日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ

著者 :
  • 飛鳥新社
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本棚登録 : 443
レビュー : 106
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784870314917

作品紹介・あらすじ

週に一回、「お茶」の稽古に通ううち、気がつけばもう25年。「失恋」「父の死」「コンプレックス」…、辛い季節を「お茶」とともに乗りこえた、感動の成長ヒストリー。

感想・レビュー・書評

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  • これはとても良い本だった。
    もっと早く読了すれば良かった、と後悔しきり。
    樹木希林さんが亡くなられて真っ先に思ったのは、3年前に手を付けたまま放置していた、この本のこと。
    著者の、茶道を始めた頃の疑問や戸惑い。
    特に茶会で抱いた敗北感のようなものに、胸が痛くてたまらなかった。
    私も小4の夏から高2の夏まで茶道を習っており、まるで自分のいたらない過去を振り返るようで辛いものがあった。
    生真面目なだけで気の利かない自分。
    何をやっても拙くて、ただ目の前のことに一生懸命なだけの、まるで余裕のない自分。
    そんなものに再会するとは思いもよらなかった。
    そして、茶道を中途で放置したように、この本も放置したまま。何のことはない、自分の欠点と向き合うことから逃げただけだった。

    音を鳴らすのが好きだったためそちらの道に進んだが、胸の底にはかすかな痛みとともに残るものもあり、山野草を育てたり活けてみたり。
    たまに季節の掛け軸を掛けてみたり。
    炉と釜こそ無いものの、他の茶道具は骨董市で買い揃え、よく亡父に点ててみたりもした。
    結局私は、忘れることは出来なかったのだ。
    希林さんと森下さんには、心からありがとうと言いたい。

    タイトルは、初めて足を踏み入れた茶室の掛け軸に書いてあった言葉。
    その意味するところも知らず、まして読むことさえ出来なかった著者が、25年の歳月をかけて心と身体とで体得していく日々が衒いのない文章で綴られている。
    正体不明の競い合いから来る不安を抱えていた日々が、まるで嘘のように晴れていくのを、著者とともに感じることが出来る。

    映画の中ではおそらく、希林さんが演じるであろうお茶の師匠が、それはそれは素敵だ。
    良い先生に出会えたということが、著者の人生の幸せに繋がっていることは間違いない。
    心に染み入って来るような深い言葉の数々を、読みながら何度もかみしめた。
    読めて、私も幸せだった。
    映画の公開が、待ち遠しい。

  • いい本に出会えたなぁと思います。以前、私もお茶のお稽古に通っていて、やはり筆者と同じようなことを感じていたから。お稽古のあとの清々しい気持ちや、先生や他のお弟子さんとの話しの中で感じた季節のこと、お茶のお道具を通じて知ったもてなしの心を、忘れていたあの感覚を思い出し懐かしい気持ちになりました。私のなかで上手く表現できなかったことも、そうそうと、文章になっていて、嬉しかったです。

  • とても読みやすくサクサクでした。
    「何をやっているのかわからない」というのは、とても良くわかります。
    わからないまま続けていけるのは難しいと思うので、それがすごいなと思いました。
    日々の生活の中で、気持ちが変わっていく瞬間を楽しんでいる感じが素敵でした。

  • 茶道は敷居が高いと思い習わなかったものの今でも興味があるので読んでみました。
    15のしあわせはどの章も頷くものばかりでした。
    特に『別れは必ずやってくること』『成長を待つこと』が良かった。別れは…一期一会の意味を深く考える事が出来、成長を…反抗期の頃から子ども達へ無言で教えている事と重なり、伝える事は簡単ではないと改めて思いました。
    いくつになっても勉強ですとおっしゃるご婦人、お茶のお仲間とのいい関係、なにより若い時からやめようと思う事があっても長く続けられている事が素晴らしいと思いました。出会って良かった本です。

  • 季節の移ろい
    人生の諸行無常
    静かにみつめる時間が茶道だった
    私にもこんな時間が必要だ
    どんな形でも、静かにそこにあるだけのものが時間があると、もっと人生は豊かになると思う

