苦海浄土 全三部

著者 :
制作 : 赤坂 真理  池澤 夏樹  加藤 登紀子  鎌田 慧  中村 桂子  原田 正純  渡辺 京二 
  • 藤原書店
4.65
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本棚登録 : 152
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (1144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865780833

作品紹介・あらすじ

全三部作がこの一冊に! 普及完全決定版!
「水俣病」患者とその家族の、そして海と土とともに生きてきた不知火の民衆の、魂の言葉を描ききった文学として、“近代”なるものの喉元に突きつけられた言葉の刃。半世紀の歳月をかけて『全集』発刊時に完結した三部作、第一部「苦海浄土」、第二部「神々の村」、第三部「天の魚」を一冊で読み通せる完全決定版。

感想・レビュー・書評

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  •  三部作目途中まで読んでいての感想。読んでいてつらいっす。久しぶりにじっくり読み込んでます。引用を入力するにしても、常用漢字以外を調べるのに、この字をここで使うか!!と驚きと感銘があり読み応えがあります。
    第一部 苦海浄土
     患者や家族自身が発せられる言葉に傷ついた。ただ今までのように生活していきたい。との気持ちが前面に出されていて、読んでいくのにしんどかった。いま被害者(この言葉が適切であるかどうかは疑問をもってしまう)は己を受容し生きているのだろうか。筆舌に尽くせない内容だった。

    第二部 神々の村
    村を語る合間にちらちらと水俣病の姿が見える。ただの村が水俣病によって神格化されているのになんとも言えない気分になる。第一部にもあったが、少女の月ものの処理のくだりは、筆舌に尽くしがたい感情が湧きあがった。残された子の、先に逝った親の、共に命を奪われたその苦しみに思いを馳せると、言葉に詰まる。

    第三部 天の魚
     闘争の中で出てくる言葉の一つ一つに様々な思惑があり、どの発言も切実に訴えるものがあった。裁判の経過について書かれているこの三部はほか二2部とは変わった面で読みにくかった。

    全三部作を読んでの感想
     公害について初めて考えたのは、小学5年生の時。公害を一枚の新聞として各自まとめるように言われたときだった。私は、イタイイタイ病を選び自分なりに書きあげたと思う。今になってあのとき書き上げた物は表面的なものにすぎなかったのではないかと振り返る。
     この本を読むに当たり、関連する多くの動画を見た。ショッキングなものもあったがそれを押してでも読み切れたのは、日々の生活の一部が描写されていたからだと思う。又その一面が病を反逆的に浮かび上がらせていたのも事実だ。
     日本はこれまで多くの公害に遭遇したけれども、新しい化学物質や技術の進展により、今後もブラックスワンは起こると思う。その時どうするのか、とても考えさせられた内容だった。

    • マヤ@文学淑女さん
      私も学校でテストに出るから四大公害を覚えただけで、ちゃんと「知ろう」としたことなかったな、と反省しました。発展というのは諸刃の剣なのだなぁ、...
      私も学校でテストに出るから四大公害を覚えただけで、ちゃんと「知ろう」としたことなかったな、と反省しました。発展というのは諸刃の剣なのだなぁ、と感じます。リニア中央新幹線も賛否がありますし、本当に公害問題は今後も向き合わねばならない課題ですね。
      2016/10/15
  • 石牟礼道子が亡くなって3年半も経つということが、にわかに信じ難い。
    三部作の合本は鈍器のように重いが、物理的な重さを超える重量と重力が宿る。執念いやむしろ怨念めいた筆致の裏には、彼の地に根付いてる宗教的人類への博愛と、断罪が滲んでる気がしてならない。
    マイルストーンとはこういう作品のことだと思う。

  • 民俗、歴史、文学の書

  • 読み終わった、にしたがとても読み終われるものではない。
    衝撃。
    途中、ユージン・スミスの写真集を傍らに読んだ。

  • 近・現代社会が排除してきた、十全なメンタリティ。
    それは、水俣病の被害者の方々にこそ守られていたのではないか?
    筆者の表現力にも、敬意を感じた。

  • 文学のあらゆるジャンルを総括してもなお、現代日本屈指の作品である。水俣病に苦しむ人々の姿を描き出したこの作品を、どんなおもいで書き続けたのか、と石牟礼さんに聞いたことがある。詩のつもりで書いたと語ったあと、彼女はこう言った。「闘いのつもり。一人で闘うつもりでした。」人は、独りでも大きな何かを戦い得ることを示した人生の書。
    (選定年度:2019~)

  • 言葉が生きていて、突き刺さってきた。
    この分厚い本を読み切ることができるのか?と思っていたけれど、どんどんペースをあげて気がついたら読み終わっていた。

  • 1000ページ目くらいの加藤登紀子さんの解説を読み、これは日本人として読まねばならないと感じた。

  • 文章表現が凄まじい。すごい。

    悲しげな目を山羊の目という。詩みたい。

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著者プロフィール

1927年、熊本県天草郡(現天草市)生まれ。
1969年、『苦海浄土―わが水俣病』(講談社)の刊行により注目される。
1973年、季刊誌「暗河」を渡辺京二、松浦豊敏らと創刊。マグサイサイ賞受賞。
1993年、『十六夜橋』(径書房)で紫式部賞受賞。
1996年、第一回水俣・東京展で、緒方正人が回航した打瀬船日月丸を舞台とした「出魂儀」が感動を呼んだ。
2001年、朝日賞受賞。2003年、『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』(石風社)で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2014年、『石牟礼道子全集』全十七巻・別巻一(藤原書店)が完結。2018年二月、死去。

「2023年 『新装版 ヤポネシアの海辺から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石牟礼道子の作品

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