- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865281774
感想・レビュー・書評
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一作目でお腹いっぱいだったはずなのに、二作目まで読んでしまった。
〆切りに苦しめられる作家さんたちの言い訳エッセイや詫び状たち。
私的な書簡・手紙などなど。
後世にはこんなものまでも公開されてしまうなんて、因果なお仕事だわねと同情もしながら、それでも笑った、笑った。
時にしんみりとしたり感慨深かったり、どんな状況でも作品にして読ませる力はさすがなのだ。
つまり、今回もまんまと左右社さんの術中に嵌ってしまった。
この表紙がまず、鮮やかなオレンジ色だもの。これは眼を惹くでしょ。
そこに強烈な言葉たちが並ぶ。
「とうとう新潮社社長の私邸に監禁」・・軟禁の間違いでは?
「猿に邪魔されても〆切りはやってくる」・・猿は邪魔しないってば。
そして見返しにまで呪詛のように言葉たちが続く。
前作と同じ造りの、美しい小口。凝った紙質。
これはもう、絶対私を誘っているとしか思えない。
編集さんを含めて実に75人。更に女流作家さんによる座談会に7人。
海外からの特別ゲストもいて、何と「ドストエフスキー」と「バルザック」だ。
「罪と罰」の続編を送れと催促された時の逆ギレがまぁすごい。
ドストエフスキー作品のファンの方、ここはぜひ読んでね。
更に江口寿史、水木しげる、赤塚不二夫、高橋留美子と、漫画家さんも登場。
著者紹介・出典があって、奥付けまで来たらもうお終いかと思うと、この奥付けがひと味違う。
「2017年4月下旬 最初の刊行目標日でした」なんて書いてある。その次に、
「7月下旬 確かに刊行出来ると思っていました」
「9月29日 ほんとうの〆切りのはずが・・・」
「2017年10月30日 第一版発行」となっている。
嫌だ、もう。刊行目標日なんて、こちらには分かりっこ無いのに・笑
「頭の工合よろしからず、今度はどうしてもできませんでしたー」と編集者に訴える二葉亭四迷。そして十日後に再び「「頭の工合よろしからず毎に違約して何とも申し訳なくー」と繰り返している。果たしてこれで通ったのだろうか。いや、たぶん通したのだろう。
脱サラして作家になった源氏鶏太は、ちっとも筆が進まずに深夜徘徊する。
それでも書けなくてまた朝方まで徘徊。そして道端の樹を見てつぶやく。
「俺は、樹になりたい」・・これはアブナイ。
なんて真面目な人たちなんだ。
タモリさんなどは、締め切り日に原稿があがらずに編集部を大混乱に陥れ、「面白半分」に白紙ページまで作らせている。
横綱級は笹沢佐保で、このエピソードは出色。
あともうひとりは野沢昭如。締め切り間際に必ず失踪したらしい。
そんな「伝統芸」とも言える〆切りにまつわるお話たちは、笑えないものもたくさんある。
吉本隆明さんの長女・ハルノ宵子さんの「物書き根性」には泣けた。
亡くなった父親の遺体の上にロックアイスを置き、外界を遮断して朝までかけて原稿を書き上げ、「どうだ!やったぜ!誉めてくれよ」と父親の顔をぺチぺチ叩いて2ショットを撮ったというもの。ああ宵子さん。私もそれをやりたかった。。。
作家さんたちへの愛があふれる仕上がりが憎い〆切り本2。
お好きな作家さんから読み始めても構わないが、出来れば順繰りに読むのがよろしいかと。章立てや登場順にもちゃんと意味があるからだ。 -
最後の大トリは
田辺聖子先生
ご主人「カモカのおっちゃん」との
最後のお別れで〆られていて
なんだか しんみり じんわりきました -
耽読。
「〆切」に際しての作家や編集、その家族の悲喜交交、右往左往の一端を垣間見ることが出来る第二弾。正直、〆切破りの理由(パターンとしては「不調(己・家族)」「期限の延長懇願」「周囲・状況への不満」「居直り」「逃走」の大体五通りか)を流暢(?)に文に起こせるならば、本来の目的(〆切原稿)もすんなりと達せられるのではないか、と考えてしまうが、確かに「賃金の派生」する「義務」となってしまうと「前作よりも」と高みを目指す自尊心と周囲からの圧力で却って手が止まるものかもしれない。逆を返せば、それでこそ、の活躍のお歴々ではあるのだが。
個人的には「さよなら私の信用!(三浦しをん)」と「責任解除!(石川啄木)」という、この二律背反な短文こそが、〆切に対する人の切実かつ赤裸々な心情であり、複雑性を孕んだ根幹と考える。
今回も装幀が秀逸。逼迫がより鮮明になる色彩にもやられた!
おやすみくだ...
おやすみください!
コメントありがとうございます!
おお、ご紹介いただいた本は初めて聞くタイトルです。
亀のような歩みですが...
コメントありがとうございます!
おお、ご紹介いただいた本は初めて聞くタイトルです。
亀のような歩みですが、なんとかたどり着くようにしますね。
いつもありがとうございます。
おかげさまで「本にまつわる本」も50冊を超えました。
自分でも呆れるほど楽しんでおります♫