日出処の天子 全7巻 (漫画文庫)

著者 :
  • 白泉社 (2003年9月10日発売)
4.49
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本棚登録 : 95
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・マンガ
  • / ISBN・EAN: 9784871187978

感想・レビュー・書評

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  • 一月ぶりのブクログ。ありがたくも拙文を読んでくださっている方々、お久しぶりです。少し前から体の不調があったのですが(命に関わるものではまったくない)、そこへ身辺でストレスのかかるできことが相次ぎ、体調悪化→不安→より悪化→精神的不安定という負のスパイラルに陥っておりました。幸い処方された薬が心身共によく効き(結構単純な私)、どうにかとてもつらい時期は脱した気がします。皆さんのレビューもほとんど読むことができなかったので、またこれからぼちぼちお邪魔いたしますね。


    この間、本が読めなかったのには参った。集中できないのだ。物心ついて以来、こんなに本を読まなかった事って絶対になかった。お医者さんは「好きなこと、楽しいことをしなさい」と言うけれど、私にとってそれって、読書とか読書とか読書なわけで、まあなんと偏った人間かと自分でも呆れてしまった。フン、別にいいじゃん!と普段は思ってきたけど、今回ばかりは参った。

    音楽もダメだったが(あんなに毎日聴いてたクイーンも)、コミックエッセイなら読めることが分かって、お気に入りのを引っ張り出してちょこちょこ読んでいた。グレゴリ青山さん、吉田戦車さん、久世番子さん、山下和美さんなどなど、本当に助けてもらったと思う。ありがとうございます。

    その後ふと思い立って手に取ったのがこの「日出処の天子」。学生のころリアルタイムで読んで興奮し、その後文庫で何回か読み返して、筋立てからセリフからすっかり分かっているつもりだったのだけど、いやあ、今回読んで「こんなすごい作品だったのか!」と今さらながら衝撃を受けてしまった。何と言っても、ほとんどの登場人物が不幸だ。それも「愛」ゆえに。誰も現世では救われない。残酷で、切なくて、苦しい。それなのに、不思議と気持ちが落ち込まないのだ。「善人」毛人はもちろん、どの人も、厩戸皇子だって、心の底では愛の力というものを信じていると描かれているように感じたからだろうか。時間をおいてまた読み返してみたい。

  • 怖かった。
    いろいろな意味で。

    最終巻に収められた
    「馬屋古女王(うまやこのひめみこ)」は
    ホラーであった。

    しかし
    山岸涼子先生の果てしない想像力に
    探究心が刺激されて
    厩戸皇子について一層知りたくなった。

    果たして 実在したのか。
    架空の人物であれば
    なぜそのような人物が作り上げられたのか。
    謎は深まる。。。

  • これは若い頃に読んだことがなくて今回初読。想像と違った衝撃的な話だったけど、こういう世界観は好きかな。

  •  NHK「ブラタモリ」で法隆寺や石舞台古墳を訪ねるのを見たり、中国 武漢への支援物資の箱に書かれていた長屋王の漢詩のこと、その漢詩がQueenのTeoTorriateの元になっているのではという記事を読んだりと、このところ飛鳥奈良時代に触れる機会が多くあった。
     もともと、この漫画が日本の古代に興味を持つきっかけになった。この時代のことについていろいろ資料も読んだものの、これだけの漫画を描くにはとても及ばないとつくづく思わされる。他の本やテレビ番組等でこの時代のものを見ても、ここに描かれている人物やシーンが浮かんでくる。
     いつか奈良を訪ねてゆかりの地をまわってみたい。

