本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (236ページ) / ISBN・EAN: 9784865282344
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
2019年8冊目。
テーマが「迷い」、著者はレベッカ・ソルニットと知り、本屋さんで出会って中を開くまでもなくレジへ。読み終えた今、その期待はまったく裏切られず。
VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代に必要なことは、より正確な予測力やより強靭なコントロール力ではなく、むしろ「迷い」のなかに留まれる力なのではないか、と思うことがある。「ネガティブ・ケイパビリティ(不確実性のなかに留まる力)」という言葉もあるくらいで、僕たちはもう少し「わからないこと・もの・場所」との豊かな付き合い方を学んでいくべきなのではないか、と。
幅広い分野の思索を著す一級の作家であるレベッカ・ソルニットによるこの本は、そんな「迷うこと」の価値を深く深く感じさせてくれる。「エッセイ」と一言で片付けてしまうにはあまりにも美しすぎる文章で、「迷っても大丈夫」という安心感と、「迷うことこそでこそ得られる豊かさがある」という希望を与えてくれる。
各章の題材となっている著者自身の体験に根付く話は、哲学、芸術、自然などへの深い理解に基づいて多様で、数々の著作からもわかるようにその射程範囲の広さに驚かされる。ときに現れるシュールレアリスティックな夢の話は幻想的で、この人自身が歴史家を越えて芸術家なのだと強く感じる。
「迷う=get lost」...喪失を獲得する、自分自身の足場や世界の手掛かりを積極的に手放してみる、そうした先でしか出会えない豊かさの存在を信じさせてくれる素晴らしい一冊だった。何かを失った(lost)思いに苛まれる自分でいるのではなく、そういう自分すらも丸ごと失ってみる(get lost)、ときにはそんな経験も必要だと思う。一生、豊かに惑い続けたい。 -
著者を含め、時代や文化的背景の異なる様々な人物や動植物とのストーリーを辿りながら、様々な土地土地を彼女が綴る美しい文体と共に巡っていく過程で、時間や空間が渾然一体と感じられるような不思議な感覚が得られる本だった。
ソルニットは、「迷う」ことは、自らを「失う」こと (lost) だと述べているが、そこには悲観的意味合いはない。人が何かに迷っているときには、同時に何か見知らぬものが顔を出しており、自分が見ている世界はそれまで知っていたよりも大きなものになっている。
本書中では、「迷い」の象徴的な色として「青」が度々登場する。空や海に果てしなく広がる「青」は、決して到達できない願望や欲望と、憧憬への「隔たり」の色であるが、人はその隔たりを埋めるための解決策をつい考えてしまいがちだ。しかしながら、例えそれらを獲得できたとしても、決して満たされることはなく、次の欲望が待っている。不確実性に留まりながら、その隔たりの感覚そのものを愛でることを提案する著者の主張に深い共感を覚えた。
他にも様々なエピソードが描かれているが、印象深かったのはカリフォルニアのウィントゥ族の話だった。彼らは、自分の身体の部位を指す時に、左右ではなく東西南北の方位を使う。ウィントゥにとって確かなのは揺るぎない世界の方であって、自分はそこに寄りかかる不確かな存在でしかない。 -
濃淡の異なる、しかしどこまでも透明な青に、一章おきに迷い込む。ひとり異国を旅する時、いまこの世にわたしの居場所を知るひとは誰もいない、という何にも代えがたいあの稀有なよろこびを味わったことのあるあなたに読んでほしい。
-
山の稜線の話がとてもよかった
-
隔たりの青
-
◆9/26オンライン企画「まちあるきのすゝめ ―迷える身体に向けて―」で紹介されています。
https://www.youtube.com/watch?v=ighe77gjWX4
本の詳細
http://sayusha.com/catalog/books/_philosophy/p9784865282344 -
九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1381031 -
・ベンヤミンがところどころでてくるけど作者のすきな哲学者なのかな?時間感覚の歴史?やったかなんか読もうとしたけど難しいすぎて断念したような.
・ベンヤミンに倣っていえば、自分の居場所を知りつつ迷子になっている
・迷子とはいわば精神の
著者プロフィール
レベッカ・ソルニットの作品





