- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865540093
作品紹介・あらすじ
戦いを終えたカナミは『十守護者』のアルティと再会する。彼女の「恋を成就させたい」という依頼を受けつつ、迷宮攻略を再開するカナミ。カナミは新たな仲間として火炎魔法を操るマリアと、類いまれなる実力を持つラスティアラを加え、ついに前人未到の領域に辿り着く。しかし、順調に迷宮探索を続けるカナミの前に『天上の七騎士』が立ちはだかる。逃亡してきたラスティアラを取り返さんとする彼らに、カナミは決闘を申し込まれてしまうのだった。「-お嬢様を、返してもらう」運命の車輪はここから加速する-異世界迷宮ファンタジー、第二弾!
感想・レビュー・書評
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相変わらず面白い。ヒロインが大量発生していて切ない。
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【読書メモ】
カナミは十層のボス・アルティの願いをかなえる約束をしつつ迷宮にいどむ
そこに加わるマリア、ラスティアラ。そしてアリアの恋心、ラスティアラの秘密などすべては次へと続く
意味深な表紙だが意図不明
冒険感がたまらんな
1巻冒頭といい、いろいろ意味深なのが興味深い -
「彼」が「彼女」の「物語」に触れ合うのだから、「彼女」もまた――、
前置きはそこそこに『異世界迷宮の最深部を目指そう(略称ならびに愛称:いぶそう)』二巻のレビューを行っていこうと思います。今回は比較的作中用語を並べた書評になってしまいますが、どうかご容赦ください。
一巻で二番目に出会ったヒロイン「ディア」とペアを飾った主人公「相川渦波」(以下:カナミ)」ですが、ここ二巻はショッキングな表紙絵からわかるように謎のファーストヒロイン「ラスティアラ」の手番が回ってきます。
一巻からして「欠損」という攻めた表現で演出した通り、表紙絵は作品の顔ですね。
実は「欠損」はゲームならCEROなどのガイドライン規定で厳しく審査される表現だったりするようですが、今回は比較的直接的に、この巻の暗雲を示唆していることがわかりますね。
「鵜飼沙樹」先生の表紙絵は、ご本人の解説によると大量の寓意(含意)を込めておられるようです。巻の進行につれて情報は増えていく模様ですが、現時点では余談としておきましょうか。
さて、あらすじにも書かれている部分は問題ないでしょう。ネタバレ関係なしの前提条件を置かせてもらいます。
この巻は、期せずに十階層を通り越して二十階層の「守護者」打倒という一大事業を成し遂げてしまったカナミの取れる行動の幅を広げるとともに、一気に新キャラクターを投入して今後への布石を一気に打ち込んできます。
全百層で構成された「迷宮」には、十層ごとに「壁」となって立ちはだかる「守護者」が配置され、彼ら彼女らはボスという立場を自覚しつつ、迷宮の外にまで出て自由に振舞っているように、見えます。
それこそ十階層守護者「アルティ」は主人公カナミの味方をしつつ、「彼」と彼が関わっていく「彼女」の物語の周縁部から老婆心じみたちょっかいを出しているように、見えます。
百層の迷宮なら、きっと先に控える「守護者」の数は?
アルティ本人の口から説明された守護者のルールを含め、この時点からして言外に察することが出来る情報がさっそく目白押しです。初見の方はこの辺の吟味を進めておいてもよいかもしれません。
やること自体はダンジョンアタックで一巻と変わりはないんですが、金銭面でも実力面でも余裕が出てきたおかげか、「遊び」の余地が生まれてきています。
ゲームの要素が盛り込まれているとはいえ、それとは別に「買い物」は楽しいわけで。
逗留先の借家、魔法を覚えるための魔石、異世界の「祭り」、そして手っ取り早く戦力を欲しての「奴隷」――。
順番はいじりましたが、最後のワードに関してはこの世界の認識についてシビアさの度合いを引き上げた読者も多いかもしれません。詳細については後述しますね。
なんにせよ元の世界に残した妹・陽滝のためにも、時間はかけていられないと帰還に向けた最短経路を進みたい主人公ですが、急がば回れの「寄り道」を許容する余地は生まれています。
具体的には自身に伍する実力者である「ラスティアラ」が児戯めいた態度で迷宮探索に同行することを許します。
ついでに言えば、一巻に引き続き押しかけてきたラスティアラを導線にして彼女を取り巻く「物語」に関わっていくことになります。
具体的には一番手からしていきなりキャラが立ちまくっている彼女の護衛にして現時点での人類最高峰の実力者である「天上の七騎士(セレスティアル・ナイツ)」を対人経験を積むための相手として提供してくれます。
効率最優先と言いつつ、その実自分から不義理に陥りかねないしがらみに囚われに行っているようにしか見えないカナミの周辺を、ラスティアラは彼の言葉に沿った形で「整えて」くれます。
