関係人口の社会学―人口減少時代の地域再生

著者 :
  • 大阪大学出版会
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感想 : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872597295

作品紹介・あらすじ

住む人が減ったら、地域は再生できないのか?

『関係人口をつくる』の著者が、関係人口を社会学の見地から定義し、その役割を論じた本邦初の「関係人口の研究書」!
各地の事例と新たな理論の枠組みによって関係人口を位置づけ直し、人口減少時代の地域再生の方向性を示す。

「関係人口」とは、「定住人口」(移住)でもなく、「交流人口」(観光)でもない特定の地域に様々なかたちで関わる人々を指す語で、深刻な人口減少が進む地域社会の課題を解決するための新たな地域外の主体として近年脚光を浴びている。本書では、関係人口という新たな主体の存在と、関係人口が地域の再生に果たす役割を明らかにすることで、これからの人口減少時代における地域再生の在り方と、再生に向けた具体的な方法論を示す。新型コロナウイルスの影響を踏まえて今後の地域と関係人口を検討する補論も付しており、地域行政や地域づくりに関わる人必携の書となっている。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、著者が学位論文を基礎にして書籍として整理したという一冊であるという。そういう“生い立ち”を踏まえて「一般読者に読み悪い場合?」と断ってもいるが、別段に「読み悪い」というようには思わなかった。逆に「読み易い」と言って差し支えないと思う。
    「学位論文を基礎に」ということであるから、著者の個人的な興味を含めて“問題意識”が起こる理由というような事、または着目してみたい事が提示され、事案が整理されて行って、それに基づいて観察や分析を試みた幾つかの事例、事例の観察を通じて類型を設定する等の「課題や着目点の一般化」を試みるというような、「解り易い流れ」が確りと存在している。だから「読み易い」というような仕上がりだと思った。「なるほど…そういうことか…」とドンドンと頁を繰ることが出来る。または頁を繰る手が停め悪くなる訳である。
    別段に「学位論文を基礎に」という断りなど無い状態で、本書で示されているような事案に強い関心を寄せる著者による一般向けの一冊として登場したとして、別段に違和感は無い。更に、取り上げられている事案は「広い層の人達の興味関心そのもの、または興味関心を抱くような事柄の一部」で在り得るような感で、非常に興味深い一冊に仕上がっていると思う。
    「俄かに耳目に触れる機会が増えたような気がする?」という用語には時々出くわす。そういう用語の多くに関して、何時の間にか定着して、自身の語彙にさえなる場合も在るかもしれない。が、「何か解ったような?解らないような?」という状態が少し続く場合も在る。
    本書の<関係人口>も「俄かに耳目に触れる機会が増えたような気がする?」という用語だと思う。他方、自身としては「何か解ったような?解らないような?」という状態が続いているような気がしている。それ故に本書を手に取ってみたとも言えるが。
    <関係人口>というのも、「人口」なので「人々の集まり」、「人の数」ではある。と言って、「数」の大小が必ずしも主眼でもないかもしれないのだが。そうした意味では<関係人口>の「人口」については、「○○な感じの人々」というような緩い感じで捉えるべきではあるのかもしれない。
    一般に、例えば「A市の人口」というようなことを言う場合、住民登録の数を示す記録や国勢調査の資料に依拠して「A市は約X万X千人の人口」というように言う場合が多いと思う。こういう意味での「人口」を<定住人口>と言っている。
    この<定住人口>に対し、例示した「A市」という場所に「訪れる人達」という存在が在る。例えば、大都市の都心部のような地区であれば、住んでいる人達の何十倍も何百倍もの数になる人達が毎日通勤している。例えば、人気の温泉地のような町であれば、住んでいる人達の何十倍も何百倍もの人達が年間に訪ねる。こういう「来訪者全般を数として捉える」という場合に、<交流人口>と言う。例えば「A市は約X万X千人の<定住人口>を擁する他方、○○や周辺の△△を訪れる人が見受けられ、年間でXX万人程度の<交流人口>が在る」という程度の言い方になるであろうか?
    そして<関係人口>である。これは<定住人口>、<交流人口>の「何れでもあって、何れでもない」という概念であるというように、本書を読んでみて思った。
    <関係人口>という用語そのものは、本書によれば2016年に浮上した用語であるという。その「マダマダ新しい?」という<関係人口>、「<定住人口>、<交流人口>の何れでもあって、何れでもない」という印象の存在が、「<定住人口>が簡単に増えるのでもない。寧ろ減る方向…」という状況下、「地域社会を盛り立てる」とでも言うべきか、「現代の諸状況を踏まえたコミュニティーの創生」とでも言うようなことの“鍵”となるというのが、本書で展開される論だ。
    本書の著者は島根県の御出身であるそうだ。島根県は、学校を卒業する等した若い世代の人達がドンドン都市部に出る、他地域の大都市に出るということが累積されていて、所謂「過疎」という状態、用語、概念、問題意識が「発祥?」というような一面も在るのだという。そういう中で「地域社会を盛り立てる」、「現代の諸状況を踏まえたコミュニティーの創生」というようなことに、著者は個人的な興味を含む“問題意識”を抱き、「<関係人口>を説く(または解く)」という研究に取り組まれたという事が本書の内容からは伺える。
    著者の御出身でもあって、過去の経過で一部の様子を御自身で御覧になっている場合もあるであろう島根県の2つの地域の事例、そして島根県の2地域と少しニュアンスが違う香川県の1つの地域の事例が、観察や分析を試みた対象として紹介されている。この部分自体が非常に興味深いが、それを例としながら、一定程度一般化することを試みているのが本書の重要な箇所ともなっていると思う。
    結局のところ、「<定住人口>が簡単に増えるのでもない。寧ろ減る方向…」という状況下、本書で<関係人口>を論じる事例とした各地域に在っても、<定住人口>は別段に増えた訳でも何でもない。「<定住人口>が簡単に増えるのでもない。寧ろ減る方向…」という状況下、数で明示される「人口」という「量」でもなく、抽象的な表現かもしれないが「地域の人達がより心豊かに、地域の主役を自認して暮らす地域へ」という「質」が「追い求められるべき何か…」というのが本書の論旨でもあると思う。
    末尾の辺りには、最近の「オンラインで地方の商品を購入する」というような人達もまた「新たな<関係人口>?」という「今後」へ向けての問題提起、「或いは<関係人口>の“量”を追い始めていないか?」というような問題提起も在って、少し面白かった。
    敢えて極個人的な感想を加えておけば…本書を読みながら「自身の人生の来し方?」というようなことを思わないでもなかった。住んでいる街では<定住人口>で、何処かを訪ねれば<交流人口>であろう。他方で、当該地域との“係り具合”は如何であれ、人生の中で通り過ぎた何箇所かに関しては<関係人口>ということにもなるであろうか?または、<定住人口>の1人のつもりで居る場所との関わりの中、「実は<交流人口>?」とか「本当は<関係人口>?」という感である場合も在るであろうか?自身が何と呼ばれる層であるか?それは如何でも構わないが、「人生」とは「質」が「追い求められるべき何か…」であることだけは間違いないのではないか?
    「学位論文を基礎にして書籍として整理」という“生い立ち”の本書だが、「素人」は知らない、解らないというような何事かを細々と論じているのでもない。「素人」という以上でも以下でもない「とある街で各々の人生を生きている人達」の、「或る街での暮らしの在り方が如何なる?如何する?」という論が本書なのだ。広く御薦めしたい。否、御薦め「しなければならない」とも思った。

