日本の奨学金はこれでいいのか! ―奨学金という名の貧困ビジネス

制作 : 奨学金問題対策全国会議 
  • あけび書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784871541176

作品紹介・あらすじ

返済に苦しむ若もの急増。奨学金制度の問題点、改善策は何か。困っている方の相談窓口、救済方法も提示。

感想・レビュー・書評

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  • 「奨学金」は「学生ローン」。それでも借りないと
    大学に行かせてあげられない我が家。親が学費を工面して
    あげられないのは不甲斐なくて、申し訳ないと心を痛めています。
    苦労かけて、ごめんなさい。

    卒業したとたん、まだ収入もないのに(就職先があるかどうかも
    わからないのに)かなりの額の借金持ちになっちゃう。
    もし滞納しちゃったら・・・
    返済が大変で生活苦しいかもしれない、
    結婚もできないかもしれない、
    子供育てられないかもしれない、と次々浮かぶ心配事案。
    もう不安で不安で吐きそうです。

    それにしてもこんなサラ金よりも厳しい取り立てする
    日本学生支援機構から学費(プラス生活費)を借りて大丈夫だろうか?もし何かの都合で延滞しちゃったら、延滞金は年利10%だって。
    しかもビタ一文まけようとはしないんだって。
    さらに返済金の充当分は「延滞金」→「利息」→「元金」の順
    なので、なかなか元金が減らない→延々と返済していかなくちゃ
    いけない蟻地獄・・・。怖い、怖すぎる。

    日本人の学生が奨学金を借りると返済にこ〜んなに大変な思いを
    しなければならないのに、外国からの留学生には、毎月十数万円の
    奨学金が与えられているとか?
    しかもそれは返済不要だとか? これって本当ですか?
    不自由なく学生生活エンジョイして、ちょっとだけアルバイトして
    お金貯めて、日本で就職して家族呼び寄せてワ〜イワ〜イって
    なりますよね?
    せめてそちらにも返済義務を課してくださいよっ!
    その辺も不公平だし問題だと思うのですが、そのことについては
    この本では触れられていなかったと思います。 何故ですか?
    割り切れない思いなんですけど・・・。

  • 日本の奨学金はこれでいいのか! ―奨学金という名の貧困ビジネス 単行本 – 2013/11/1

    日本学生支援機構の奨学金は学生ローンである
    2014年12月25日記述

    伊藤達也、岩重佳治(いわしげ よしはる)、
    大内裕和、藤島和也、三宅勝久による
    現在の日本の奨学金・・いや学生ローンの問題点をまとめた本。

    自分も大学在籍中(2004年4月〜2008年3月)に日本学生支援機構から二種奨学金(きぼう21プラン)を借りていたので他人事と思えなかった。
    当時月々3万円ずつ借り入れて借用月数48ヶ月、
    借用元金1,440,000円。
    借用年利率1.29250000%。
    返還予定回数156回。
    利息を含む返還額1,574,201円となっていた。
    幸いにも借りた半額以上を使用しなかったためそのまま返還に充てることができ、
    2012年4月までに繰越完済することが出来た。
    それでも個人的に62万円を返還口座に入金したからデカイ出費だった。
    借りた金額がわずかだった自分でも大変な思いをしたものだ。
    もっと多くの金額を借り入れた人は大変だろう。

    本書の重要な指摘のひとつに大学生の半分が利用している日本学生支援機構の奨学金は
    実は海外の奨学金と比較すると単なる学生ローンでしかない事実である。
    (海外では奨学金は給付型が通常)

    日本育英会時代にはあった研究職や教職に就くと
    奨学金の返済が免除されるといった特例措置すら今は無いのだ。

    延滞金も厳しく10%が課されていた(現在5%)
    容赦無い一括繰り上げ請求。
    容赦の無い回収が債券回収会社(日立キャピタル債権回収会社など)によって行われている。

    三宅勝久氏の指摘によれば日本学生支援機構を監督する機関も無いのでサラ金の回収より酷い金の回収が行われているようだ。

    特に2004年に組織改変された日本学生支援機構になってからは有利子奨学金(きぼう21プラン)の貸出ばかりが増えている。
    1998年から2013年の15年間に有利子の貸与人員は約9.3倍、事業費は約14倍。
    無利子の貸与人員は約1.1倍。事業費は約1.5倍。

