ある日、離れて暮らす父親から「母さんが『死にたい』と泣いてばかりいる」と助けを求める電話が入るのです。
この本の著者である娘、脇谷みどりさんは、うつ病に加え、認知症も発症した母親のもとに駆け付けたかったのですが、自分には重度の障害(脳性麻痺)の娘がいて、娘を置いて出かけることができませんでした。
その当時のことを彼女は「娘の命を取るか、母の命を取るかだった」と語っています。
どうしたら自殺を踏みとどまらせることができるのか、ということを懸命に考えた結果、思いついたのが、母に向けた『笑える』はがきを書いて投函することでした。
こうして、毎日書き綴って送り続けたはがきは5000通を超えたそうです。
5000通もの手紙を毎日書く(しかも、さし絵つき)ことの大変さ、想像もつきません。
でもこのはがきのおかげで、一進一退を繰り返しながらも、母親のうつ病は徐々に良い方へと向かっていくのです。発症から4年後には抗うつ剤が必要なくなったので、ここではがき送りは任務完了と思いきや、母親は「友達もあなたのはがきを楽しみにしている」と言い、結局、はがきは両親が脇谷さんの地元に引っ越してくるまで14年間も続いたそうです。
この本には、そのはがきの中から選ばれたものが沢山載っているのですが、脇谷さんは笑いを見つける天才だと思いました。はがきのネタを探すため、メモをもって出かけていたそうです。
クスッと笑えば、それが重なれば元気になれる。
笑いだけではなく、幸せの見つけかた、辛いときの乗り越え方、生きていることの素晴らしさ、母親の存在意義も母親に伝えているのです。
離れて暮らしながらもできる親孝行ってあるんだな、と気づかされました。電話も嬉しいけれど、はがきなら何度も読み返すことができますものね。
きっと、自分が気づいていないだけで、本当の身の回りにも注意を向けたら楽しい出来事、クスッとなったり、ほっこりしたりできることが沢山あるんだろうな。