- Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865280227
作品紹介・あらすじ
曽我部恵一(サニーデイ・サービス)推薦!!
風や、月や、太陽や、空気までも味方につけて、言葉とたわむれるように生まれた短歌たち。2018年に第一回笹井宏之賞大森静佳賞を受賞し、一歩先をゆく口語短歌の書き手として注目を集める著者、待望の第一歌集。
感想・レビュー・書評
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めっちゃ良かった。堂々とした幸福感にあふれた歌集だと思いました。
(思うことがたくさんあってまた長くなっちゃった、メモ。)
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風に、ついてこいって言う。ちゃんとついてきた風にも、もう一度言う。
全身にくる会いたいという気持ち山ですという山の迫力
会いたいと思ってこその帰り道だ酔ったら酔ったでくらくら帰る
ボウリングをする前日は透明のボールとレーンがどこにも見える
ケンカはオレンジ死にたいはリンゴ恋はグレープ果たし状はコカ・コーラ
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明るい雰囲気の(プラスな)うたと悲しい雰囲気の(マイナスな)歌を比べた時に、
たぶん個人差はあれど、プラスな感情よりマイナスな感情のほうがトラウマ的に心に強く残ってる場合が多くて、だからマイナスのベクトルのうたの方が人の心を動かしやすいし、プラスな歌って難しい。
だからいままでプラスな歌を見た時に、ポジティブに励まします!みたいな「読者に読ませる感」が伝わってきて、一歩引いて眺めてしまう場合が多くて、あんまり楽しめたことがない。でもプラスなベクトルの歌で心が動く場合もあって、
生きてまでやりたいことがあまりないことがうれしいのを信じてよ (『地上絵』橋爪志保)
ぼくの人生はおもしろい 18時半から1時間のお花見 (『日本の中でたのしく暮らす』永井祐)
みたいな、文面上の裏のマイナスな感情を探らせたり、楽しい主体を提示してメタに眺めるような視点をとって、奇妙な印象をあたえたりする場合
(まだまだパターンの広がりとか、いい短歌の例はと思うけど、このプラマイ&主観客観だけの切り口で見た場合)
...
前置きが長くなったが、この歌集には、主観的でかつ自然な、幸福感があふれるプラスの歌が比較的多いように感じた。それが、いい意味で自己中心的で、読ませる気がない(ように見える)、新しいパターンの短歌を見せられたみたいで感動した。
以下、大森静佳の解説一部引用
「ーひとつひとつの言葉が、息をしているということだ。とれたての野菜のようにみずみずしく、生きている。心と言葉の距離がものすごく近い、ー」
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だから一歩引かないで自分も読みながら入っていけたのか、と思った。
というか大森静佳の、"人間の優位性を相対化してる"とか"空気の表現"に関する解説が鋭くて面白い。 -
表紙はパステルグリーン×黒のシンプルなカラーリング、カバーを外せば爽やかなラベンダー、そしてSOUR MASHというタイトルに惹かれ、衝動買い。その直感は間違っていなかった。ページを捲れば、気持ちよい風が吹き抜けていくよう。その景色の切り取り方の斬新さに、ふぅ~っと感嘆の息が何度も漏れた。
好きな短歌はいくつもあるけど、
「やってきたときは元気でいまはもうしょげてるなんてサラダは仲間」
「世界をダッフルコートにするならば三日月三つ留め具にしたい」
かな。大森静佳さんによる解説も素敵だった。
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春直前に読めたのが嬉しかったな
もっと早く出会うべきだったとは思うけど
持っていることが嬉しくなる歌集 -
姿も内容も爽やかな歌集。くすっとしてしまうような歌がいくつも。
明るい気持ちにさせてもらった。