情報力―情報戦を勝ち抜く“知の技法”

  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872578300

感想・レビュー・書評

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  •  毎日新聞の著名な北朝鮮ウォッチャー、鈴木氏との対談。
     2009年の著書なので、メインテーマの一つが「2012年の金正日の世代交代」となっている(実際は2011年末に、父親の死去に伴い、地位を継いでいる)。
     たんに、核ミサイルを打って瀬戸際外交を繰り返すだけの貧弱な国ではなく、鈴木氏によるオシント(文書解析)からうかがえる、北朝鮮のインテリジェンス戦略の高さについて(そして、日本がそれに思う様やられていることについて)、色々語られている。
     主体思想を中核とした金日成、それを含め父親の更なる神格化を促した金正日。
     その中でも、金正日が中野陸軍学校からインスパイアされ戦略を積極的に用いていることや、北朝鮮は実は政治的に追い落とされたものでも、10-15年経てば中央に復帰でき、そのため亡命者数は意外に少ないことなどが述べられている。
     あとは意外かもしれないが、公的に発表されている文章や、小説などからも北朝鮮の情勢は意外とうかがい知れるし、発表している方も案外、正確に読み解いてくれることを期待している。ただし、現地の人の文化や倫理、何よりその基礎となる語学やその細かなニュアンスに精通した人間がいてこそ、の話だが。
     そういう人間を育成するには金も時間もかかるが(それでも成果が出るまで2-3年)必ずや日本の国益になるであろう。

    <感想>
     こういうのを聞いていると、佐藤氏の念願である日本版CIAやMI6が出来たらいいのになーと、単純に思ってしまう。
     やっぱり情報を発信している側(北朝鮮側)も鈴木氏のことは意識していて、鈴木氏が毎日新聞に北朝鮮の社説を乗せると、その内容に呼応したものが次に発表されるという微笑ましい(?)やりとりも載っている。
     あと、私事だが鈴木氏が同郷(滋賀県大津市)の人で驚いた。

    鈴木氏が勧める北朝鮮本
    北朝鮮王朝成立秘史
    金日成と金正日 革命神話と主体思想
    朝鮮民族を読み解く
    北朝鮮はるかなり
    闇からの谺
    いま、女として
    核と女を愛した将軍さま
    拉致はなぜふせげなかったのか
    告白 チャールズ・ジェンキンス
    テポドンを抱いた金正日

  •  佐藤優の著書のうち、ロシアものとインテリジェンスものはおもしろいと思っているが、本書は後者で予想に違わずよかった。
     共著者の鈴木琢磨は、毎日新聞記者だが北朝鮮ウォッチャーの第一人者であり、その分析は各国のインテリジェンス専門家も一目おくそうだ。その分析手法は新聞など公開情報の分析で、文書諜報(またはOSINT)だと指摘する。過去の経緯、真意を解する語学力、情報の収集など、的確な分析は多年の洞察と経験の賜物と知れる。
     著者ふたりの会話を通して、それらを浮き彫りにする。またこのような仕事につきものの膨大な情報の整理法などにも触れる。本書の発行は2008年とちょっと古いが、中身は古くない。北朝鮮に動きがあれば、鈴木氏の分析をまっさきに読むと決めた。

  • 「ウソのような本当」 と「本当のようなウソ」北朝鮮という国家を軸として佐藤優・鈴木琢磨両氏がインテリジェンスの観点から語りつくした1冊です。大事なことの大半は公開情報にある。この真実を再確認しました。

    『外務省のラスプーチン』佐藤優氏と毎日新聞記者で北朝鮮の事情にかけては右に出るものがいないとされる鈴木琢磨氏による対談本です。『近くて遠い国』とされる北朝鮮。彼らのことをウォッチングしてきた鈴木氏と、ロシア人相手に丁々発止の外交工作を行ってきた佐藤氏の間に通じる『阿吽の呼吸』といいますか、情報にかかわる人間のスリリングさと、共に博覧強記であるので、思いもよらないところから繰り出される変化球に驚きながら、最後まで面白く読むことができました。

    『本当に大事なことの大半は、公開情報を精査することによって浮かび上がってくる』
    オシント(オープンソース・インテリジェンスの略)または『文書諜報』とここでは言ったりしますが、鈴木氏の北朝鮮に関するオシントの熱心さは本当に『第一人者』と呼ばれるものにふさわしく、もともと学生時代から朝鮮語を習得し語学に堪能なだけではなく、朝鮮大学校の図書館にあまりにも熱心に『情報収集』に励んで出入り禁止になったり、日本にある北朝鮮関係の文献を扱う専門の書店に足繁く通っていたりと、『本当の情報を取る』ということは並大抵のことではなく、しかも相手があの北朝鮮ともなると、ここまでのことをしてこそ、彼らの内懐に飛び込むことができるのだと、そんなことを思っておりました。

    ここでは出版された年月上、金正日体制のことが主な話になっておりますが、ここで鈴木氏が後継者の問題に触れ、現在の視点からするとその分析が正鵠を期していたことにはつくづく驚きを隠せませんでした。佐藤氏もまた、独自のインテリジェンスからの観点で北朝鮮のことを見つめ、「北朝鮮は『死者』によって動かされている国家だ」という持論を展開したりと、最後まで飽きさせないつくりになっておりました。今後も北朝鮮に関しては注意深く見守っていきたいと思いますが、鈴木氏がここで勧めてある本や、ウェブサイトなどもチェックしつつ、「情報の自家中毒」にならない程度に加減を見据えてやっていければなと思っております。

  • 褒めあい。

著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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