シナリオ創作演習十二講 (シナリオ創作研究叢書)

著者 :
  • 映人社
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784871002172

作品紹介・あらすじ

「実戦」のためのシナリオ入門書。作品を書きながら「ドラマの仕組み・技法」を習得。世界の名作シナリオを分析、その技法・感動の秘密をさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • この人は山田洋次、大島渚と同期で松竹に新卒で入社した人です。なかなかユニークで奥深いシナリオ創作論を展開しています。
    「ドラマとは何か?: ストーリー工学入門」はここでは検索しても引っかかりませんが、まずは総論としてそちらを読んでからという手もあると思います。
    具体的に説明しながらも、その後に延々と観念論を展開するこの人の語り口が個人的には好きです。

  • 超目標
    一つの作品の中でいろいろな目的を持ち、さまざまな行動をとるが、結局変わることなく追求している最後の目的。その行動が貫通行動。
    貫通行動は、目的語と動詞で表す。 Ex. 殺人犯を捕まえる。天下をとる。恋人と結婚する。

    第一行動着手→うまく行かない 第二行動着手 第一行動とはまったく不連続であり、質の違うもの「いったいどうなるか?」というスリリングな感情に溢れている。行動の生まれる過程、及び行動そのものが、非常に面白いと感じられる

    主人公の行動が一応の決着に達し、ストーリーが行き詰まったと思える時には、今度は「環境」の側から主人公に働きかけること 「向こう岸から船を出させる」

    ストーリーは、主人公の行動の結果として生まれて来るもの

    ドラマとは、主人公と環境(社会枠)との間に反復され、次第にテンポとスピードを速めて行く、このようなピストン運動の総体に他ならない

    Self1 知的で明晰で現実的で、順序を追っていくことの好きな、命令型の前頭葉側の人間
    Self2 情念的で混沌として夢想的で、突然飛躍することの好きな、実行型の脳幹部側の人間

    シナリオの作業には、意志と感覚と情念が主役です。主人公に「なる」には、まずそのことが必要。知的な分析や解釈、Self1は、もっぱら、それを補助し、フォローするためのもの

    展開部③展開部④とステップアップするにつれ、「向こう岸から来る船」はいよいよ強力になり、環境の「カセ」の締め付けはますます厳しくなって、主人公はそれに対抗し、日常性のレベルを超えた、異常な、しかし極めて独創的な劇的行動を起こしていることが分かる

    展開部④の最後〜クライマックス アナグノリシス(真実の発見) スプリングボードのセリフ ex. この葵の御紋が目に入らぬか、桜吹雪の入れ墨、事件は会議室で起きてるんじゃない現場で起きてるんだ

    発端部ー展開部①②③④ークライマックスーエピローグ

    一つのシークエンスには、1つのヤマがあり、その最大のものがクライマックス。ヤマとは、主人公の正の行動力が、環境の反の抑圧力と激突して、その間から、そのいずれでもない合の行動を生み出す、その力動的な瞬間。
    一つの合が生まれると、それは次のシークエンスの正となり、再び新しい反と激突した新しい合を生む

