北朝鮮とは何か 〔思想的考察〕

著者 :
  • 藤原書店
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865780154

作品紹介・あらすじ

アメリカ的世界観へのアンチテーゼ!
東北アジアの歴史的「矛盾」とも言える朝鮮民主主義人民共和国を「思想的」に捉える! 戦後、アメリカ的民主主義の中で思考停止する日本だが、北朝鮮に対し硬直した態度をとっていては、事はすまない。「生命の個人化」が進むあまり、歴史的視点を失う日本に突きつける。

感想・レビュー・書評

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  • 全体的にかなり北朝鮮に好意的に書かれている。「日本は北朝鮮と和解し国交を結ぶべき」という主張を大前提とし、その必要性の根拠として適宜東アジア情勢や北朝鮮の歴史・思想を示すという構成。

    北朝鮮との建国の正当性についての争いが、韓国が日本との関係改善を躊躇しているというのは事実だと思うが、だからといって北朝鮮との和解が即拉致被害者の帰還、日韓関係の好転および東アジア情勢の安定化につながるかは疑問。またその過程で予想される米・韓からの批判を「真摯に説明すれば分かってくれるだろう」で済ませるのは楽観的過ぎる。

    とはいえ主体思想の原点が戦前日本の国体論にあり、現在の米朝の対立は戦前の日欧米の対立を継承しているという指摘や、「北朝鮮のソフトパワー」(好感度ランキングでイスラエルより上)という概念は考えたことがなかったので、読み物としては面白かった。

  • 北朝鮮とは何かという題名から、北朝鮮建国後の文化や国の内情についての本だと思ったが、あくまでも外交関係を中心とした考察だった。著者の主張を簡単に述べると、「現在韓国および北朝鮮はその歴史認識において日本を加害者として糾弾することで国家の存在理由を確立させている。つまりこの正当化によって韓国と北朝鮮は日本に依存している。日本はあえて北朝鮮と国交を結ぶことで日本・韓国・中国・北朝鮮の戦後から続くこのこじれに決着をつけることができる。現在のアメリカが北朝鮮との問題を中東問題以上に重視することは決してなく、いま日本が北朝鮮と密接に繋がれば中米のどちらも慌てるだろう、なぜなら今日本が北朝鮮に対してだんまりを決め込んでいるのが2大国にとって最も利益の大きい状態だからだ」といった感じ。また後半では拉致問題解決に動き出した日朝両政府についても言及しており、2国間が緊密な連携を持つことで自ずから拉致問題は解決するだろう、としている。

    歴史認識による依存というのは面白い見方だと思う。朴槿恵大統領の「韓国が被害者であることは千年経っても変わらぬ事実である」という発言も印象に残る。ただこの歴史問題を解決すれば韓国や北朝鮮は国家としての存在理由がなくなるというのは言い過ぎだろう。そんなことを言えば別に日本という国の明確な存在理由があるわけでもない(国家というものの役割・目的に関してはまた意見が別れるだろうが…)
    また、北朝鮮との国交回復はもし有効だったとしても容易なものではなく、アメリカを敵に回す行為になるだろうから、あまり賛同できない。著者は東北アジア圏では他国に対して日本が有利な立場におり、北朝鮮との国交回復が最終的に中韓を含めこの地域の利益になるとしているが、こういった「大東亜共栄圏」的連携を結ぶには、まだ少し早いのではないだろうか(つまり、アメリカが弱体化するのを待て、ということ)。

  • 【選書者コメント】日本人の誰もが様々な思いを抱く北朝鮮に思想面から迫っていたので選んでみました。
    [請求記号]2210:960

  • イニシアティブは日本にあるとかいうけど、日本に何ができるのだろうか?

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著者プロフィール

小倉 紀蔵(おぐら・きぞう):1959年生まれ。京都大学教授。専門は東アジア哲学。東京大学文学部ドイツ文学科卒業、韓国ソウル大学校哲学科大学院東洋哲学専攻博士課程単位取得退学。著書に『心で知る、韓国』(岩波現代文庫)、『韓国は一個の哲学である』(講談社学術文庫)、『朝鮮思想全史』『新しい論語』『京都思想逍遥』(以上、ちくま新書)、『弱いニーチェ』(筑摩選書)などがある。

「2023年 『韓くに文化ノオト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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