結果、「物語」ではなく「筋書き」という意味では恐ろしいほどテンポよく進みます、そう、恐ろしいことに葛藤すら置き去りにして決断をするまでもなく話は進んでいきます。順調に、順調すぎるくらいに……。
強さはステータスという目に見える「数字」によって表れて読者にわかりやすく達成感を提示してくれます。
わかりやすくお膳立てされてひとりかふたりずつでやって来る「天上の七騎士」との決闘も、この巻単独を読み進める上ではわかりやすい結節点でしょう。ひとまず言っておくと読者が気分良く読む分に、そつ「は」無い。
かと思えば療養中のディアをよそに、この主人公「カナミ」、数奇な運命に好まれたのか単独行動中に猪突猛進傾向のお嬢様「フランリューレ」とその学友一行とコネクションを築いたりと、なかなかに忙しいです。
この作品の本領は後に現れるとしても、主人公を中心とした掛け合いの巧みというライトノベル的楽しみを盛り込みつつ、かなりの情報を読者の意識/無意識下に打ち込んでいます。
ここ二巻も日常的つなぎの回と言い切るのは難しいです、侮れませんね。
また、カナミの内心のギャップの楽しさについては半端に余裕が生まれてくるここからが本領かもしれません。
効率最優先の冷徹思考と、カナミ本人の遊び心が相まって主人公の発言って外に出る出ないを置いといても、妙にいけずな人なんです。塩対応と言い換えてもいいかもしれません。ナチュラルにひどい人でもあります。
ただし、内心の葛藤にはきちんと押し負けるので愛嬌はあります。
押しの強い変人にはちゃんと引いてくれます。
鬱的な方向に傾きそうな時は、躁的な流れ(ヒロインとの掛け合い)に身を任せてくれます。
かと思えば、妙に自己言及的で内省的で変な意味でストイックなので、女性比率高めな「ライトノベル」の主人公なら読者サービスも兼ねて取るだろう行動をスルーしたりもします。
貴様正気か!? と思わないこともないですが、読者Aとしては別に硬派と言い切る自信もないんですよね。
あくまで私見と断っておきますが、コミカルパートにおいても終始弾ける三歩手前くらいの「ゆるさ」を保っている独特の雰囲気はこの『いぶそう』の特色の一つとして挙げられるかもしれません。
一番適当な言い方をすれば、微妙に力が抜けているというか「変」なんです。
「ふっ」と息が抜けた瞬間を見計らったかのように鵜飼先生のイラストがやって来るのもその印象を後押ししているように思えてなりません。
とまれ、あえて取り上げるまでもないポイントかもしれませんが、そんな視点を提供する主人公って結構面白い人ですね。この「面白い」って評に読者目線が加わってしまうのが辛いところなんですが、その辺は後ほどまた触れることにしましょうか。
緊迫した状況下でも空隙のような「和み」を提供してくださるのは、これからの読者の糧になるのかも。
まぁそれはそれ、時にこの作品の特徴として、未開示情報を置きつつ話を進めていく点は一巻のレビューで触れさせていただきました。この巻では三者三様の知識と価値観のすり合わせが肝になります。
もう一つの世界の知識とこの世界に妙にしっくりくる「ゲーム」という視点から多角的に物事を見る「カナミ」。
世間知らずのお嬢様である一方、国家機密に触れる地位と独特の思考回路を持つ「ラスティアラ」。
そしてカナミの内心を薄々看破しつつ、この世界の一般人としての視点を提供してくれる奴隷の少女「マリア」――。
存在自体が「未開示情報」の塊と言えるアルティなどほかにも情報を交換する相手はいますが、この三人が行動を共にするパートが今回多めということもあるので便宜上。
特にマリアは身近に存在するだけでこの世界における「普通」を教えてくれる重要な役割を担っています。
あと「奴隷」といえばこの作品も(一応)属す「なろう」ジャンルでは能天気な解釈が支配的のようですが、この作品においては主人公が「見ない」という選択を取れることもあるので、現時点では主題には程遠い問題です。
あくまで、カナミがマリアというひとりの少女を後ろ暗い境遇の中に「見た」、マリアも「見返した」という本質でご理解ください。
ついでに言えば、「マリア」という名前の意味もWEB版と書籍版では装いを変えるのかもしれませんが、その辺は書籍派の私にとっては現状関係の無いことかもしれません。
では、話を戻します。
まず、カナミとラスティアラ、このふたり「異世界」という前提を共有できます。
よって、このふたりがタッグを組めば早いうちからこの世界の核心に掠れるんじゃないかなって錯覚さえできる気がします。
まっさらな「元の世界」を知っているからこそ、この世界の裏側に潜む何者かの意図を早々に仮定するカナミ。
「物語の英雄譚」という仮想の中に自らを置くからこそ、カナミとマリアのふたりのことを愛すべき友人として接しつつ、自分を含めて「物語の駒」とみなし、神の視点から人を弄ぶ悪趣味さえ愛でようとするラスティアラ。
