タネはどうなる?!~種子法廃止と種苗法運用で

著者 :
  • サイゾー
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784866251042

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃的な本です。
    「種子法」が廃止された事は知っていましたが、ニュースでもとんと取り上げられないので非常に気になっておりました。森友加計問題で一色だったところで隙をついての種子法廃止。基本的に種子は民間の競争原理にゆだねるというのが国の方針となりました。
    そして世界的な大企業によって日本の食の根幹を握られてしまう事がほぼ確定となりました。その企業こそ悪名高きモンサントです。
    何処のホームセンターに行っても山積みになっている「ラウンドアップ」。悪名高き除草剤のメーカーです。ちょっと検索しただけでもどれだけ危険な薬剤か分かりますので、是非調べてみてください。
    そして、遺伝子組み換えによってラウンドアップで枯れない野菜を開発し、種子と化学肥料をセットで売りつける。そんなビジネスモデルが確立していて、それを日本でも広げようと躍起になっています。今回のTPPによってなだれ込んでくることは間違いありません。
    そして重要な米、麦。大豆という日本人にとって大事な穀物のノウハウも世界に大盤振る舞いの大公開。いくらでも魔改造して権利を申請してください。日本はあなた方巨大企業の実験農場になりますよ。という恐ろしい計画を日本政府は積極的に推進していく方針です。水、土、種子。人間が生きていく上で最も大事な所を外資にどんどん売り渡している事を、世の中の人々はどれだけご存じなのでしょうか?
    世界的には遺伝子組み換え食品を排除していく方針ですが、日本は真逆です。これから日本は優秀な実験農場と化していく事が明白なのです。中国やロシアというと日本からすると色々適当な国に感じるかもしれませんが、遺伝子組み換え食品の導入に関して真っ向拒否している国であります。
    日本はラウンドアップの主成分であるグリホサートの基準を従来の400倍にしました。これによって世界でだぶついているラウンドアップを日本で撒きまくる良い口実が出来たと思います。まさか日本国がこんな悪魔のパスポートに太鼓判を押すとは信じられません。
    遺伝子組み換えによって、さまざまな生物が産みだされていますが、食べなければいいという事だけではなく、その種子が原種と交雑してしまう事によって遺伝子組み換え汚染がどんどん広がって、将来的に全ての生物に影響を与えると思われます。動物もまた然りです。
    知識階級が安全だと承認した事で、どれだけの事故や病気が発生した事でしょうか。今回は安全だと言われても信じられるわけがありません。長期的にどういう健康被害があるのか、自らの体で実験させられる我々は愚かな羊でいるしかないのでしょうか。
    米という日本の根幹を担う穀物まで明け渡して、のど元をさらして尻尾を振る理由は一体何なんでしょうか?
    意識的に情報を取りにいかないと知る事が出来ない重要な事が世の中沢山あります。芸能情報に一喜一憂するのはもう終わりにしましょう。騙されて情報を隠され、最終的に痛手を被るのは我々庶民で、政治家たちは無農薬のコシヒカリを食べるんです。
    本当に大事な事を考える最後のチャンスではないかと思います。

  • 自分のSNSつながりで、よく話題になっていた種子法廃止の話。SNSではこんなに話題なのに、どうしてニュースなどでは出てこないんだろう?と感じていた時にオススメされた本でした。

    普段は政治系の本は読まないし、実際に法律の話はやっぱり難しくて、全部が理解できるわけではないけど、これを放置しておくのはダメなのはよくわかる本。

    こういうシステムが必要な人もいるのかもしれない。でも、せめて健全な物を作れる&食べられる選択肢は残しておいて欲しい。他人任せにしてられない。

  • 米、大豆、麦など、野菜を除いた主要作物の安定した生産と普及を
    促進する為、国の管理下、都道府県が優良な品種を選んで増殖させ、
    安定して農家に供給すること並びに、原種、原原種の維持を義務付
    ける。

    所謂「種子法」によって、戦後日本の農業と食は守られて来た。その
    種子法が2018年4月1日にひっそりと廃止された。

    大手メディアの報道もほとんどなかった。だから、私が知ったのも
    廃止が決定してからだった。これはまずいんじゃないか?そんな予感
    を裏付けてくれたのが本書である。

    民主党の鳩山由紀夫政権下で農水相だった時には著者にいい印象を
    受けなかったのだが、本書は農業の素人にも理解しやすいように
    種子法廃止と種苗法改正によって、どのような影響があるのかを
    記している。

    先日読んだ『ファーマゲドン』で食肉の将来に不安になったのと
    同様に、本書では農作物の近い将来に多大なる不安を抱かせる
    内容になている。

    なんだろうな…と思う。農家が種子の自家採取を自家採取をするの
    は当たり前にことだと思っていたのに、農水省令で例外が認められ
    ているなんて知らなかった。そして、将来的には原則禁止を想定して
    いるなんて。

    これは「農家は企業からタネを買え」ってことだよね。モンサント
    などの遺伝子組み換え作物の種子を売っている多国籍企業があるよ
    ね?しかも種子だけじゃなくて、農薬・化学肥料もセットでの販売。
    おまけに農薬も化学肥料も「これだけの量を使いなさい」って契約
    になるんだよね?

