〆切本2

制作 : 椎名 誠  平出 隆  村山 由佳  さくら ももこ  神近 市子  岡本 かの子  今井 邦子  宇野 千代  中條 百合子  美川 きよ  平林 たい子  子母澤 寛  川端 康成  バルザック  辻 佐保子  辻 邦生  田中 小実昌  澁澤 龍子  澁澤 龍彥  赤川 次郎  中島 らも  三浦 しをん  野間 宏  木下 杢太郎  笹沢 左保  筒井 康隆  江口 寿史  松尾 豊  冲方 丁  井上 靖  室生 朝子  室生 犀星  大庭 みな子  伊集院 静  ハルノ 宵子  タモリ  野坂 昭如  堀 道広 
  • 左右社
3.40
  • (6)
  • (29)
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本棚登録 : 626
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865281774

感想・レビュー・書評

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  • 一作目でお腹いっぱいだったはずなのに、二作目まで読んでしまった。
    〆切りに苦しめられる作家さんたちの言い訳エッセイや詫び状たち。
    私的な書簡・手紙などなど。
    後世にはこんなものまでも公開されてしまうなんて、因果なお仕事だわねと同情もしながら、それでも笑った、笑った。
    時にしんみりとしたり感慨深かったり、どんな状況でも作品にして読ませる力はさすがなのだ。
    つまり、今回もまんまと左右社さんの術中に嵌ってしまった。

    この表紙がまず、鮮やかなオレンジ色だもの。これは眼を惹くでしょ。
    そこに強烈な言葉たちが並ぶ。
    「とうとう新潮社社長の私邸に監禁」・・軟禁の間違いでは?
    「猿に邪魔されても〆切りはやってくる」・・猿は邪魔しないってば。
    そして見返しにまで呪詛のように言葉たちが続く。
    前作と同じ造りの、美しい小口。凝った紙質。
    これはもう、絶対私を誘っているとしか思えない。

    編集さんを含めて実に75人。更に女流作家さんによる座談会に7人。
    海外からの特別ゲストもいて、何と「ドストエフスキー」と「バルザック」だ。
    「罪と罰」の続編を送れと催促された時の逆ギレがまぁすごい。
    ドストエフスキー作品のファンの方、ここはぜひ読んでね。
    更に江口寿史、水木しげる、赤塚不二夫、高橋留美子と、漫画家さんも登場。
    著者紹介・出典があって、奥付けまで来たらもうお終いかと思うと、この奥付けがひと味違う。
    「2017年4月下旬 最初の刊行目標日でした」なんて書いてある。その次に、
    「7月下旬 確かに刊行出来ると思っていました」
    「9月29日 ほんとうの〆切りのはずが・・・」
    「2017年10月30日 第一版発行」となっている。
    嫌だ、もう。刊行目標日なんて、こちらには分かりっこ無いのに・笑

    「頭の工合よろしからず、今度はどうしてもできませんでしたー」と編集者に訴える二葉亭四迷。そして十日後に再び「「頭の工合よろしからず毎に違約して何とも申し訳なくー」と繰り返している。果たしてこれで通ったのだろうか。いや、たぶん通したのだろう。
    脱サラして作家になった源氏鶏太は、ちっとも筆が進まずに深夜徘徊する。
    それでも書けなくてまた朝方まで徘徊。そして道端の樹を見てつぶやく。
    「俺は、樹になりたい」・・これはアブナイ。
    なんて真面目な人たちなんだ。
    タモリさんなどは、締め切り日に原稿があがらずに編集部を大混乱に陥れ、「面白半分」に白紙ページまで作らせている。

    横綱級は笹沢佐保で、このエピソードは出色。
    あともうひとりは野沢昭如。締め切り間際に必ず失踪したらしい。
    そんな「伝統芸」とも言える〆切りにまつわるお話たちは、笑えないものもたくさんある。
    吉本隆明さんの長女・ハルノ宵子さんの「物書き根性」には泣けた。
    亡くなった父親の遺体の上にロックアイスを置き、外界を遮断して朝までかけて原稿を書き上げ、「どうだ!やったぜ!誉めてくれよ」と父親の顔をぺチぺチ叩いて2ショットを撮ったというもの。ああ宵子さん。私もそれをやりたかった。。。

