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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865640243

感想・レビュー・書評

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  • 輪廻についての特集号。
    輪廻思想は、因果応報の業と関連して説かれるもの。かつてのインドのカースト制度の中で新しい思想として誕生した仏教は、生まれながらにして逃れることができないカースト制度から魂を解放できる道をときました。
    つまり、輪廻から解脱することで涅槃に到達するということです。

    この思想に救われた人は数多かったと思いますが、現在では輪廻を絶望的な意味ではなく、再びこの世に生まれ変わるものとしてとらえる傾向もあります。

    仏教界でも、輪廻についてはいろいろな解釈がされており、その理解の仕方によって肯定派も否定派もいるとわかりました。

    人は、ポジティブなことよりネガティブなことの方に焦点を当てるもので、幸せな状況よりも苦しい状況に遭った人間に対する注目の仕方がずっと強いのだそう。
    同情のほかに「悪いことをするとこうなる」という理解を求めるものだそうです。

    よく「この世で悪事を働くと、来世でろくなことがない」とか「今不幸なのは、前世の報いを受けているから」という言い方を聞きますが、それはこうした傾向からきている言葉なのでしょう。

    来世に期待をする輪廻思想から離れ、現在の苦しみの解消法についての記載がありました。
    まずは気づきを保ち、苦しみにはまらずに「観る人」となること。当事者意識から離れた観点を持つと楽になるとのことです。

    厳しい状況に直面した時、無力感に陥るとそれがトラウマになってしまうものでも、大丈夫だと考えればなんとか乗り越えられるのだとか。
    悲劇にはなってもトラウマにならず、レジリエンスをもって生き延びてゆけるのだそうです。

    呼吸に意識を向け、見えるものや聞こえるものに注意を向けてもらうことで興奮を鎮める「グラウンディング(安定化)」というテクニックを知りました。

    個人的には、チベットの鳥葬についての記述に興味を引かれました。
    チベットの鳥葬は、死者の弔いと同時に、村の豊作を感謝する新嘗祭として神饌を捧げる儀礼でもあるそうです。
    捧げる神は、農業神であり狩猟神でもあるところの太陽神と、その使者である猛禽に対する返礼の儀礼。
    一見非情に思える鳥葬ですが、信仰に根差した意図があってのことだと知りました。

    ビッグイシュー日本版のオンライン編集長をしているプロブロガー、イケダハヤト氏の寄稿も面白かったです。

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著者プロフィール

1962年、福岡県生まれ。相愛大学客員教授。慶応義塾大学文学部社会学科卒業。専門は仏教思想・政治哲学。サブカルチャーにも詳しい。近著に、『仏教論争―-「縁起」から本質を問う』(ちくま新書)、『ごまかさない仏教―-仏・法・僧から問い直す』(新潮選書、佐々木閑氏との共著)、『知的唯仏論―-マンガから知の最前線まで─ブッダの思想を現代に問う─』(新潮文庫、呉智英氏との共著)、『さみしさサヨナラ会議』(角川文庫、小池龍之介氏との共著)、『宮崎哲弥 仏教教理問答』(サンガ文庫、白川密成・釈撤宗・勝本華蓮・南直哉・林田康順の各氏との共著)、『日本のもと 憲法』(監修、講談社)など多数。

「2020年 『いまこそ「小松左京」を読み直す』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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