- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864882163
作品紹介・あらすじ
あの『若草物語』の作者オルコットが扇情小説を書いていた?!
なぜオルコットは、A. M. バーナードという男性作家名義で、かくも扇情的な小説作品群をいくつも発表していたのか?
英国の名家でガヴァネスが惹き起こす、19世紀米国大衆〈スリラー〉小説
感想・レビュー・書評
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映画『ストーリーオブマイライフ』でジョーが持ち込んでいた小説がどんな感じかわかるのかな?と興味をもって読んでみました。煽情小説ということで、まあ、くだらな面白いお話なのだが、意地悪だけど細やかでいきいきした人間描写から、きっと楽しんで書いていたんだろうな、と想像できた。名画のコスプレで小芝居をする発表会?的なもの、当時の貴族の仲間内では、ほんとにそういうことをする文化があったのかな。アメリカ人のオルコットが描くイギリスの貴族社会だから、そこは創作なんだろうか。どっちでもいいけど、イベントとして楽しそう。あと、ヒロインのジーンは30過ぎなのに若造りをして19歳で通ってしまうんだが、夜自室の鏡の前でどっと疲れて30過ぎの姿に戻る場面に、作者の巧さが溢れ出ていた。
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主人公ジーン・ミュアはジェイン・エアのパロディと思う。
めちゃくちゃ面白かった!!
ジェインよりずーっとずーっと強かなジーン・ミュアのことも好きだ。
オルコットもシャーロット・ブロンテに憧れていたって解説に書いてあった。二次創作みたいな感じもあるのかも。
そういう意味でも面白くて当たりでした。ジェイン・エア読んでると余計に面白いと思う。
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面白い。オルコットは匿名でスキャンダラスな扇情小説を書いていたんだなぁ。なんで隠す必要があったのか。時代背景もあったのだろうけど。今日では隠すことはあまり考えられないし、隠してもバレるから隠せないよね。
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2021.10.31 市立図書館
新聞書評欄で興味を持ち、ずいぶん前に予約した本。
「若草物語」をはじめ、古き良き少女小説(家庭小説)でおなじみのルイザ・メイ・オルコットによる、当時は別名義(A. M. バーナードという男性名)で発表されていたまったく違うタイプの小説。
解題で教わるまでもなく「ジェーン・エア」を彷彿とさせる家庭教師「ジーン・ミュア」がぞくぞくするような手練手管で自分の目的をはたし狙っていたものをしたたかに手に入れる描写は、これほとんど詐欺か洗脳じゃないか、とそらおそろしくなったけれど、言葉の技術や計算された演技にはそれだけの力があるのだとあらためて思い知らされる。
これが半沢直樹だとみんな「よくやった!」と溜飲を下げるのだろうけど、この小説でコヴェントリー家の人びとが気の毒すぎる気がしてしまうのはやはり男女の非対称なのだろうか(そもそも半沢直樹的なものがあまり好きではないのだが)。
言葉でつくりだされたありもしない幻影にまどわされ、分断されたり感情を動かされたりしてはいないか、とときどき立ち止まってわがみを振り返らねばと思う一方で、誰かの意図した流れに乗せられて物事が動いていくのをとどめる力はないなあと無力感を感じもする。特に今は、メディアの力でそういう流れのスピードと大きさがあっというまに増幅されしまうから…
200ページの物語の後の、50ページに渡るオルコットの年譜と訳者による解題が読み応えあり。彼女自身の人生がなかなか興味深いので、モンゴメリや他の女流作家・翻訳家も含めもうちょっといろいろ読んでみたいと思った。