    「民間の活力を活かす」と日本政府は言うけれど、すべては日本の
    農業市場を多国籍企業に開放する為なんじゃないのか?

    すでに日本で栽培されている野菜の種子は90%が海外産だと言う。
    ならば、消費者の知らぬ間に遺伝子組み換え作物の認可が増え、
    気がついたら食品パッケージから「遺伝子組み換えではない」と
    の表示がなくなっているのではないか。

    根底にあるのはTPPだ。水道の民営化もその為だろう。水も、農産物
    も、私たちの健康に直結する。特に遺伝子組み換え作物については
    マウスや豚での実験で異常が現れることが明らかになっている。

    だから、ロシアなどでは禁止されているし、遺伝子組み換え作物の
    市場を縮小している国も多い。それなのに、日本は世界と逆の方向
    へ向かおうとしている。水道民営化もしかり…だ。

    遺伝子組み換え作物だけではない。雄性不稔F1種の普及が人体に及ぼす
    影響も不気味だ。

    農業に携わる人たちだけではなく、一般消費者こそ本書を読んで考える
    べきだと思う。自由貿易の促進の為に、食の安全をないがしろにして
    もいいものだろうか…と。

  • わたしは種子から作物を育てたことはないのですが、コメの固定種が大事なものであり守らなければいけないものであると分かりました。かつて伝統的な固定種で育てられていた国産100%の野菜のタネは、現在そのほとんどが海外で生産されているからです。また、主要農産物種子法廃止、農業競争力強化支援法制定の背景にあるTPPについても考えさせられました。民間企業がゲノム編集した種子と農薬と肥料及び遺伝子組み換え作物の話を読んで恐ろしくなったので、それらを避けるとともに、種子を守る活動について引き続き情報収集したいです。

    p30
    (前略)種子法第8条に各都道府県の役割として優良な品種を決めると義務付けしていることから、各都道府県はそれぞれの農業試験場でその地域の土壌、気候に適した品種を競って育種に励んできた。この同法8条がなくなったら各都道府県は優良な品種を育種する根拠がなくなることになる。

    p69
    その頃までは日本の野菜の種子は伝統的な固定種による国産100%で、私たちも安心しておいしい野菜を食べることができていた。ところが1925年米国でタネの技術者が赤タマネギのタネの採取中に一つだけタネのないネギ坊主を見つけ出した。調べると雄性不稔種、動物でいえば無精子症であることがわかった。それを母親として他の赤タマネギの花粉を受粉させると、そこから生まれてくるタマネギは何代交配しても、すべてがタネのない赤タマネギ、雄性不稔種になることが明らかになった。
    現在ではなぜそうなるかについては、ミトコンドリア内の遺伝子異常によるものであることが科学的にも証明されるに至っている。
    赤タマネギは甘く、サラダにすれば生でもおいしいが、残念ながら収穫時の2ヶ月しか持たない。しかし黄色のタマネギは乾燥させれば2,3年は持つので、重宝がられて一般に広く作られている。
    この雄性不稔種の赤タマネギを大量に栽培する。その横に1列黄タマネギを植えて、ミツバチに黄タマネギの花粉を受粉させれば、みずみずしい赤タマネギの特性と黄タマネギの長持ちする特性を持ったタマネギが栽培できる。こうして数千万種に1個しかない雄性不稔、いわば無精子症の突然変異株を見つけ出して、両方の特性を持つ一代雑種、F1(First Filial Generation)を大量に生産できる技術を完成させたのだ。

    p72
    さらに異常を起こしているのは、ミツバチだけではない。ヒトの男性の精子の数は1940年代には、平均精液1ミリリットル(1CC)の中に1億5000万の精子がいたが、現在ではその4分の→に減少しているという。成人男性で精子の数が1500万以下では男性不妊となるが、すでにその数は成人の2割に達しているといわれている。科学的に証明されているわけではないが、F1の種子が雄性不稔から作られていることに私は不安を感じる。
    2011年6月東北大学においてミトコンドリアの内膜に異常タンパク質が蓄積すると雄性不稔になるとの研究報告も出されている。同様の研究で筑波大学生命環境系の中田和人教授は、ミトコンドリアの異常が雄性不稔を引き起こすことを突きとめている。私たちの食べる野菜の体積の1割はミトコンドリアだといわれている。

