どこでもない場所

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865282092

感想・レビュー・書評

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  • 「事実は小説よりも奇なり」などという言葉はあるけれど、これが事実なのか小説なのか、本当に分からなくなるから、まさに迷子だ。

    浅生鴨さんの最新刊「どこでもない場所」は、エッセイ本として出版されているが、まるで短編小説を読んでいるかのようだった。

    ただ、この世の中に「事実」などというものはなくて、全ての物事は「自分の目」というフィルターを通してのみ表現される幻想なのだから、それが真実だろうと幻想だろうと、他の人から見れば等しく「物語」なのだろうとも思う。



    表題作の「どこでもない場所」では、まるで浅生鴨さんの頭の中の宇宙空間を所在無く漂っている感覚に陥る。

    今目に見えているものが何であるかも、自分自身さえも分からなくなり、ただただ居心地が悪くて、頼りがなくて、不安になる。

    それでも「迷子でいいのだ」と断言することができるのは、流されているようで、実はものすごい強い意志なのではないだろうかとも思う。

    そして、物語の終わりに、今日もどこかで、サングラスをかけたずんぐりむっくりのおじさんが、迷子になってるのに戸惑うでもなく、飄々と道に迷っている姿を想像して、私はニンマリするのである。

  • 珠玉のエピソード
    何で歯医者に行くだけでこんなに面白いの?

  • その町の人たちが新聞を読んだり、店員と他愛のない噂話をしたりしながら、朝食を食べているのを横目にのんびりコーヒーやお茶を飲むのが好きなのだ。

    これでいいのだ。僕が本当に欲しかったのは、車ではなかった。オープンカーでもなかった。僕は自分の気持ちを変えるための型が欲しかったのだ。どんなときでも、自分の気持ちを明るくするものが欲しかったのだ。

    でもh本当言えば、やっぱり悔しかった。きっと僕は、また深夜に繁華街を歩くのだ。彼らのことを忘れるために。自分の不甲斐なさから逃げるために。

  • 不器用で生きるのが下手な感じ、とても共感できる。
    回避するわけでもなく、受け止めて不運なことも「まあいいか」といえる余裕。
    感想をうまく表現できないけれど、とても素敵。

  • 最後のエッセイの、最後の段落で泣きそうになった。ここにたどり着くために読んできたんじゃないかとさえ思った。

  • とても心に染みるエッセイ集。時間をおいてまた読み直したい。

著者プロフィール

作家、広告プランナー。1971年、神戸市生まれ。たいていのことは苦手。ゲーム、レコード、デザイン、広告、演劇、イベント、放送などさまざまな業界・職種を経た後、現在は執筆活動を中心に、広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手掛けている。主な著書に『伴走者』、『どこでもない場所』、『ぼくらは嘘でつながっている。』『すべては一度きり』『たった二分の楽園』など。近年、同人活動もはじめ『異人と同人』『雨は五分後にやんで』などを展開中。座右の銘は「棚からぼた餅」。

「2023年 『浅生鴨短篇小説集 三万年後に朝食を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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