説明を省くと、一番近いのが「メタ視点」なのかもしれませんが、一巻から引き続きラスティアラの言葉は、物語を楽しんでいる読者にまで響いて「気味が悪い」です。
もちろん、ふたりは別に自分たちが本当に「物語の中の住人」であることを自覚しているわけではありません。
ゲームまたは冒険の高揚感に身を任せつつ、その実は世界に包囲されているような「居心地の悪さ」はきっと読者も共有できる感覚でしょうね、と思いつつ。
あくまでこの辺は二巻までを読んだ限りでの個人的心情です、当たっているか否かは未読既読問わず各人にお任せします。
で、その辺の「薄気味の悪さ」をスルーできるのが「マリア」との会話なんですよね。
市井のことを知らない二人の知識をフォローしつつ、彼女の存在ひとつで地に足の着いた方向に話が誘導されるのは大きい。
結果、穴はかなり開いてるんですけどこの「異世界」についての基本的な情報は読者向けにも伝わったと思います。長丁場前提のシリーズであることは断っておきますが、二巻時点でこれだけの「説明」を話の流れに織り込めるのだと、わりとびっくりしている私がいます。
初見の読者なら取りこぼしは確実にあるのでしょうが、続刊を読み進める上ではあまり困らなかった辺り素晴らしいですね。あと、この巻ひとつとってもヒロイン全員にきちんと出番も作っていますし。
それはそれと、この巻のラストは一度全力で気を緩めたのちに不穏な空気の醸成、そして明確に続きますよと、全力で主張するような引きで行われます。三巻における波乱の幕開けを予想させます。
と、そんなわけで現状の確認を述べてから、二巻のレビューを閉じさせていただきますね。
「百階層」という初見では絶望しか覚えない迷宮の奥行きについては、おおよそ四分の一を踏破。
安全なルート開拓は四分の一しか進んでいない、残りは前人未到の領域という難易度の高さも踏まえれば油断はできないのでしょうが、一巻では一桁だったことを鑑み、先に挙げた要素も含め一応の達成感は生まれています。
しかもショートカットの手段も手に入れたのでテンポを上げる努力も見えています。
あとは「成長」。目に見える数字「ステータス」形式として可視化される作品世界の特権ですが、レベルアップの度に細かく成功体験を稼いでくれるのは読者としてはありがたい。
今回は迷宮初心者の「マリア」がいたからなおさらです。RPGで成長の楽しさが一番大きいのは序盤ですから。
もちろん裏側が隠れているということは置いといてパーティー間の落差が残酷さを演出したりもしました。
「ステータス」という要素自体が恣意的なばかりでなくなんらかの伏線や遊び心を隠したりと作劇上の役割は結構多彩です。フレーバーとしてもいい味を出しているのも気持ちいいですね。
この辺は同界隈の先行作品の影響もあるのでしょうが、作者の独自色も濃く出ているように見受けられました。
新たな魔法や頼もしい仲間も増え、戦略の幅も広がって、凸凹しているこその噛み合わせの妙も生まれました。
認めましょう、確かに『いぶそう』の基礎は一、二巻にもあるのだと。
ただし、『いぶそう』という物語の基礎だとは言っていないのですけどね。
では、最後に。
様々なことをあえて置き去りにしてレビューを書いてしまい申し訳ありませんでした。正直、紹介する方としても今後の作品のウリとなる煌びやかな要素が目白押しなので、目移りしてしまったと言い訳させてください。
とはいえ、ラスティアラの動きを丹念に追いかけた読者なら、あの引きには薄々気付けたのでは?
私の言葉で保証されても困るでしょうから、ここはご自身の「目」でご確認いただくとして。
この小説はアンフェアではありません、実にフェアです。次なる三巻では、ここ二巻で蒔いた数々の種が結果することでしょう。
なぜならば――。
一巻を読まなければ二巻は読めない。
二巻も読まなければ三巻は読めない。
『異世界迷宮の最深部を目指そう』は当たり前の条理を見過ごさないのですから。 -
10層の守護者と再会してみたり、相棒不在の間
潜ってみたり、知り合ってみたり。
相変わらず淡々と進んでいきます。
うっかりストレスで高額の買い物をしてみたり。
やっちゃった、とかいうレベルではないです。
しかも別の高額買い物もしてますし。
1年だけなのに、どうするのでしょう?
前回のヒロイン(?)がいないかわりに、と
守護者が出てきたり、1巻ちらり登場が出てきたり。
結局女の子が3人になってしまいました。
でも、やっている事と感情は淡々。
とか思っていたら、守護者のご希望によって
話がややこしくなってきています。
そして最後。
彼は何のために、そんな事を言い出したのか。
もしかしてこれは王道的には…? という所ですが
どうなのでしょうか? -
最序盤にあった特殊能力が発現しないのでいったいあれはなんだったのだろうか、という疑問が。
1巻からそうだけど主人公が慣れるの早すぎで。
主人公が活躍しないといけないブン、仕方ないのかな?
たまには踏み台主人公がいても・・・・・・需要なさすぎか。