    作家さんたちへの愛があふれる仕上がりが憎い〆切り本2。
    お好きな作家さんから読み始めても構わないが、出来れば順繰りに読むのがよろしいかと。章立てや登場順にもちゃんと意味があるからだ。

    • 夜型さん
      キャサリンシェドリックの「読書と読者」「続・読書と読者」!これがすごいと言うことをnejidonさんにお伝えに上がりました。
      おやすみくだ...
      キャサリンシェドリックの「読書と読者」「続・読書と読者」!これがすごいと言うことをnejidonさんにお伝えに上がりました。
      おやすみください!
      2020/01/26
    • nejidonさん
      夜型さん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます!
      おお、ご紹介いただいた本は初めて聞くタイトルです。
      亀のような歩みですが...
      夜型さん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます!
      おお、ご紹介いただいた本は初めて聞くタイトルです。
      亀のような歩みですが、なんとかたどり着くようにしますね。
      いつもありがとうございます。
      おかげさまで「本にまつわる本」も50冊を超えました。
      自分でも呆れるほど楽しんでおります♫
      2020/01/26
  • 「何があっても、〆切は絶対にやって来る」
    そんな真理を、教科書でお馴染みの文豪やその家族、平成の今をときめく売れっ子作家、一世を風靡した漫画家たち、はたまた、〆切破り常習犯の彼らにヤキモキさせられた編集者まで、それぞれの内容で表現した、80篇からなるエッセイ・アンソロジー。

    書き手も様々なら、内容も様々。
    〆切が迫ってるのに書けない!という苦しみを訴える、身近な人への手紙。
    書けなさすぎて、出版社に「カンヅメ」にされた時の話。
    はたまた、〆切があるからこそ書けるのだ、という話。
    〆切目前に東京から脱走した作家を愛知県で捕獲し、雑誌に載せる謝罪文を書かせたという編集者の手記と、その謝罪文の実物原稿。
    ありとあらゆる内容の〆切話が詰まっています。

    個人的に特に印象に残ったのは、以下のニ作品。
    一つは、漫画家兼エッセイストでもある、さくらももこさんによる、高校時代にデビューを目指してひたすらに作品投稿の〆切に間に合わせていたという話。
    結果が載った雑誌をスーパーで買ったけど、その場で見てショックを受けて動けなくなっては困るからと、はやる気持ちを抑えて帰宅する少女の姿が、哀愁あるタッチで綴られています。とてもしみじみとした気持ちになりました。

    二つ目は、夫の看取りと葬儀の間にも仕事をこなしたという、小説家の田辺聖子さんの手記。夫の葬儀で思いの丈を述べた喪主挨拶が、とある出版社の依頼で書き起こして雑誌に掲載することになるとは…しんみりした気持ちになると同時に、人気作家さんのある種の「業」みたいなものを感ぜずにはおれません。

    あと、すごくびっくりしたのは、タレントのタモリ氏が雑誌連載を「落とした」時に、その雑誌に掲載された「白紙文書」。
    タモリさんらしい諧謔的お遊びなのかと思えば、本当に〆切に間に合わなかったらしい。それにしても、テーマが「ハナモゲラ語の思想」って、どんな文章になるはずだったのか…気になってしょうがない。残念ながらそれは載ってないのですが。

    森鴎外、芥川龍之介、太宰治、川端康成、ドストエフスキー、バルザックといった、名だたる文豪。
    町田康、川上弘美といった現代の人気作家。
    赤塚不二夫、水木しげる、高橋留美子といった漫画界の大御所。
    はたまた、タレントのタモリやリリー・フランキー。

    たくさんの人の個性あふれる文章が一冊で楽しめるので、お得感のある作品集でした。

    • tsukiyomi777さん
      hotaruさん、初めまして!
      フォローと、たくさんのいいねをありがとうございます!とても嬉しいです(^^*)

      hotaruさんのレ...
      hotaruさん、初めまして!
      フォローと、たくさんのいいねをありがとうございます!とても嬉しいです(^^*)

      hotaruさんのレビューを読んで、この本が読みたくなりました(^^*)
      少し前にアンソロジーを読んで、遅ればせながらその魅力に気づき笑、次に読むアンソロジーを探していたのです(^^)
      良い出会いをありがとうございます!

