草木成仏の思想

著者 :
  • サンガ
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865640090

作品紹介・あらすじ

「草木などの植物も仏になる」という草木成仏論は、いつ、どのように生まれてきた思想なのか?-それは単なる「自然の賛美」でもなければ、「日本古来の自然観」でもない。平安時代に注目され、議論されてきたその思想を根拠から問い直し、自然との向き合い方を再考する。

感想・レビュー・書評

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  • きれいなイメージの言葉だなと思いました。
    初めて聞きますが、中曽根康弘氏が首相スピーチに「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」をしばしば用いたことで、一躍流行語となった言葉だそうです。

    「山川草木」とは『日本書紀』にも登場し、仏典や神道書などの古典の書物にも広く用いられている言葉だそう。
    「草木などの植物も仏になる」というのが草木成仏論。いかにも仏教的な思想ですが、「山川草木悉皆成仏」という言葉は、仏教書に存在しないのだそうです。
    平安時代の天台密教の僧侶、安然の著作を現代語訳し、彼の「真如」という概念にその意識が見られると著者は探り当てています。

    昔から、日本の宗教には自然は欠かせないものでしたが、それは西欧の宗教にはない感覚だったようです。
    近代哲学での「神」は、一神教の神を意味し、多神教である日本の神々は程度の低いものとして相手にされなかったそうです。仏教に至っては、無神論扱いされたのだそう。
    そこに西洋哲学と東洋哲学の違いがあるように思います。

    東洋でもまた自然との向き合い方はそれぞれで、テーラワーダ仏教では、自然はあくまで自然の法則に従うもので、災害は無情として受け止めるものだとされます。
    チベット仏教の場合は、神々をなだめる必要があり、これは日本と近いようです。

    自然を宗教の根幹とするほど密接に感じてきた日本人の感覚は、昔も今も変わっていないと思いますが、自然を敬いながらも大規模な環境破壊を繰り広げる日本に警鐘を鳴らしています。
    現在は西欧的な思考が主流となっているため、自然への畏れを取り戻すことが必要だと説いています。

    時期的なものか、原子力問題などにも言及しており、自身が新聞に投書した記事掲載等を見るに、結構強い物言いをする人だなという印象を受けます。
    ただ、言わんとする内容は至極もっともで、「自然に傲慢になってはならない」というのは、特に自然災害を受けやすい日本人にとって忘れてはならないことだと改めて感じました。

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著者プロフィール

1949年生まれ. 1973年, 東京大学文学部印度哲学専修課程卒業、1978年同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学. 東京大学文学部・人文社会系研究科教授を経て、国際日本文化研究センター教授]、総合研究大学院大学文化科学研究科国際日本研究専攻教授併任。現在, 東京大学, 総合研究大学院大学名誉教授.
著書:『解体する言葉と世界──仏教からの挑戦』(岩波書店, 1998), 『「碧巌録」を読む』(岩波書店, 98), 『明治思想家論──近代日本の思想・再考 Ⅰ』『近代日本と仏教──近代日本の思想・再考Ⅱ』(トランスビュー, 2004), 『他者/死者/私──哲学と宗教のレッスン』(岩波書店, 2007), 『仏典を読む──死から始まる仏教史』(新潮社, 2009), 『哲学の現場──日本で考えるということ』(トランスビュー, 2012), 『草木成仏の思想──安然と日本人の自然観』(サンガ, 2015)ほか多数。

「2019年 『冥顕の哲学2 いま日本から興す哲学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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