どこでもない場所

著者 :
  • 左右社
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本棚登録 : 178
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865282092

作品紹介・あらすじ

迷子でいいのだ。前の人が曲がったら、曲がる。バスが来たら乗ってみる。そうして道に、仕事に、人生に、はたまた納豆を買うか否かにまで迷ってきた著者による、旅、仕事、学生時代……などにまつわる、書き下ろし迷エッセイ集。プラハで北がわからない「タコと地図」、勝手に食事を決められる「おばあさんのバイキング」、18歳の夏に高田さんが見せた「変圧器」、ミニスカポリスに手錠をかけられる「革命の夜」など、20作品を収録。
巻き込まれて迷い込む、抜けられないエッセイの楽しみ!

感想・レビュー・書評

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  • エッセイ。最近のエッセイはとてもサービス満点でとにかく笑えるものやら専門家によるとても興味深い話やら内容が濃いものが多い。それらはとても為になったり、楽しい時間を過ごすことが出来る。
    この本はそういったエッセイを期待して読むとちょっとあてが外れるかもしれない。
    著者独特の飄々というのかふわふわ?ふらふら?というのかファニーな感じを湛えた文章だ。最初は取っ付きがあまりよろしくないと思いながら、だんだんその世界に馴染んでいく。そしてああとその感じを深く共感する。とてもそれ分かると。
    ただし、明確なゴールを持たない、現在ここにいるという確固たるものを持たないながらも、鴨さんが一筋の道として得てきたもの歩んできた人生は鴨さんにしかなし得ないものであるとも思う。

  • 著者の小説『伴走者』を読む前に引っかかっていたのは、実はこちらのエッセイのほうだった。ようやく読めた。なかなか良かった。

     最初は、方向音痴だなんだと、うじうじと書いてるなとスキっとしなかった。「どこでもない場所」という表題も、いろいろ迷って流されて、自分(の主張)がない男の軟弱な気持ちの表れのように感じた。

    「遠くなんかどこにもない。どこに行っても次の「ここ」があるだけで、自分からは逃げられないのだ。」

     つい、恩田陸の『まひるの月を追いかけて』でみつけたフレーズを思い出していた。

     そんな、見た目のソース顔の印象とは裏腹の、目立たない、でしゃばらない、受注体質の著者。幼い頃の様々な思い出、エピソードから、もう根っから心優しい性根がうかがえる。読むうちに、こいつの言うことには耳を傾けなければいけないのかもしれない、と不思議と思わされる。

    「背もたれ問題」という章、

    「背もたれを倒すと、後ろの席に座っている人と僕との間に、何かしらの関係性が生まれるような気がして、それがどうも苦痛なのだ」

     という記述に、なんでもかんでも権利を振りかざす昨今の風潮に、ふっと涼風を送るような爽快さがある。
     多少は(著者よりは)世知辛く社会の荒波に揉まれ、世相の風雪に晒されて来た身からすると、こうした主張控えめに流される生き方も悪くないものだと、つい思ってしまう。
     ともかく、弱い立場から発せられる言葉のひとつひとつが素直に心に届く。

    「正しい言葉はそれが正しいというだけで既に暴力なのだ」

     こんな言葉は、正論を振りかざし自分の主張を通そうとすることの多い昨今、ふと足を止めて耳を貸さなければならない発言だなと、ハッとさせられる。

     『伴走者』のマラソンの舞台となったキューバを訪れたことも記されている。

  • 読んでよかった。

  • 『伴走者』の出版記念で開かれた糸井重里との対談で、ここに出てくる主人公たちは動機がないんです、みたいなことを言っていた。たいていの人間には動機なんてないし、動機がない中でなんとかやって生きている。そこにいる意義なんて関係なしに、自分がそこにいる場所で、人との関係の中で与えられた自分の役割をなんとかやっている。このエッセイでも、ところどころそういうことが書かれていて、動機のある人間だと思って過ごしてきたけれど、そうでもなかったと気がついたわたしにとっては、心にスッと入ってくる優しさがあった。

  • 良かったです。

    気持ちの沈むことの多い毎日、こんな軽快なお話でクスッと笑えていいな…なんて思って読んでいたら、いつのまにかぐっと心を掴まれていた。

    また深夜にこの繁華街で、は、とても痛みを感じて刺さりました。読んでしまってすみません、と思うほど。現実感がない、とまで感じたことは私自身はなかったけれど、ここに、自分の居場所はないと思ったことは何度もある。
    当たり前を共有するのがなんだか難しかったりして。

    どこでもない場所が、自分のいる場所。
    そう思ったとしても、それでいいと腹をくくれる強さが私にはない。「ここ」と言葉にできないだけで、あるんだろうけど。
    主体性がない、でも、振り返れば一貫性はある、と書かれていた。目的地がなくても。たどり着いたところから振り返れば辿った道が私自身。ということかしら。

    軽いかと思いきや、そんな深いことまで思いいたる本でした。

  • 2019/7/7

  • 最後のエッセイ「弁慶」のおわり方がこの本の締めくくりにキュッと心のねじを巻いてくれる感じがして好きです.

  • 心の叫びを聴いた気分になった。
    オペラ座のお話がおもしろかった。

  • 面白い。
    独特の視線でものを見てる。
    誰かと似ている、ということがない。

  • そうだ。迷子でいいのだ。

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著者プロフィール

浅生鴨(あそう・かも)
1971年、兵庫県生まれ。作家、広告プランナー。NHK職員時代の2009年に開設した広報局ツイッター「@NHK_PR」が、公式アカウントらしからぬ「ユルい」ツイートで人気を呼び、中の人1号として大きな話題になる。2013年に「群像」で発表した初の短編小説「エビくん」は注目を集め、日本文藝家協会編『文学2014』に収録された。2014年にNHKを退職し、現在は執筆活動を中心に広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手がけている。著書に『中の人などいない』『アグニオン』『猫たちの色メガネ』がある。2018年9月、『どこでもない場所』を刊行。

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