マインドフルネス最前線 瞑想する哲学者、仏教僧、宗教人類学者、医師を訪ねて探る、マインドフルネスとは何か? (サンガ新書)

  • サンガ
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865640229

感想・レビュー・書評

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  • 当方臨床心理学を学ぶ身なので、マインドフルネスの臨床応用に関心があり、熊野先生との対談部分の章を読んだ。結果、期待以上に勉強になった。まず、マインドフルネスが近年応用されている認知行動療法の系譜や考え方をわかりやすく端的に説明してくださっている。そのため、なぜ認知行動療法にマインドフルネスが利用され始めているのか、どういうメカニズムで効果を持つのかが非常にわかりやすかった。また、精神科と心療内科の違いなど、医療業界の裏事情なども知ることができて面白かった。

  • 【マインドフルネス最前線 香山リカ/サンガ新書/2015】

    瞑想もしくはマインドフルネスが仏教と切り離された時、それは制限のないただの道具となってしまうのかもしれない。

    それが、この本を読んでのひとつの発見だった。

    ‪原始仏教に端を発するという、ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想からその世界に触れたわたしにとって、八正道に沿って瞑想の実践を進めることは、当然の前提。
    だからこの本に描かれている、仏教以外の面からアプローチする人たちの感覚は、新鮮だった。

    ‪最初の対談で香山氏は、ヴィパッサナー瞑想への懸念を、"為政者、権力者にとっては「なんの評価、判断もなく、そのときそのときを生きるだけ」という人は、とても扱いやすい存在"と語り、それは全体主義につながる、主体の剥奪と放棄にあたるのではという見解を示した。‬

    ‪その危惧に、一読した時は違和感を覚えたけれど、読み進むうち、マインドフルネスを仏教の教え、例えば八正道のうちのシーラ(正しい言葉、正しい行為、正しい生活)の認識なく行えば、その危惧は当たらずと言えども遠からずということになるのかもしれない、と思い返した。

    この場合のシーラとは舵取りの役割を担っており、シーラのない瞑想が方向の定めのない「主体を放棄した」状態をつくるということは、確かにあり得るように思えてきたから。

    ‪2人目の対談者、テーラワーダ仏教のスマナサーラ長老は、マインドフルネスは仏教から盗まれたものだと、冗談めかしつつ強い言葉で非難する。

    それはアメリカで流行したマインドフルネスが、仏教の枠組みを持たずに、やり方だけが流布している可能性を想起させる。確かに怖い。‬

    ‪本来指導者のもと、寺などの枠組みの中で行われてきた瞑想は、いまやマインドフルネスという言葉のもとに技法として流布し、その芯にある思想を失いながら、社会に組み込まれてつつあるのだろうか。

    もしそうだとすれば、いま一度仏教の伝統に立ち返り、そこで何が行われてきたかを考える必要があるかもしれない。

    医療やビジネスとの接続で、成果を上げているのだとしても、マインドフルネスの技法だけが一人歩きをすることには、ある種の危険がつきまとうかもしれないから。

    そんなことを考えさせられた。‬

  • 流行りのマインドフルネスに対して
    なんとなく違和感を感じる人へ。
    その違和感が、少し解消されるかもしれません。
       
    マインドフルネスをめぐる対話。
    この「対談集」という形式、ぼくは好きです。
    ここでしか生み出されない言葉が、あるからです。  

    しかも、この対談相手が、
    哲学者の永井均さん、仏教のスマナサーラ長老、宗教人類学者の永沢哲さん、心療内科の熊野先生。
    面白くならないはずがありません。
      
    そして、いかにも素人っぽく質問してくれる、
    香山リカさんが素敵です。
      
    マインドフルネスをやることによって、あの永井均先生が奥さんから「『あなた、変わったわよ』と言われた」というすごいエビデンスがマインドフルネスにはある、
    という下りがなんとも好きです。

  • 精神科医でもあり、マインドフルネス初心者でもある著者が哲学者、ヴィパサナーの長老、宗教人類学者、心療内科医と対談している。著者の質問はマインドフルネス初心者で未だ理解しきれていない者にとって役にたった。精神医療の場でもマインドフルネスが利用されてきているようだが、何かしらの効果があればよいことだ。

    哲学者の話はよくわからなかった。
    ヴィパサナーの長老の話は人間っぽい。
    宗教心理学者の話は科学的でおもしろい。
    心療内科医の話ではマインドフルネスであってもなくても患者の役にたてばよいと思った。

  • マインドフルネス、っていうもののことはまったく知らなかったし、流行ってるってこともまったく知らなかった。
    マインドフルネス、とは、正確に説明できていないかもしれないけれど、理解した範囲でいうと、日本語にすれば「気づき」、瞑想などによって、自分の体や心の状態を客観的に見られるようにする、という。それによって、ストレスが軽減したりするという。ブッダの教えや修行、仏教がもとになっているという。

    さいきん(いや、つねに、か)情緒不安定ぎみなので、どうにかして穏やかで落ち着いた人になりたいと思っていたところ、この本のことを知り、香山リカ先生のことは信用しているので読んでみた。哲学的なところとか難解な部分もあったけれども、とても興味深く読んだ。脳科学とかもわからないなりにおもしろい。対談形式っていうのも読みやすかったかも。とくに心療内科医の熊野宏昭氏との対談がわかりやすくてよかった。実践的というか、心の病にかかっている人の助けになりそうだし、一般人でも活用できそうな感じがしたし。

    穏やかな人間になれるのならば、ちょっと瞑想ってやってみたいかも、という気にもなった。

  • マインドフルネスを色々な
    角度から対談を通じて学べました。

著者プロフィール

たくましいリベラルとして、右傾化する政治状況から現代社会の病理まで、メスをふるう行動派知識人。1960年生まれ。精神科医。立教大学現代心理学部教授。『若者の法則』『ぷちナショナリズム症候群 若者たちのニッポン主義』『生きてるだけでいいんです。』『弱者はもう救われないのか』『「悩み」の正体』『リベラルじゃダメですか?』ほか、著書多数。

「2017年 『憲法の裏側 明日の日本は……』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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