    シナリオは常に情念Self1で書くのだということ、情念とは愛。主人公が誰を愛しているのか、誰のために生き、誰のために闘うか、誰のために行動するか→テーマ


    シナリオの第一行を何から書き出すか?主人公を抑圧する環境の「反」をぶつける
    創作とは、作者が主人公となり、作者の想像力によって構築した環境の中で現実と同じように行動すること
    各シークエンスには、分割された小目標を抱いた主人公(正)が、環境の矛盾(反)と激突し、次の行為(合)を生み出すユニットが一つあり、その合は次のユニットの正となって組み込まれ、そこで新しい反と衝突し、さらに新しい合を生むという形で、重層的に構築されている。
    一つの作品の中でいろいろな目的を持ち、さまざまな行動をとるが、結局変わることなく追求している最後の目的。その行動が貫通行動。
    貫通行動は、目的語と動詞で表す。 Ex. 殺人犯を捕まえる。天下をとる。恋人と結婚する。
    主人公と環境との間の矛盾、葛藤から描き始める。
    環境の側は理知的左脳で、主人公の側は情念的な右脳で考える。
    ストーリーを書くということは、想像の環境の中で主人公となって現実と同じように生きること。
    ストーリーは、主人公の行動の結果として生まれるもの
    シナリオは、「部分が全体を映す」重層的な構造である
    ドラマは単なる言葉の叙述ではない「実行」である。
    言葉は行動そのものでなく、行動の上に貼られたレッテルに過ぎない。→言葉は嘘をつける。
    発端部 
    主人公(正)に対して、これを抑圧する環境の力(反)が加わり、主人公の第1行動(合)を生む。
    展開部
    第1行動(正)が環境の障害(反)で失敗し、思いもよらない第2行動(合)に出る。第2行動は、その間に障害物を置いて、第1行動とは全く不連続であり、まったく質の違うもの。「一体どうなるのか?」というスリリングな感情に溢れている。多種多数の選択肢が考えられるが、いずれにしても切迫してその一つを選ばなければならない。選ばれた行動は、主人公に与えられた状況と性格に従い、極めてユニークで個性的なものである。行動の生まれる経過、及び行動そのものが、非常に「面白い」と感じられる。
    主人公の行動は、情念的な右脳で、環境の抑圧は、分析的な左脳で考える。
    ドラマの創作は、頭脳の中では右脳と左脳の葛藤のドラマ。作者として、第2行動を造り出すという作業(=アイデア)だけは、しっかりと努力して自分の足で押し進めなければいけない。そこに、作者としての仕事の核があることには間違いない
    展開部
    「向こう岸から船を出させる」環境の側から主人公に対するリアクションの行動を起こさせる。「カセを強くする」
    作者としてドラマを創り出す(主人公と環境を葛藤させる)ということは、実を言えば、自身の頭の中で、この対立し矛盾する2人の人間を奔放に噛み合せ、相闘わせることに他ならない。
    展開
    「向こう岸から来る舟はさらに強力になる(カセが強まる)」、主人公はそれに対抗し、日常性のレベルを超えた、異常な、しかしきわめて独創的な劇的行動を起こす。主人公は決して超目標を失わず、何が何でも障害の中央突破をしなければいけない(横道に逸れたり、回想を始めたりしてはダメ)
    展開部の最後で、主人公はその行動の終局点に到達し、そこを頂点として一気にクライマックスに突入する。スプリングボードのセリフ、アナグノリシス(真実の発見) ex.「この葵の印籠が目に入らぬか!」「桜吹雪の入れ墨」
    クライマックス 根本矛盾との全面対決、貫通行動の達成
    エピローグ

    セリフ
    行動の手段として使われた言葉こそ「セリフ」
    人が人を動かそうとする言葉、それが「セリフ」
    悲しいから泣くのではない、泣くから悲しいのである。ドラマは行動主義。
    セリフによるシーン構成の面でもストーリーの構成と全く同じ、正・反・合の弁証法のサイクルが回っている。正に対し、反のセリフが返り、その結果発展した合のセリフが発せられる。その合は新しい正のセリフとなって相手にぶつかり、さらに新しい反のセリフを呼んで、その結果、さらに一段発展した合のセリフが発せられる。こうして、セリフはドキドキするような対立と発展のピストン運動を繰り返し、独自のリズムを繰り出しながらシーンを盛り上げて行く。

    テーマ 
    人を「感動」させるには、その貫通行動がはたして人間にとって価値のあるものかどうか?その行動全体が意味し、主張しているものが人間の共感と支持を呼ぶものかどうか?それが問題である。
    貫通行動の「意味」や「主張」は、主人公が誰を愛しているか、誰のために生き、誰のために戦うか、による。「超目標」は、単純に殺人犯人をとらえたり、捕虜を奪還したり、恋人と結婚したりすることに止まるものではなく、その背後に、自分自身の自由な決断でその超目標を選び、それを追求する主人公の強い情念(愛)が隠されている。刑事が執拗に殺人犯を追求するのは、被害者に対する深い愛惜とともに、こんなことは絶対にあってはならないとする社会正義(人間愛)のため。自分の欲望のためだけに生きている人間は、自己愛に生きている。主人公が超目標を選ぶのは、いわば知的な(self1)作業。しかし、その決定をほんとうに動かしているのは、主人公の心の奥底に渦巻く「情念」(愛)(self2)である。その情念の強さこそ、一貫した行動を推進する根本のエネルギーであり、クライマックスに至って、すさまじい爆発力となり、観客を震撼し、「感動」させる。人間の感動を呼ぶのは、実は、情念(愛)の強さである。
    シナリオというのは、ある主張であって、社会という環境に対して自分という主人公が何をしたいのか、どういう形で貢献したいのか、ということの表明であるわけだから、それがなければできない。
    作者、したがって、主人公が、そのどれを選ぶかによって、超目標や貫通行動が決まり、さらに、主人公を抑圧する環境の「悪」の性格も明瞭となる
    社会で皆が合意しているモラルでなく、作家独自のエシックスが企画。
    不倫はよくないがモラル、しかし、本当に不倫はいけないのか、いけないとすれば何故かなどを問い直してみるのが作家の仕事。

