仮面の陰に あるいは女の力 (ルリユール叢書)

  • 幻戯書房
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本棚登録 : 90
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864882163

作品紹介・あらすじ

あの『若草物語』の作者オルコットが扇情小説を書いていた?! 
なぜオルコットは、A. M. バーナードという男性作家名義で、かくも扇情的な小説作品群をいくつも発表していたのか?
英国の名家でガヴァネスが惹き起こす、19世紀米国大衆〈スリラー〉小説

感想・レビュー・書評

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  • 「仮面の陰に あるいは女の力」 別名義で書いた 抑圧への復讐譚 朝日新聞書評から|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14340807

    ルイザ・メイ・オルコット『仮面の陰に あるいは女の力』訳者解題(text by 大串尚代)|幻戯書房編集部|note
    https://note.com/genkishobou/n/n656c6b565520

    仮面の陰に あるいは女の力 | 幻戯書房
    https://www.genki-shobou.co.jp/books/978-4-86488-216-3

  • 映画『ストーリーオブマイライフ』でジョーが持ち込んでいた小説がどんな感じかわかるのかな?と興味をもって読んでみました。煽情小説ということで、まあ、くだらな面白いお話なのだが、意地悪だけど細やかでいきいきした人間描写から、きっと楽しんで書いていたんだろうな、と想像できた。名画のコスプレで小芝居をする発表会?的なもの、当時の貴族の仲間内では、ほんとにそういうことをする文化があったのかな。アメリカ人のオルコットが描くイギリスの貴族社会だから、そこは創作なんだろうか。どっちでもいいけど、イベントとして楽しそう。あと、ヒロインのジーンは30過ぎなのに若造りをして19歳で通ってしまうんだが、夜自室の鏡の前でどっと疲れて30過ぎの姿に戻る場面に、作者の巧さが溢れ出ていた。

  • 主人公ジーン・ミュアはジェイン・エアのパロディと思う。
    めちゃくちゃ面白かった!!
    ジェインよりずーっとずーっと強かなジーン・ミュアのことも好きだ。
    オルコットもシャーロット・ブロンテに憧れていたって解説に書いてあった。二次創作みたいな感じもあるのかも。
    そういう意味でも面白くて当たりでした。ジェイン・エア読んでると余計に面白いと思う。

  • 面白い。オルコットは匿名でスキャンダラスな扇情小説を書いていたんだなぁ。なんで隠す必要があったのか。時代背景もあったのだろうけど。今日では隠すことはあまり考えられないし、隠してもバレるから隠せないよね。

  • 裏でやりたい放題で悪賢くて強かな主人公が最高だった
    知り合いにはなりたくないけど...

  • ルイザ・メイ・オルコットといえば、やはり『若草物語』。でも家計を助けるために、そして楽しみながら「扇情小説」と呼ばれるこの本のようなジャンルの小説も書いていたとのこと。

    物語の最初で、いきなりジーンの「正体」が明かされて、そこからは展開に目が離せなくなる。
    「こっわー」と思いながら読んだけれど、詳しい解説を読み、「自分の力、言葉の力を持って、社会的地位も経済的な力もなにもないところから幸せを勝ち取った物語であるとも考えられる」(訳者解説p.263)である。

    『若草物語』も読み直してみたくなる。

  •  『若草物語』の作者として知られるルイザ・メイ・オルコットがA・M・バーナード名義で発表した「煽情小説(センセーショナル・ストーリーズ)」のひとつ。
     末娘ベラのガヴァネスとしてコヴェントリー家を訪れたジーン・ミュア。以前の職場でトラブルに見舞われたという噂はあったものの、ガヴァネスとしての賢さとそつの無さ、そして彼女自身の美しさに申し分は無い。やがて、当初ジーンに無関心だった長兄ジェラルドは異性として惹かれ、ジェラルドを慕ういとこ ルシアはジーンを疎み、次兄エドワード(ネッド)は焦がれ、コヴェントリー夫人とベラ、おじのサー・ジョンはすっかり彼女を信頼する。しかし彼女は大きな秘密と野望を抱えていた……。
     和気藹々とした一家を魅了し、侵掠し始める来訪者ジーン・ミュアの本性と、題のような“女の力”を駆使した狡智は、まさに悪役。そのあくどさと強かさには「阻止されろ! 失敗しろ!」と思わずにはいられなかった。同時に「どうか成功してくれ!」と願わずにいられぬほどジーンのキャラクターが魅力的。ジーンの謀の成否とコヴェントリー家の命運、どちらも良い結果を迎えてほしいと思わせるストーリー展開も素晴らしい。ルイザ・メイ・オルコットと幻戯書房の「ルリユール叢書」という二つの新たな推し候補が見つかった、素敵な読書となった。

  • 2021.10.31 市立図書館
    新聞書評欄で興味を持ち、ずいぶん前に予約した本。
    「若草物語」をはじめ、古き良き少女小説(家庭小説)でおなじみのルイザ・メイ・オルコットによる、当時は別名義(A. M. バーナードという男性名)で発表されていたまったく違うタイプの小説。
    解題で教わるまでもなく「ジェーン・エア」を彷彿とさせる家庭教師「ジーン・ミュア」がぞくぞくするような手練手管で自分の目的をはたし狙っていたものをしたたかに手に入れる描写は、これほとんど詐欺か洗脳じゃないか、とそらおそろしくなったけれど、言葉の技術や計算された演技にはそれだけの力があるのだとあらためて思い知らされる。
    これが半沢直樹だとみんな「よくやった!」と溜飲を下げるのだろうけど、この小説でコヴェントリー家の人びとが気の毒すぎる気がしてしまうのはやはり男女の非対称なのだろうか(そもそも半沢直樹的なものがあまり好きではないのだが)。
    言葉でつくりだされたありもしない幻影にまどわされ、分断されたり感情を動かされたりしてはいないか、とときどき立ち止まってわがみを振り返らねばと思う一方で、誰かの意図した流れに乗せられて物事が動いていくのをとどめる力はないなあと無力感を感じもする。特に今は、メディアの力でそういう流れのスピードと大きさがあっというまに増幅されしまうから…

    200ページの物語の後の、50ページに渡るオルコットの年譜と訳者による解題が読み応えあり。彼女自身の人生がなかなか興味深いので、モンゴメリや他の女流作家・翻訳家も含めもうちょっといろいろ読んでみたいと思った。

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著者プロフィール

ルイザ・メイ・オルコット(Louisa May Alcott 1832‐88)
19世紀を代表するアメリカ女性作家。ペンシルヴァニア州ジャーマンタウンに生まれる。教育者・哲学者の父親エイモス・ブロンソン・オルコットと、奴隷制反対運動に関わっていたメイ家の出身であるアビゲイル・メイの次女として生まれる。マサチューセッツ州コンコードで少女時代を過ごし、ラルフ・ウォルドー・エマソンやヘンリー・デイヴィッド・ソローと交流があった。南北戦争時には北軍の看護師として従軍。南北戦争後に『若草物語』(1868)を出版し人気を博す。『若草物語』執筆前(1866)に、A. M. バーナード名義で大衆向けのスリラー小説を出版していたことが、20世紀にはいって明らかになった。

「2021年 『仮面の陰に あるいは女の力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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