      これからもレビュー楽しみにしています!
      よろしくお願いします(*^^*)
      2018/04/21
    • hotaruさん
      Tsukiyomiさん、こんにちは、初めまして。
      コメントありがとうございます。
      アンソロジー、同じテーマなのに、違う内容の様々な文体が楽し...
      Tsukiyomiさん、こんにちは、初めまして。
      コメントありがとうございます。
      アンソロジー、同じテーマなのに、違う内容の様々な文体が楽しめて素敵ですよね。
      私も、実は最近アンソロジーを読み始めました^_^

      これからよろしくお願いします。
      2018/04/21
  • 〆切と聞いただけで胃が、、、
    サイトに関連グッズ云々とあるけど、ちゃんと発売日に間に合うんでしょうね?!「〆切一筆箋」の次は何かなぁ???

    左右社のPR
    「やっぱりサラリーマンのままでいればよかったなア」
    あの怪物がかえってきた!作家と〆切のアンソロジー待望の第2弾。非情なる編集者の催促、絶え間ない臀部の痛み、よぎる幻覚と、猛猿からの攻撃をくぐり抜け〆切と戦った先に、待っているはずの家族は仏か鬼か。バルザックから川上未映子まで、それでも筆を執り続ける作家たちによる、勇気と慟哭の80篇。今回は前回より遅い…
    http://sayusha.com/catalog/books/p9784865281774%e3%80%80c0095

  • 〆切りを過ぎたって別に死ぬワケでもないだろうが、
    精神的に追い詰められ、崖っぷちに立たされているような状況がヒリヒリと伝わってくるエッセイ本。

    <心のゆとり>は大事だが、
    <後がない>という切羽詰った立場にいる人の思考は、脳の隅々までピンピンと張り巡らされ、命を繋ぐ為に必要な武器を必死で捜し求める。
    PENを持って、作家はやはり戦っているんだなぁ。

    幅広い年代で活躍された作家さんの作品が掲載されているのが嬉しすぎ♪

  • 作中に登場してくる編集者の存在感がすごいのですが、なかでも吉村昭「変人」は印象的でした。旦那さんを送ったあとに書かれた辻佐保子、田辺聖子のエッセイもしみじみとよかった。
    巻末の番付表、個人的に横綱は内田百閒です。これはひどい(笑)。

    ー待ち合わせに遅れた。〆切りに間に合わなかった。これは約束を守らなかったのではなく「間に合わなかった」という現象なのであり、相手を裏切ったこととはまるで異なることである。(中略)現象は止められない。誰にも。(94-95P/リリー・フランキー)

  • 江口寿史の漫画などもあってバリエーションは広がっている。田辺聖子の話はしみじみした。しみじみしても、ドタバタと忙しさに巻き込まれてしまうところも切ない、〆切人生は続く。

  • 最後の大トリは
    田辺聖子先生
    ご主人「カモカのおっちゃん」との
    最後のお別れで〆られていて
    なんだか しんみり じんわりきました

  • 1に引き続き、様々な〆切に対する文章の数々、かなり面白い。
    今回も、研究論文が入っているところが凄い。
    理系内容で、理解はできなかったけど、真面目に数式化しているところが、興味深く、頭が下がります。
    『面白半分』編集部のユーモアは最高。
    トリの山崎豊子には感動するしかない。
    総じて、ものを書くということには、自由と制約が必要不可欠ということが分かる。

  • 〆切に怯え〆切から逃げながらも、無くては完結できないのは何とも、と思ってしまった。

  • 海外からファクスが送れない話だけどこかで読んだことがある気がする。知らない作家なのだけど。

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著者プロフィール

文久2(1862)—大正11(1922)。石見国津和野(現:島根県津和野町)出身。明治14(1881)年東京大学医学部を卒業後軍医となり、17年~21年ドイツに留学。40年、陸軍軍医総監・陸軍医務局長になり、軍医として最高職についた。
大正5(1916)年予備役となり、6年帝室博物館長兼図書頭。公務のかたわら、小説家、評論家、翻訳家として活躍。代表作に『舞姫』(1890)、『うたかたの記』(1890)、翻訳『即興詩人』(1892~1901)、『ヰタ・セクスアリス』(1909)、『雁』 (1911)、『阿部一族』(1913)、『山椒大夫』(1915)、『高瀬舟』(1916)、史伝『渋江抽斎』(1916)などがある。本名は森 林太郎(もり りんたろう)。

「2023年 『森鷗外⑦ ヰタ・セクスアリス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森鷗外の作品

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