    国立大学も1969年には年間授業料が1万2千円であったことを考えると
    現在の年間授業料53万円以上はかなり高い。
    (もはや自宅から通学できる国立大でないと授業料が安いというメリットを享受出来ない)
    ⇒地元国立大志望者が増えるはずである。

    自分の母校の大学も
    2004年入学生は
    入学金30万円。
    文系学費 1年目1,104,000円(入学金含む) 2年目以降 893,000円

    2014年入学生だと
    入学金30万円。
    文系学費 1年目1,150,000円(入学金含む) 2年目以降 936,000円

    以上のように値上がりしている。
    (理系や文系でも国際系学部は更に学費がかかる・・・理系では依然として国立大のメリットが大きい)

    **現在、企業の昇給もかなり抑えられるようになった今の時代日本人の収入はなかなか伸びなくなった。
    しかし学費は高いまま。
    今の小学生、中学生の子供を持つ家庭が10年後あたりに大学学費を今の家庭以上に工面出来なくなるのは容易に想像出来る。
    下手をすると大学進学率が下がるかもしれない
    (その方が結果として良いかもしれないが)

    いま40代以下の世代で、自分たちが親からしてもらったことを自分たちの子供にしてやれると確信できている人たちは、何%くらいいるでしょうか。

    年金制度でよく日本の世代間格差が問題視されるけれども学費問題、奨学金問題を考えると世間で言われている以上に若い世代は金銭的に不利な状況に陥っていると痛感。

    今後のための具体的な施策としては
    国立大学の学費の値下げ、
    有利子奨学金(きぼう21プラン)の縮小、無利子奨学金(一種)の拡大。
    私大生には直接のバウチャー投入。
    これ以上の大学学費の値上げを許さない(私大)

    高卒求人を増加させる
    (今の高卒就職のようなハロワの規制を緩和して
    もっと多くの企業を高校生が受験出来るようにすべきである)

    高卒の求人数推移
    1988年 78万8000人
    1992年 167万6000人
    1995年 64万7000人
    2011年 19万5000人

    本書で第1章総論を書いた大内氏がP44で指摘していることからの引用
    〜「大学に進学しなければ、まともな職を得にくい」状況を放置しておいて
    「何で経済的にそれだけ大変なのに大学に行くの、別に大学に行かなければいいじゃない。大学で大して勉強したい訳でもないのだから」という意見を主張するのは、無責任でしょう。〜とある。
    全く完全同意である。

    給付型奨学金の創設
    以上のような対策が切実に求められていると思う。

    なお、予算など無くてもすぐ出来る奨学金の返済の内
    延滞金では無くまず元本に充当させていくことを実現すべきだろう。

    子育て世代を含め若い世代が無理なく育まれる世の中が出来るように選挙にも行き政治に圧力をかけなくてはならない。

    民主党が政権交代した時に実現した高校授業料無償化などが実現した例もある。
    政治に圧力をかけ続けることは極めて重要である。

  • 自分も大学時代、当時の日本育英会の奨学金をもらってた。何とか完済出来たけど。

    この国立大学の授業料の高騰は、酷いね。次男が2022年に大学受験なので調べてて知ってはいたけど、それに輪をかけて、奨学金事業の金融ビジネス化。

    融通の効かないお役所が、サラ金以上の最悪の債鬼だね。うちの子供達には絶対に借りさせないし、もっとこの事実をひろめたい。

  • 『日本の奨学金はこれでいいのか!――奨学金という名の貧困ビジネス』(奨学金問題対策全国会議[編] あけび書房 2013)

    編者:奨学金問題対策全国会議
    著者:伊東達也 弁護士
    著者:岩重佳治 弁護士
    著者:大内裕和 研究者(教育社会学)
    著者:藤島和也 大学院生
    著者:三宅勝久 ジャーナリスト
    装幀:アルファ・デザイン 下平純一

    【メモ】
    ・学資ローンについて私が以前より気になっていた点が(本書ではとくに負の面で深く)言及されていた。問題意識はまともなものだと思う。
    ・分類なら、338金融か370教育か
    http://syogakukin.zenkokukaigi.net