  • 歴史上の有名人厩戸王子が特殊能力をもっている上に、女性を愛せない。

    しかも、皇子は超美形。

    あまりの設定にびっくりし、引き込まれ、厩戸王子に感情移入しまっくて悶絶しました。

    厩戸王子の毛人(えみし)への思いが、激しくそして悲しいので・・。

    ラスト切ないです。

    毛人(えみし)に「そっちいくか?」とつっこみをいれた方は多いでしょう。

    毛人(えみし)は真面目過ぎるよ。

    届きそうで届かない恋って少女漫画の鉄板ですが、男同士だとなおさら「失恋」の可能性が高いだけにせつないのかなあ。

    わたしは厩戸王子をいまでも応援してます。

  • 世界で一番好きな漫画

  • (01)
    テーマや人間関係は、単純化してしまえば幼稚なものかもしれない。それゆえに普遍的な問題を扱っており、何よりも漫画技法が存分に駆使されている。技巧的な漫画といってよいだろう。
    古代を舞台としており、主人公たちは常に同性愛や近親相姦など、近代的な文脈でいえば危険な愛にさらされている。ノーマルな読者からは遠い存在はどのように読者の間近に迫るのであろうか。ややもすると読者に疎外を感じさせる内容を作者はいくつかの特徴的な技法(*02)を用いて読者への問いかけをおこなっている。

    (02)
    まず、主人公たちの美しさがまず目を引く。(厩戸)王子にいたっては衣装や髪型でも魅せてくれるし、王子の変装や変化、苦悩やニヒル、半裸やはにかみなどもこの漫画の魅力であるといえる。王子以外のキャラはやや固定しているものの、漫画の常套でもあるが、シリアスキャラとギャグキャラ、小さな吹き出しやなどにより、コマを飛ばして読もうとする読者に対し予防線を張っている。
    次に、コマ割りの文法は論理的である。主には4段程度の段組で、最大4列程度の直角なコマでストーリーは展開している。一段に数コマが並ぶ際のシークエンシャルな効果、大コマにおける絵画的な構図、斜め割りのエクスクラメーションな効果や割られた2コマの対比などは読者を飽きさせない。
    しかし、特徴的なのは、心霊現象や自然描写、心象風景などにおいてコマの枠が解かれ、読者のほうに漫画が融け込んでくる融即な現象が起こっていることを指摘できる。解説的な地の文がほとんどなく、時制を示すような場合にのみに抑制されていることにより読者が作品を俯瞰してしまうことも防いでいる。また、その代わりに吹き出しの中にない、心的な科白や心情が相対的に多量となっており、それは絵や話、シチュエーションへの登場人物なりのツッコミとしても機能しているが、そのツッコミの当事者へと読者を突っ込んでいる。こうした臨場感の演出も技巧的といえる。
    また、スクリーントーンのトーンや階調も独特でもあるし、白黒がはっきりしている。明暗や男女の二面性(*03)というテーマにもこうしたメリハリは関わりももつものであるが、グレーの表現よりも、時間をおって、つまりはコマ毎に白黒が反転するような明滅にはやや幻惑的な効果もあるといえるのではないだろうか。
    コマ割りをまたいで、最前面にあらわれる人物や、コマという窓の向こうに見え隠れする人物のような表現にも溢れており、現在ではありふれた表現であるとはいえ、平面的な漫画面に奥行きをもたせ、読者を錯視に誘っている。

    (03)
    二項対立という点で、女と男という二項以外にも、蘇我氏と物部氏、同母と異母、崇仏と敬神といった対立を軸に物語は二転三転しながら膳臣美郎女との狂気に堕ちていく。対立があるからには結合があるわけだが、この漫画の最終では、母性ないし女性の狂気と王子が結合するところがほのめかされている。
    王子本人は、夢殿(*04)に引きこもったりというやんちゃもあるものの、エロスやタナトスを通じて、それなりの結合を、いってみれば近代的な性と生を楽しんでもいる。近代の標準では無産階級ともいえる王族や貴族の彼女ら彼らは、古代よりは現代に近いあたりを生きている。恋愛の問題や暴力の問題を問題として青春のように苦悩している様は、そのような有閑な生とも関係が深いが、そこには選択的な対立や結合といった、選択の自由がもたららされていることを見逃すことはできない。
    もちろん漫画であるのだから史実は問題にはならない。問題になるのは、常に、書かれた物と読まれた物とにあって、それらに慣れ親しむ私たちの生のほうである。