  • 確かに、季節とは寒暖でその移り変わりを感じ、あとは桜まつりだの花火大会だの収穫祭だのクリスマスだのと、イベントで意識するに過ぎなくなっている。食においては、年中季節はずれの材が手に入り、旬を感じることもない。一服を喫する中で、静かに自分と向き合って五感すべてで季節を味わう、あるいは一服をもてなす上でさりげなく季節をしつらえる、そんな茶の湯の心を伝えていただいた。茶道のお点前での厳しい制約は、おそらく自然をとらえ、己を顧みるために無駄ごとを排除するものだろう。こうした言い尽くせない振る舞いにおいて、和の文化と伝統を誇らしく思う。いざ映画館へ。

  • 昔お茶を習っていた時に思っていたことと同じことが書かれてあって少しびっくりした。私もお点前の意味があまりわからなくて、お稽古に行くのが嫌な日もあったが、なぜか行くと帰りはいつも清々しかったのだ。
    心をきちんと入れること。すべてのことに理由があること。
    点と点がつながって線になることが未だにある。お茶は全てにつながっている気がする。

  • 普通のどこにでもいる人が、「お茶」を長年続けていったことで生き生きした人生を過ごせるようになる。そうなるまでのステップを具体的なエピソードとともに優しい気持ちで綴っている。苦しくない人なんていないのだ。誰だってそれぞれ辛い体験がある。でも、たいていの人が「悪いこと」と思う「雨」も生き方次第で楽しいものになる。宮沢賢治の生き方を思い出した。

    何の飾りもないふつうの文章に自分が胸打たれた思いを、こうしてここに書き出すことは何とも難しい。どんな言葉をもってしても、その瞬間の思いを文字にするには足りないのだ。絶対的に足りないのだ。そんなもどかしい思いが、読み進めていくと、彼女の文章にも出てきた。


    言いたいけど、言えなかった。思いや感情に、言葉が追いつかないのだ。言おうとすると、虚しくなる。言ってしまえば、きっとシラける。(中略)
    胸の熱さと、言葉の追いつかない虚しさと、言葉にしてシラけてしまうことの恐れが、せめぎあいながら、沈黙という井戸の中をのぞいている。そのやるせない感情と、台無しにしたくないという配慮を共有しながら、静かに並んで座っている。(220)


    人間なら、そういうものに突き当たるはずだ。でもそれには時間がかかる。それを面倒と感じているようでは先はない。著者にとって、生き方を示してくれるのはお茶だった。お茶だけではない。何ひとつとっても、何かを示してくれる。誰にだって、そういうものがあるはず。誰だって、そういうものと出会えるはず。

    苦しみも楽しみも味わい尽くす。そうして、人としての深みが出てくる。

    (20131003)

  • 「お茶」を初めてみようかと、友人の教室にお邪魔した。私の「お茶」に対する稚拙で幼稚なイメージが崩れ去り、こんな素晴らしい世界観があったの!と驚きでした。その日のうちに買い求めたのがこの書籍。格式ばったしきたり、礼儀、作法とは違う世界観が言葉で表現されています。これから教室に通うたびに、ここにかかれている言葉の味わい方も変わっていくのだろうなぁと思います。「お茶」をしている方へお薦めの一冊です。

  •  生き方を考えるいい本だと思う。
     森下さんは、お茶を習うことで、季節を感じたり、今に集中することの大切さを感じたり、自分の生き方を見つめなおしている。お茶ってすごいなあと思う。でも、お茶でなくても、毎日悩みながら生き、何かを続けることで、こんな風に学んでいる人は多いのかもしれない。
     生徒にすべてを教えることは、自分の満足のためであり、相手の発見の歓びを奪うことだった。というのは納得。けど、学校はいつも他人と比べ、お茶は「昨日までの自分」と比べるところだった。というのは、納得しかねる。学校は確かに他人と比べることも多いが、目指すところは、昨日の自分を超える。個人の成長を見守り育てていると思う。

    • honaoさん
      この本を読んで、感じたことを しっかり自分の中で消化されていると感心しました。奥が深いコメントですね。
      この本を読んで、感じたことを しっかり自分の中で消化されていると感心しました。奥が深いコメントですね。
      2012/04/01
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著者プロフィール

森下典子(もりした のりこ)
1956年生まれのエッセイスト。『週刊朝日』のコラム執筆を経て、1987年その体験を記した『典奴(のりやっこ)どすえ』を出版。代表作『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は、大森立嗣監督・脚本、黒木華主演により2018年10月13日映画化され、樹木希林の遺作ともなり、大きな話題となった。他に、『いとしいたべもの (文春文庫)』『猫といっしょにいるだけで』などの作品がある。

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