    p92
    UPOV条約を批准したことによって中南米でモンサント法案と呼ばれた自家採種禁止法案が2010年代に次々に出されたが、チリやコロンビアで農民の暴動が起きて、事実上中止に追い込まれた。その後もメキシコなど中南米諸国では、次々に同法案は廃止された。
    ところが最近になってTPP11が署名されて、同協定ではUPOV条約を批准することが必要とされているので、メキシコでは現在自家採種をめぐってTPP11の反対運動が盛んになってきたと聞いたばかりであった。
    UPOV条約とは1972年に大企業が品種の知的所有権を主張し始めたことによって締結された条約で1978年と1991年に改定されて現在に至っている。種子の登録制度を設けて、新しく同質的で安定していて他の類似の種子と区別できるような種子を登録させて、その種子をフォーマルな種子として政府が認め、その種子を無断で自家採種することも流通させることも禁止することができる条約である。

    p119
    政府は次のように説明している。
    「国家戦略として農業の分野でも民間の活力を最大限活力しなければならない現代、民間による優秀な種子の利用を種子法が妨げているので廃止する」と。
    国家戦略として、日本古来からの在来種である伝統的なコメの種子を守るなら理解できるが、三井化学のみつひかり、日本モンサントのとねのめぐみなどの民間のコメの種子の普及が妨げられているから廃止するという。国民の立場からすればこれが国の利益を守るための国家戦略とはとても思えない。

    p120
    すでに平成11年の種子法の改正でみつひかり、とねのめぐみなど民間の品種もいくつかの県では優良な奨励品種に決定されていて、種子法が民間の種子の利用を妨げていることは理由にならない。

    p150
    石川県の加賀市のコメ農家は確かに2年目までは収量は多かったが、窒素肥料をふんだんに使うために土壌が追いつけないのか、いくら肥料を大量に施肥しても収量は次第に落ちたと語っていた。みつひかりの栽培では化学肥料を3割か4割多施肥するようで、土壌にかなりの負担がかかるようだ。

    p159
    住友化学はモンサントと業務提携をしている会社であることはよく知られている。
    (中略)
    さらに住友化学は住化アグロソリューソンズ株式会社を設立して、農業生産法人などにつくばSDの種子を販売して生産させ、収穫したコメを全量引き取って、コンビニエンスストアの大手セブン-イレブンに販売する、川上から川下までの一貫した生産流通の制度を確立したのだ。
    (中略)
    青木さんが栽培を始めてまず困ったのは、農薬も科学肥料も指定されたものを全量使わなければならないことで、青木さんの水田はもとは河川敷の堆積地、肥沃なので指定された化学肥料は本来必要ないのに大量に使わなければならなくなったこと、また除草剤、殺虫剤の農薬も水田によって雑草の生える種類が別々で、かつ年によっても種類が変わるのに指定されたものを使わなければならないことは農家にとつまてはたいへん困ることになるとこぼしていた。

    p207
    (前略)コーンフレークの例からして検査したら商品すべてで遺伝子組み換えのDNAが検出されたが、残存量が少ないなどの理由から今回も表示は見送られた。
    また現在の制度では遺伝子組み換えの表示義務は原材料の原料に占める割合の上位3位まで、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合の5%以上であるものに限定されている。
    このことは私たちが食べている食材の中に遺伝子組み換えの材料がかなり含まれていてもその一部しか表示できないことになり、EUの厳格な表示と比べはるかに緩いものになっている。



    p208
    これまでは5%以下の混入について遺伝子組み換えでない表示が任意で認められていた。ところがこれからは0%、不検出でないと、たとえばこの豆腐は「遺伝子組み換えでない大豆から作られた」という表示はできなくなることになる。
    遺伝子組み換え食品の表示は検出できても表示しなくていいのに、非遺伝子組み換え食品は不検出でないと表示できないとは論理からしておかしい。

著者プロフィール

1942年、長崎県生。弁護士。2010年6月、農林水産大臣に就任、12年反TPP・脱原発を掲げ離党。現在は、弁護士の業務に加え、TPPや種子法廃止の問題点を明らかにすべく現地調査や講演を行う。

「2023年 『子どもを壊す食の闇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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