- Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865410129
作品紹介・あらすじ
3.11の津波で流された家族写真を、持ち主の手もとに返そうとした活動の記録。人が生きていくのに必要な写真の力。
感想・レビュー・書評
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東日本大震災は未曾有の危機であったが、多くの人が、自分が何ができるかを考え行動を起こしたことを改めて実感した。
LOST & FOUND プロジェクトを立ち上げ実行した写真家たちが、時に不安を抱き、時に葛藤しつつも、素晴らしい活動を続けていった軌跡が、大きいサイズを活かした印象的な写真の数々とともに語られている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「写真とはなにか」とか頭のなかでこねくり回す前に、まずこういうことをするべきなのだろう。自然に頭が下がってくる。
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東日本大震災
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東日本大震災の津波で流れていた写真を洗浄し元の持ち主に返す「思い出サルベージ」と、傷ついてしまい画像の大半が失われて何が映っているのか誰の写真なのか判別ができなくなってしまったような写真を捨てることなく集め、ギャラリーの壁面にタイルのように並べて展示をすると言う方法で、写真と言うメディアの持っている意義の本質を捕まえようとしたLost and Found projectを紹介する。
壁一面に張り出された写真を私も見たことがある。
おぼろげな人物の輪郭、断片的な建築や景色、顔だけが消えてしまった着飾った衣装の写真などが、まだらに消えかかったイメージとして、真っ白な光沢の残る印画紙の画面の上に残されている。
もはや具体的な像を結ぶ事はなくなっている写真においてさえも、ロラン・バルトの言う写真のノエマ「それは/かつて/あった」を静かに語りかけてくるものであった。
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「二重の意味で写真」
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津波によって流され、多くの人々によって集められた膨大な数の写真。その写真を一枚一枚洗浄し持ち主の手に戻そうというプロジェクトの記録。
水に浸かり、ほとんど見られなくなった写真も多数収められている。それらの写真を見つめ、目を凝らし、写っていたであろう風景、その瞬間の人々の様子を思い描く。
そういう、思いを馳せる、巡らせる、ちゃんと捉えようとすることこそが必要なんじゃないかと思い至った。
震災による被害、辛い思いを今なおされている方々、また更には「写真」というもの自体に対する考え方捉え方を、変えさせられた。 -
311で持ち主に帰ることができなかった写真を壁一面に展示した写真は圧巻。何故か幸せなオーラを感じる。顔もわからない溶けた色しかない写真なのに暖かいものがある。写真て幸せの象徴なんだなと。一つ一つのしゃを近づいてみると溶けた写真が、人の死を感じさせる。最後に、このPJを発案した著者の父親の話から、写真と現実を一旦遠ざけて悲しみを受け入れるための時間稼ぎにもなることがあることを知った。写真を、持ち主に返すために復活させるPJも素晴らしいが、この持ち主に戻らなかった写真の展示を人と人との繋がりで世界に広げた彼が成長していく記録としても興味深い。
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随分前に送ってもらっていたのだけど、ようやく読み終えた。
多分、なかなか本を開けなかったのは、なんとなく罪悪感があったから。
あの震災のとき、すぐに沖縄から福島に向かい、海上自衛隊に混ざって御遺体を捜索する活動を続けたライフセーバー仲間と同様に自分にとって密接なアイテムの一つである写真を通した活動に取り組んだ高橋宗正氏に対する自分が何もしなかった罪悪感、と言ったら良いだろうか。。。
淡々と日記形式でかなり重たい内容が綴られているけれど、居酒屋で呑みながら世間話をしてる時と同じ語り口で伝わってきて、すごく不思議な感じだった。でも、それっていうのは多分それくらい自然になるほど、身に染み込むほど、この人の生死に密接な活動と向き合っていたんだろうなあ、というのを感じさせられた。
自分も写真と比較的関わる仕事をしているけれど、なんだか最近の誰しもが消費するように撮影するデジタル写真の文化に、なんだか写真に対する軽い嫌悪感を抱いていた。だから、「写真」というタイトルの文章がすごくズシンと来た。
「写真の価値は記憶の価値に近い」
また、明日から写真を撮ろうと思った。
この本を見て、まだまだたくさんある持ち主の元に戻っていない写真が戻ると良いなあ、と純粋に思います。
真摯に取り組み続けた高橋宗正さんに頭が下がります。
それから、どなたかも書いておられたけど、この表紙の手触りがとっても良くて好きです。