- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784865282801
作品紹介・あらすじ
ワールドイズファイン、センキュー膜っぽい空気をゆけば休診日かよ
塔短歌新人賞・笹井宏之賞永井祐賞を受賞した著者による待望の第一歌集。鴨川沿いをiPhone片手に歩く「ぼく」の暮らしは、変わりながら、歌のなかでみずみずしく輝きつづける。
もう一人の自分が勝手に喋りだして「旅に出よう」と誘ってきた。ーー小山田壮平(ミュージシャン)
もしいまあなたがいま本屋で、本文より先に解説を立ち読みしてしまっているならば、わたしの能書きはきれいに忘れ、とっととレジに行くべきなのだ。ーー斉藤斎藤(歌人)
感想・レビュー・書評
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短歌の先生が大絶賛していて積読していた歌集。やっと手に取って読んでみた。
第一回笹井宏之賞にて永井祐賞の方。
京大農学部卒
世代間ギャップを感じてしまう。
おお、若い感性ってこういうことなのか!
すこし経ったらまた読み直したくなる読後感
風景と心情、特に若いころの何とも言えない不安を思い起こされて切なくなる
主観を通り越してショートムービーを観ている気分になる
きみを題材にした歌
ツタヤ以外のレンタルビデオもあるんだねみたいな顔をきみにされてる
きみがケトルでココアをお湯に溶かしてる 瞬間はなみだの加加速度
会いたいねってなったら会ってリクルートスーツときみと見た藤の花
きみを見たらきみが笑った一瞬をそのいっしゅんでわすれてしまう
いくつになっても円周率を覚えてる いくつになっても きみがいなくても
学生時代を謳歌した歌
満月の真下のコインランドリーで読む論文の、ひどくしずかだ
やめたサークルの同期会のお知らせの通知、その通知の薄明り
生活用品の歌
すこしも役に立たなさそうなものになりたい ペットボトルをひねるつぶれる
肉を食べたりおしゃれな服を着たりしてぼろぼろの十円銅貨みたいだ
500円玉が財布に2枚あるちょっとうきうきする大通り
こしあんの方が好きっていいづらいこの場の空気どうするかなあ
お酒好きなのかなと思わせる歌
お酒をからだに入れて遊んでからだからお酒とお酒じゃないものが出る
プリン体控えたいからお墓にはレモンの氷結を供えてね詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冬のひかりにぼくの体があたたまる 都会で暮らしていたいとおもう
ぼくにはぼくがまだ足りなくてターミナル駅に色とりどりの電飾
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街で淡々と生きるぼくを等身大にうたっていく姿勢が好き。ふつうなら目も向けず一瞬でわすれてしまうようなこと、でもほとんどそういうことで日常は形作られてて、それを丁寧に短歌に入れてしまっていく。
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コカ・コーラを瓶からついでくれるときぼくの視界はゆっくり縮む
割り箸と空気が絡み合っているきみが帰っていったそのあとも
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でも短歌がつまらなくなるわけじゃなく、切り取り方、耳触り、全体に漂うリラックス感。引き込まれて体験させられる
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蜂蜜のような匂いが吹いてきた工場を過ぎ振り返らない -
レビューを見て私も“京都にいる学生”の間にこの本を読みたいと思って。
言いようのない不安とか、よくわかる。
音楽を聴きながら歩いてる時に 考えが鮮明になる、
道端に落ちているゴミが何となく気になる、
その気はないけど死ぬ時のことを考える、
何にでもなれる自由が怖い、
憂鬱になると好きなものを食べて紛らわす。
今年から毎日日記をつけはじめたけど、日々を記録する作業を始めてて良かったと思った。
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現代詩集との出会い。
そして京都で学生時代を過ごした記憶を思い起こす郷愁。
同い年の筆者が見て、感じた「学生時代」
たぶん京都で学生時代を過ごした人にとって、思い出の京都は清水寺や嵐山じゃない。
出町柳駅から百万遍までの道や北白川のフレスコに思い出が詰まってる。
そんなあたりまえの日常を色んな視点で切り取って表現している素晴らしい詩集だと思う。
何度でもパラパラと読み返したい -
(2025-05-07)
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わかる、本の帯ってたいせつにするの難しいよね
作者、建築学科卒とかなのかな -
左京区で生活、ってのがいいな
鴨川ってなんか特別
あとがきに書かれてたけど去年ぐらいになくなった高野のミスドやコミックショック、僕もよく利用してたので懐かしく感じた -
紛れもない京都の(というか左京区)の青春の詩!
くるりの「東京」にも通じる、モラトリアムから一歩を踏み出す前/踏み出した後の、あの感じが生々しく詠われている。