    ドラマを面白くするコツは、主人公と環境を思い切り激しくぶつけること。つまりテーゼとアンチテーゼ、対立をはっきり、いわゆるカセを強くする。自分の中で、あんなバカなことを言っているふうに考えないで、思い切って大技を仕掛ける。始めのうちは怖い訳です。怖いから遠慮しちゃって、そんな派手な芝居はちょっと臭いんじゃないかなと考える。臭くなるのは腕が悪いからであって、話は逆、いわゆるパターンだとか、ありきたりだというけど、そういう場合は、大抵ぶつけ方が足りない。だから、思い切りぶつけて、その中からギリギリのユニークな解決を見出していく、苦しんで苦しんで主人公の個性的な行動を見出してくることがコツ

    シナリオ創作手順
    1. 主人公のイメージ、次に抑圧する環境(社会枠)のイメージを作る
    2. この両者を噛み合わせたクライマックスを考える
    3. クライマックスからファーストシーンを逆算し、発端部を想像する
    4. 発端部のクライマックスを考え、貫通行動を確立する
    5. 第1着手の行動から展開部を発展させ展開部それぞれのクライマックスを考える
    6, 展開部N個を重ねる
    7. もう一度クライマックスを考え、その組み立てを考える
    8. エピローグのイメージを考える

    ドラマにおける悪(反、アンチテーゼ)
    人間の究極原理は「生存すること」 L.R.ハバード
    8つの生存の衝動
    1.自己の生存を維持する、個体保存の衝動
    2.性的衝動、妻や子供など家族を維持すること、種族保存の衝動
    3.地域、学校、職場、地方、国家等のありとあらゆるグループにおける活動
    4.グローバルな視点での人間全体の関する貢献
    5.動物、植物など地球上に生息する全ての生命に関するもの
    6.地球とそれを取り巻く物質的宇宙に向けての生存
    7.人間の精神としての存在への衝動
    8.無限大、超越的な絶対者(神)に対するもの
    「最大級のダイナミックに対して、最大級の生存性を計ることこそ善。最少数のダイナミックに対する、最少数の生存性が悪」
    自分の中にある善と悪との矛盾を掘り出し、その相克を自分の頭の中でドラマタイズして、作品を作り出す。
    36の悪の環境
    1.人間以外のもの
    悪霊、悪神
    病気(細菌、ウィルス、微生物、小生物)
    異星人、エイリアン
    悪獣、怪獣
    悪性植物
    科学装置・発明品(原子力、化学物質、機械、ロボット、コンピュータ)
    自然現象、天変地異
    公害
    老衰、自然死
    宿命、天命
    2.人間
    独裁者、侵略者
    圧制的人物(王、社長、上司、役人、教師、警官、親、姑、番長)
    利己的人物(悪商人、やくざ、幼児、子供)
    敵対者、ライバル
    誘惑者、不倫者
    欺瞞者、詐欺師
    恐喝者、脅迫者
    誘拐者
    姦淫者、レイプ犯
    盗賊、犯罪者
    殺人者、暗殺者
    精神錯乱、発狂者
    錯誤、手抜かり、不測の事故
    欲望、野望
    自己、自意識、イド
    3.社会的なもの
    法律
    掟、戒律
    道徳、モラル、エシックス
    体面、評判、恥、義理、人情
    国家、民族、種族
    組織、集団
    家、家族
    戦争、革命、衝突、喧嘩
    金、経済
    三角関係、多角関係
    社会風潮、歴史の流れ

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