    (04)
    夢殿の八角は何を象徴しているのだろうか。
    背景の描きこみはそれほど多いわけではなく、この漫画にはすっきりした印象のほうがこの強い。屋内では内装や什器、屋外では建物や景物が描かれることもあるが、人物の描きこみのほうが強い。そのなかでも時に、庭の松が描かれたり、木や草や花も現れるし、池や星空も重要なシーンとなっている。八角は四角ではない。夢が四角を避けたのは、自然や無意識との関連で考えられてよいだろう。実際に築かれた夢殿そのものにも同じ意味があったように思う。奥のほうでは愛し合う二人が木の幹に入り込んでしまう場面もあった。八角は、人工的な幹の断面でもあっただろう。
    落ち合う二人の堕ちる場所の印象もある。地下室、崖の下、馬上、池など、物語をさかんに盛り上げており、ロマンスの伝統もみえている。
    夢や宇宙とのアクセス、浮遊感のほかに、怪物たちの自在な伸縮もこの漫画に独特なファンタジーを付与している。こうした幻想シリーズには古代性よりも近代性が浮き彫りにされている。

  • 月魚のあと無性に読みたくなって再読。厩戸王子と蘇我毛人がカブる。王子の報われない思いと孤独感がものすごくせつない。
    ★ごひいきキャラはもちろん厩戸王子

  • 聖徳太子は実は超能力者だった。
    そんな大胆な設定で描かれた壮大な物語。

    その財力にものを言わせ朝廷で影響力をもつ蘇我馬子。
    その息子、蘇我毛子はある日、早春のまだ寒い池で泳ぐ一人の美しい少女にひとめ惚れする。
    その後父親のつきそいで朝廷に出向いた毛子は少女にそっくりの少年と出会い彼が厩戸王子・・・後の聖徳太子だと知る。
    あの少女と厩戸王子は同一人物なのか。
    悩む毛子のもとに厩戸王子のいる池辺の宮から使者が来て、彼は一人の女嬬と会うこととなる。

    こんな風に始まり、実際にあった出来事をからめながら進んでいく物語。
    最初はただただ恐い印象の厩戸王子ですが、話が進むにつれて厩戸王子目線でお話が描かれるようになると、王子の切ない気持ちが伝わってきて何度も泣いてしまいました。
    王子のした事は確かにいい事ばかりでない。
    でも王子の気持ちがよく分かるから、可哀相な境遇の布都姫ですら邪魔者に思えたりして・・・。
    結末もとてもせつなかった。

    この話、布都姫が登場するまでは、王子に初恋の少女の面影を重ねた毛子が厩戸王子を追いかける。
    でもそれが布都姫の登場とともに立場が逆になってしまう。
    だから私は序盤の方が好きです。
    後半はあまりに王子が可哀相で・・・。

    それと母親というのはどれだけ子供に絶大な影響を与える存在なんだろう、とこのマンガを見て思います。
    あれだけ優れた才能や特殊な能力をもつ王子ですらそれは変わりないこと。
    能力で心の傷がいえるわけじゃないから。

    王子の淋しい心が分かる。
    だから私はずっと王子の味方です。

  • 話の始まりから終わりまで、衝撃の連続。個人的には進路を変えた作品。

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著者プロフィール

1969年、漫画家レビュー。1983年、「日出処の天子」で第7回講談社漫画賞受賞。2007年、「テレプシコーラ(舞姫)」で第11回手塚治虫文化マンガ大賞受賞。代表作に「アラベスク」「妖精王」など多数。

「2016年 『山岸凉子画集 光』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山岸凉子の作品

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