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- 本 ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865341560
感想・レビュー・書評
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下手にても歌は愉快に作るべしひねり苦しむ偽者【えせもの】あはれ
玉城 徹
ここ数年、大学で短歌創作の授業を担当している。「恋」「スマホ」「労働」「生の指針」などをテーマに歌を作り、作者名を伏せて、まず自由に批評を書いてもらう。次の週に作者名を公開し、私の選評も含めた全員の批評も公開。短歌など初めて作った、という学生がほとんどながら、学期末に合同歌集を製作するころには、歌の呼吸をつかんでいるので感心してしまう。
柔軟な発想で「愉快に」短歌を作る学生たちの瞬発力は、本当にまぶしい。私自身は、1首作るにも一晩かけて「ひねり苦しむ」タイプなので、掲出歌で言えば「偽者」なのかもしれない。
掲出歌は、阿木津英の近刊「短歌講座キャラバン」で知った。20年ほど前の、短歌入門講座の冊子に寄せたエッセーをまとめた著書である。初学者向けの短いアドバイス集でもあり、「作歌」という行為の根源的な部分に触れた先人の言が多く引用されている。
たとえば、近藤芳美や、阿木津英の師であった石田比呂志は、「今、自分が、いちばん歌わなければならないものを歌え」と強く諭していたという。
長く短歌を作っていると、いつしか技術主義に陥ってしまい、語のあっせんに拘泥したり、歌会で票が集まりやすい華やかな歌に流れてしまうこともある。けれども、「今の自分はこれを歌わずにはいられない」という切迫した思いこそ、やはり「初心」なのだろう。阿木津英の、自身にも言い聞かせるような書き方が心に響く。
(2016年8月7日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示
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