夢のなかの魚屋の地図

  • 幻戯書房
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本棚登録 : 219
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864880374

感想・レビュー・書評

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  • 自分のお気に入りの作家の新刊がエッセイだと知った時がっかりすることがしばしばある。
    私はこの人の小説が読みたいのにと。
    その点、井上さんは本作が初のエッセイ集だと言う。そういえば読んだことがなかった。
    機が熟すのを待って(?)の出版。こういうの好きだな。

    意外って言うのも変だけど割と普通の人なんだなぁ。
    彼女の描く物語がエキセントリックなものが多いだけに、もっときわどい感性を持っているのかと勝手に想像していた。
    夫とは単なるパートーナーで不倫も公認とか言っちゃうのかと思っていた(笑)

    しかしながら文章の巧さは小説よりむしろ際立っているように感じた。
    ますます好ましい。

    作家である父への思い、夫との生活、料理へのこだわり、時折出てくる好きな音楽、そしてあの肉の会。
    井上さんさんの一ファンとして余すことなく楽しめた一冊。
    次のエッセイもぜひゆっくりとまとめていただきたい。わがままな要望ですが。

  • 初読みの作家さん、どなたかの書評で読みたくなりました(^^) 名前さえ間違って覚えていて、さらに本名とは。さらには福岡に所縁あるとは!
    井上光晴氏の娘で荒野(アレノ)さん、妹さんは切羽(キリハ)さんとは。二十数年間に書いたエッセイからグルーピングされた73編が順不同で並んでいて、とりわけ父上に纏わるモノが印象的ですし、ご主人や母上や妹さんたち家族に関するモノがいい。たまさか出てくる九州弁に親近感を抱きながら楽しく読みました。これは小説も読まなくちゃ と思った次第です♪

  • 「荒野」って本名だったのか!
    …という衝撃が一番強かったエッセイ集。

    今まで井上荒野さんの作品は短編を1つ読んだことしかなかったのですが、料理が美味しそうだったという印象が残っています。
    美味しそうな文章を読みたい欲とタイトルの吸引力に惹かれて読んでみました。

    期待に違わない美味な描写がたくさんありました。
    鰤かぶら、アイリッシュ・シチュー、筍の"とん先"…ううん、お腹が鳴ってしまう!
    また、同じく小説家だったお父様をはじめとした家族のことを取り上げたエッセイもすてきでした。
    家族の情景に高確率で美味しいものが登場する、ということがうらやましかったです。

    24年間のあいだにいろいろなところに発表されたエッセイを集めた本なので、20代後半から50代になるまでの1人の女性の歩みをたどることができるのも、個人的には魅力的でした(時系列はばらばらですが)。
    将来的に結婚して夫と暮らし始めたときに、本書の内容をいろいろ思い出すんだろうな、という予感。

  • 時々読む井上荒野さん。エッセイ今まで出してなかったのですね。

    文章が淡々としていて味わいがあります。やはりお父さんや妹さんなど家族のことを書いた文章が特にいいなと感じましたね。
    今まで書いてきた25年?分のエッセイですから、文章の配置は順不同ですが時の流れも感じられます。

  • 著者の小説は全て読んでいるけれど、普段雑誌の類を読まないこともあってエッセイはほとんど初めてかもしれない。(なるほど初のエッセイ集とのこと。)人の名前に興味があり、著者の"荒野"という名が好きで、父親である井上光晴氏の命名であることも、さらに妹がいることも知っていたから、ずっと妹さんの名前が知りたくてたまらなかったのが本作で氷解。また『ひどい感じ 父・井上光晴』を読んだ時に比べ、実際の生活は意外にも(?)それぞれが労りに満ちていたのかもしれないなぁという印象を受けた。育ってきた家族のことの他にも、御主人とのことがたくさん書かれていたり、想像以上にしっくりきて読み返したい一冊となった。

  • エッセイってほのぼのしたりしみじみしたりくすくすしたりするものだ。その中で荒野さんのは読み進めていくうちに素足で砂漠の砂嵐の中に踏ん張って立っていて、頬を砂粒が叩いていく感覚を一粒も逃さずに感じているような心持ちになる。特に「庭」というエッセイを読んだ後では。

  • 井上光晴氏の長女として産まれた二世作家エッセイから、書けなくなったころが入り、父を亡くし、しっかりと物書きとしてひとり立ちしていく、28歳のデビューから24年間のあらゆるエッセイを集めた一冊。
    お父様への愛や尊敬、そしてお父様からの愛が溢れてて最初の頃ちょっとうるってなった。
    直木賞受賞されたときに切羽というのは妹の名前と聞いて素敵だなぁと思ったけれど、いまこうして改めて読んでもやはり素敵だなぁって。荒野さんの書くものが好きな人には満足できるエッセイ集です。

  • ロシアのコロッケって、、、

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    「家庭を持つことが苦手な父、作家・井上光晴。二世作家であることを乗り越え、自身も作家として確立していく中での思いを綴る。母のこと、妹のこと、夫のこと、猫のこと、そして、もちろん、
    焼き豚ときゅうりのサンドウィッチ、揚げたてのドーナツ、アイリッシュシチュー、ロシアのコロッケ、鰤かぶら、土鍋でごはんなどこだわりの食について。
    来年、作家生活25周年をむかえる直木賞作家の初めてエッセイ集。
    (新聞・雑誌に掲載のエッセイより読み応えのある作品を精選)」
    http://genkishobo.exblog.jp/19956423/

  • エッセイ。井上さんの作品は結構読んできたつもりだけど、著者自身については猫を飼っているくらいしか知らなかったので、そうなんだあという感じ。

    「あちらにいる鬼」を読んだ後だったので、井上さんのお父さんのこととか、お母さんのことも親しみやすかった(?)なあ。
    「荒野」と同じくらいインパクトのある妹さんの名前も知れたし。

    へとへとになるくらい仕事をしたあと、頑張って自分で美味しいご飯を作るかどうか、料理が不慣れな夫に任せていまいち(?)なご飯を食べた後のもやもや感、些細だけどわかる。違うところは、私は料理が得意ではないということ。。。

    飼っている猫の呼び名が原形をとどめないほど変化するの、すごい共感して、旦那さんの「誰だそれ」のつっこみも面白くて、思わず笑った。

    松太郎さん、つぶちゃんの思い出と一緒に長生きしてね。

  • 淡々としていて読みやすい
    言い募るとドーナツ雑感がよかった

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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