ナショナリズムの昭和

著者 :
  • 幻戯書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (715ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864881005

感想・レビュー・書評

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  • 筆者の主張、理屈が今一つ理解できない箇所が多かった、残念だが。

  • 昭和の主に太平洋戦争の終戦までの日本のナショナリズムについて、上部構造と下部構造に分けて論考している。
    上部構造が下部構造に対して、日本の主に農村の伝統的価値観をであるナショナリズムを無視して、国益護持、国権の伸長、国威の発揚を押し付け、人命無視の戦争が遂行されたとしている。
    上部構造の無茶苦茶な戦争遂行に関する分析には納得出来るが、下部構造のナショナリズムは農本主義と捉えていて、そこには賛成出来ない。
    安倍総理の浅薄なナショナリズムに対する批判は大いに納得する。

  • 700ページ超の大著である。「ナショナリズム」をキーワードに、
    昭和史を分析しているのだが、私の頭が内容の濃厚さに追い
    つけずに人物や事件を何度調べ直したことか。

    「ナショナリズム」の定義は様々あれど、保坂氏は上部構造の
    国家ナショナリズム=支配階層主導の国権の守護・国権の伸長・
    国威の発揚とし、下部構造の共同体ナショナリズム=郷土愛・
    愛国心、民衆の生活倫理や規範・自然との共生・伝統文化継承・
    死生観として分けて考えることを前提としている。

    上部構造と下部構造の間に明確な線引きがあったはずなのだが、
    それが太平洋戦争へと進むと恫喝と甘言によって下部構造を抑圧
    して飲み込んで行った。

    昭和初期から戦後は勿論、平成に至るまでを分析しているのだが、
    やはり戦前・戦中・戦後を通して、昭和天皇という方はどんな政治家
    よりも政治家であったのだと改めて思う。

    2.26事件の詳細な分析、事件後に台頭した新統制派による思想なき
    暴走、問題となった田母神論文は気持ちいいほどのぶった斬り。結局、
    田母神氏も、大作家・百田尚樹センセイと一緒で「雰囲気保守」なんだ
    よな。

    そして、安倍晋三の歴史観にも触れているのだが、この人は祖父で
    ある岸信介の劣化コピーでしかない気がして来た。保坂氏はきちん
    と分析しているのだが、私には安倍晋三がしっかりとした歴史観が
    あるとは思えないんだよな。

    日本は何故、戦争に向かったのか。そうして、何故あの戦争に負けた
    のか。ここをきちんと検証しないままに過ぎてしまったことに過ちが
    あるのではないかと思う。

    加害者として、敗者としての歴史をちゃんと把握しておかなければ
    いけないんだよね。「敗戦」を「終戦」と言い換えることで、何かを
    誤魔化して来たんじゃないかな。

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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