J・ディラと《ドーナツ》のビート革命

制作 : ピーナッツ・バター・ウルフ 
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784866470320

作品紹介・あらすじ

※書影は原書のものです
早世の天才ビートメイカー、J・ディラの音づくりは何が革命的だったのか?
ヒップホップ史に燦然と輝くマスターピース『ドーナツ』を味わい尽くすための1冊が邦訳刊行!

生い立ち、地元デトロイトの音楽シーンから、スラム・ヴィレッジ、ア・トライブ・コールド・クエスト(ジ・アマー)、ソウルクエリアンズでの制作秘話、盟友マッドリブとの邂逅、そして病魔と闘いながら作り上げた『ドーナツ』まで、J・ディラの全キャリアを徹底総括。
ヒップホップ/ビートミュージックシーンのみならず、のちの凄腕ドラマーたちの奏法にまで影響を与えたあの"揺れるビート"の秘密に迫る。

日本語版には、自身もビートメイカーとして活動する本書訳者・吉田雅史による解説/ディスクガイドを追加収録。

感想・レビュー・書評

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  • 死期を感じながら創作していたんじゃないか?という仮定のもと遺作を解説していく後半が興味深かった。また「Bonus Track」部も自分のように詳しくないものには今後のガイドになりそう。

  • HIPHOPに本格的にハマったしまったのはThe Pharcydeの「Runnin'」を聞いてからだと思う。

    あれから、色んなHIPHOPに手を出して、日本語RAPも聞いてみたり、オールドスクールというジャンルに手を出してみたり色んなビートを聞いてみた。

    途中ATCQを知って、「俺が求めていたHIPHOPはこれだ!!」みたいに、興奮した。

    でもやっぱり振り返ると、どうしてもこの「Runnin’」が耳から忘れられなかった。


    ずっとそれが「なぜなのか?、なぜ自分ばこのビートに吸い寄せられてるのか?」が謎だったが、この本に出会って全てを理解した。

    J Dillaだった。
    全てのビートはJ Dillaに通じていた。

    「Runnin’」もそうだった。
    ATCQのアルバムも、が全てやってるんだと思ったら。
    でも裏で一部ビートを作ってたのはJ Dillaだった。

    そして同時にJ Dillaがビートを遺して去った故人である事をしった。

    この本はおそらくよっぽどのHIPHOPマニアでもないかぎり手を出さないだろう。それこそ最近のMCバトル好きの人にとっては何も面白くない。

    ただ、自分みたいにHIPHOPの曲が好きで、サンプリング元を辿ってそこに物語を見出す事に喜びを感じている人からしたらこの本は素晴らしく良本である事を保証する。

    「DONUTS」は自分が聴いた中では最高のアルバムだ。

    そしてそれは1つの音楽というより、人生に近い。
    とにかく、この本は手元にSpotifyや音源が聴ける曲があるなら、是非曲を聴きながら本を読んて欲しい。

    自分は「DONUTS」の最後の「Welcome To The Show」を聞いて、そのサンプリング元のフレーズを知った時、思わず泣いてしまった。

    素敵なBeatをありがとう。

    R.I.P
    https://open.spotify.com/track/3T3oG6g4aTqPzvy8bAD6Kw?si=AaUIqpVQRoOfi3v8R_xnWg

  • この10年ほどの音楽シーンにおける特徴の1つとして、ビートメイキングに対する注目度の高まりが挙げられる。そんな流れの1つの源流としてビートメイカーを1人挙げろと言われたとき、恐らく最も多くの票を集めるのは本作の主人公、J・ディラではないだろうか。

    2006年、32歳という若さで夭折したJ・ディラの影響は現在の音楽シーンにおいても様々であるが、例えば私自身が身近なところで言えば、生ドラムの演奏における”揺らぎ”の価値を再発明したという点が挙げられる。サンプラーなどで打ち込まれるビートは通常、”クオンタイズ”という機能を使うことによって拍に対してジャストなタイミングで打ち込まれることが多い。一方、J・ディラは”久遠タイズ”を使わずにキックやスネアのタイミングが微妙に”揺らぐ”ことで、ナチュラルかつグルーヴィーなビートを生み出したとされている。

    その”揺らぎ”を意図的に人力で再現する、というのが2000年代以降のドラマーに課された新たなチャレンジであった。微妙な”揺らぎ”を表現するには極めて高いセンスと才能が求められるわけだが、それによってドラムという楽器の可能性・表現力は明らかにネクストレベルに進化していったと言える。

    そんなJ・ディラの生涯、そして名盤である『Donuts』の精緻な分析などをまとめた本作は、ビートメイキングという行為を知る上で第一級のテキストである。

  • ヒップホップはMCよりも職人的な匂いのするビートメイカーに惹かれる。
    どうしても俗な印象を受けてしまうラッパーに対してビートからは音楽からのメッセージのみを受け取るので洗練されているものを聴くとアートの一つなんだと感じる。
    そんな芸術の域まで昇華させているビートを作るのはプレミアと本書のJ Dillaがまず思いつく。
    彼のベースとドラムの独特な音はこれからもずっと聴き続けるものだと思う。

    そんな昔から好きだったアーティストの半生を描いている本は珍しく感じたので読んでみた。
    世界中のファンのいる(あくまでアンダーグラウンドではあるが)アーティストの本ではあるがとてもパーソナルな印象を持った。
    主要人物は5人くらい。
    その外堀に有名なアーティストがまたまた5人くらい登場するくらいでDilla本人がどのような生活をしていたのかがうかがい知れる。

    個人的にはJ Dillがどのようなこだわりを持ってビートを作っていたのかを知ることができたことがとてもワクワクした。

  • 『Donuts』という作品の解説として、批評として、J Dillaという人物の伝記として、それぞれとても充実した内容だった。

    その魅力を仔細に紐解き、いかにしてこの作品が作られたのかを時代背景やヒップホップシーンの動きとともに多角的にまとめられている。具体的なサンプルソースやビートメイキングの手法などについてもかなり詳細に解説されているが、素人にもわかりやすい。

    日本語訳版巻末の補足的な総括もよかった。

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著者プロフィール

カナダのトロントを拠点とするフリーランス・ライター兼編集者。

「2018年 『J・ディラと《ドーナツ》のビート革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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