらも誰しの心にも内在する、「どう生きるか」という命題への葛藤を、
    福原と桐子が代弁しているようだった。

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著者プロフィール

二宮敦人(にのみや あつと)
1985年、東京都生まれの小説家、ホラー作家、推理作家。一橋大学経済学部卒業。携帯小説サイト「魔法のiらんど」「E★エブリスタ」でホラー小説を発表し、2009年に『!(ビックリマーク)』でデビュー。妻が東京藝術大学彫刻科の学生だったことから、多数の藝大生に取材しノンフィクション『最後の秘境 東京藝大』を執筆、ベストセラーとなる。著書に『郵便配達人 花木瞳子が盗み見る』『一番線に謎が到着します』など多数。2019年4月11日、『世にも美しき数学者たちの日常』を刊行。

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