    【簡易目次】
    はじめに(2013年10月 奨学金問題対策全国会議 共同代表 弁護士・伊東達也) [003-005]
    目次 [006-010]

    第1章 [総論]教育における格差と貧困――「貧困ビジネス化」した奨学金問題から考える〔大内裕和〕 011
    第2章 [ルポ・奨学金地獄]若者の借金奴隷化をたくらむ「日本学生支援機構」――延滞金を膨らませて骨までしゃぶる“奨学金”商法〔三宅勝久〕 061
    第3章 [相談・救済活動の現場から]「奨学金被害」の実態と救済への道――制度上の諸問題、救済制度活用、そして改革への提言〔岩重佳治〕 105
    第4章 [座談会]日本の未来を奪う「学生ローン=奨学金」〔岩重佳治,大内裕和,藤島和也,三宅勝久〕 145
    資料編 185

    あとがき(2013年10月 奨学金問題対策全国会議 事務局長 弁護士・岩重佳治) [192-194]

  • 日本育英会から、日本学生支援機構へ。スカラシップから学資ローン=スチューデント・ローンへと変質。奨学金とは名ばかりのサラ金業者と化した日本学生支援機構の実態。その取りたて方も、まさにかつてのサラ金業者以上。
    にも関わらず、日本学生支援機構の実態があまり明らかにされていない現状と世間の自己責任論。そして、奨学金という名の学資ローンを多額に借りざるを得ない、今の大学生をもつ親世代と無知な学生たち。まさに貧困ビジネスとは、このことか。余りの衝撃に唖然!

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784871541176

  • 日本における高等教育のアクセスの悪さは、先進国のなかでもワーストだが(下手をすると発展途上国並なのかもしれないけど)

  • 親の経済力が子供の学習に影響を与える負の連鎖
    現在も進もうとしている大学の学費の値上げ
    これからを支える若い世代ばかりに負担を強いる構造と、そんな構造が作る“奨学金”を借りざるを得ない状況について考えさせられる一冊

  • 奨学金が返せない人が増えているいわゆる奨学金問題ついて書かれた一冊。

    日本育英会はいつの間にか日本学生支援機構という名前に変わり、有利子の奨学金が多くなっていた。正規雇用が当たり前でなくなった現在、奨学金の返済は重くのしかかる。さらにローンでないが故の過酷とも言える取り立てがあることも。
    数十年で跳ね上がった大学の授業料。他の先進国では無料だったり、無償の奨学金が整備されてる所がほとんどなのに。日本の大学教育は世界でも特異なのだ。

    奨学金問題を多くの人に知ってほしい。それにうってつけの一冊。

  • まず対策の第一歩として、全教職員は必読。

  • 奨学金が教育を受ける権利が経済的な理由により奪われないようなシステムだと思っていた。しかし日本の奨学金とはその根本的な原理とは全く違っていて、「奨学金」という名の仮面を被った学資ローンなのだということがよく理解できた。
    特に、延滞した場合の返済は、延滞金→利子→元金の順で返済し、延滞金と利子は原資にではなく経営収益に入り、貸付を行った銀行や債権回収会社に支払われているという構図が衝撃的だった。もはや奨学金機構は学生のための機関ではなく、銀行や債権回収会社を儲けさせる金融ビジネスであり、貧困ビジネスとでも言える存在である。

    奨学金の問題とはどんなことなのかということが分かりやすく体系的に書かれており、奨学金を借りている学生のルポや、具体的な解決策、相談先も提示してある。おすすめです。

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著者プロフィール

1965年、福岡県生まれ。九州大学大学院人間環境学府教育システム専攻博士課程単位取得退学。博士(教育学)。山口大学人文学部講師。専攻は図書館学、日本教育史。共著に『読書と図書館』(青弓社)、論文に「明治期の「苦学」の変化の図書館論への影響――雑誌『成功』を中心として」(「図書館文化史研究」第32号)、「学制施行期の書籍館政策について――“free public library”としての東京書籍館の成立をめぐって」(「日本図書館情報学会誌」第59巻第4号)など。

「2020年 『苦学と立身と図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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