諫早菖蒲日記

著者 :
  • 梓書院
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784870353787

作品紹介・あらすじ

佐賀藩の圧政に忍従する諫早藩。開港を求めて続々と来航する外国船。そこで動揺する武士の姿。当時の諫早を切々とスケッチした時代小説。

感想・レビュー・書評

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  •  舞台は、幕末の諫早藩(安政~)。
     諫早藩というのは、佐賀鍋島藩の支藩です。
     ヒロインは、15歳の女の子、志津。
     父は、諫早藩の砲術指南役。
     この父娘の日常が日記仕立てで展開されます。
     仕事柄難聴気味の父上の通訳がわりに、志津は大人たちの会話に入ることが多くて、その年頃の娘にしてはかなり世情に詳しく、幕末の激動を諫早の町から垣間見ていきます。

     志津が日記を書いていくという筋立てで物語が進んでいき、大人たち、、、とりわけ「武士」というものの理不尽なところとか(本藩である佐賀藩と支藩である諫早藩との世知辛い関係とか)、遠くで起こっている未曾有の大事件(外国船来航)の余波を感じたり、下級~中級ぐらいの武家の悲喜交々が15歳の女の子の目線で綴られる静かな作品です。
     静かだけれど、切り口が新鮮で楽しいし、利発な志津がとても可愛い。

     野呂作品で共通している風景描写もまた絶品。
     ほんとうに映像を見ているよう。
     カメラアングルが手に取るように分かります。
     爽やかで、少し哀しくて、とても美しい作品です。
     もしも機会があったら、是非ともお手にとってみてください☆

     藤沢周平作品がお好きな方は、きっとツボをつかれると思いますよ。

  • ピュアな歴史小説でした。当地の美しい景色、武家の凛々しい志、使われる者も含めた家族のやさしい交わりを、主人公・志津の感受性と利発さが読者に伝えてくれます。
    派手なストーリーではありませんが、本作は日常に終始していることで、かえって、本質的にゆるぎなく素晴らしいものを浮かび上がらせていると思います。

  • 向田邦子さんがお気に入りの本だそうで・・山口瞳さんの本に書いてあった・・・諫早、行ったことがあるのでなんとなく親近感も!

  • 野呂邦暢の没後30年にあたり、代表作だったこの作品を福岡の出版社が記念として復刻出版。郷土・諫早を愛していた野呂さんが、自宅として借りていた古屋敷の謂れを知って構想をあたためた物語。屋敷の裏手の池に植えられた「諫早菖蒲」をタイトルに、調べ抜いた郷土史や屋敷に残されていた古文書から、この屋敷を舞台にした幕末の日々を再現している。巻末に野呂さんの高校時代の親友で、この本のカバー絵(「菖蒲」)を描いた画家の荒木さんが、亡き友の思い出を語った一文を寄せていて、それが遅ればせの弔辞のようだ。

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著者プロフィール

野呂邦暢(のろ・くにのぶ)
1937年長崎市生まれ。戦時中に諌早市に疎開、長崎被爆のため戦後も同市に住む。長崎県立諫早高校卒業後上京するもほどなく帰郷、1957年陸上自衛隊に入隊。翌年除隊し、諌早に戻り家庭教師をしながら文学をこころざす。1965年「ある男の故郷」が第21回文學界新人賞佳作入選。1974年自衛隊体験をベースにした「草のつるぎ」で第70回芥川賞受賞。1976年、初めての歴史小説「諌早菖蒲日記」発表。1980年に急逝する。著書に『愛についてのデッサン』(ちくま文庫)、『野呂邦暢ミステリ集成』(中公文庫)、『野呂邦暢小説集成』(文遊社)、などがある。

「2021年 『野呂邦暢 古本屋写真集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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