  • 第1部が理論編で概念規定を行う。関係人口とは「特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者」と定義する。
    第二部で島根県海士町、島根県江津市、香川県満濃町の3つの事例を取り上げた後、そこでの事例に基づいて第三部で地域再生との関係について論ずるという構成。
    事例を見ると、関係人口を、遠くにいて関わりを持ち続ける人と言うよりは、よそ者として現地に入って一定の活動した後、その地を去る人をイメージしている。
    私自身の関心は、現地からは離れた場所から現代的なテクノロジーを通じて地域と関係を持ち続ける人と言うイメージであったので、そこは少しスコープの違いがあった。

  • 地域再生の主体として、最近取りざたされている「関係人口」。「定住人口」でもなく、「交流人口」でもない。本書では「特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者」と定義、その群像と地域再生に果たした役割を3つの事例から紹介する。
    一つは島根県海士町における島前(どうぜん)高校を復活させた高校魅力化プロジェクト。中心人物は東京都からIターンしてきた岩本悠氏。彼と地元の役場職員や教員がコラボして、都会ではできない経験や進路を実現しやすい環境という打ち出しで、島留学を増やし、廃校寸前の高校を蘇らせた。
    二つ目は島根県江津市で起業人材を呼び込むビジネスプランコンテストをきっかけにシャッター通り商店街が蘇った事例。ここでは、地域住民がコンテストを立ち上げ、それに応募した田中理恵氏が移住、NPO法人の設立に関わった。その動きが駅前の空き店舗活性化につながった。
    三つ目の事例は香川県まんのう町の最奥に位置する旧琴南町川奥地区における限界集落対策。ここでは、徳島大学の准教授・田口太郎氏発案の転出子の懇談会が発端となり、彼らのネットワークを通じて災害時の安否確認がシステム化されるなど、高齢者が安心して暮らせる環境づくりが整いつつある。
    それぞれの事例を集約すると①関係人口が地域課題の解決に動き出す②関係人口と地域住民の間に信頼関係ができる③地域住民が地域課題の解決に動き出すというステップを踏んでいることがわかる。
    また、①地域において解決すべき課題が顕在化する②地域課題と自身の関心が一致する地域外の主体つまり関係人口がその解決に関わる③関係人口の影響を受け地域住民が新たに地域再生主体として形成されていく④顕在化した地域課題が創発的に解決されるという地域再生のプロセスが見えてくる。
    さらに、本書では関係人口がもたらす効果として、①地域の再発見効果②誇りの涵養効果③知識移転効果④地域の変容促進⑤しがらみのない立場からの問題解決を挙げ、これらを3つの事例の中で分析している。
    学術書ではあるが、事例はわかりやすく、関係人口も地域住民もお互い地域課題に直面して悩みもがき、ぶつかり合いながら学び変容していく人間ドラマとして読める要素もあった。
    読み終えて、地元関係者がいかに地域課題に気づくか、適任となる関係人口とのマッチングができるか、参画して学び変容できる地域住民がいるか、このあたりが地域再生のキーポイントであるような気がしている。

  • 東2法経図・6F開架:361.7A/Ta84k//K

  • 関係人口界隈ではお名前をよく拝見する山陰のジャーナリスト田中輝美さんが大阪大大学院での研究を著書にされている。
    これまでの関係人口の流れや、それぞれの方がどういった分類やフレームワークを形成されたのかが分かり面白く読ませていただいた。
    特に面白かったのは、具体的な事例として紹介されている3つのうちの1つ、香川県まんのう町の話。いわゆる地方創生成功モデルのきらきらした話ではなく、集落の終わりも見すえながら、しかし残った人たちをどう支えるか、という観点で転出した子供たちのネットワークを活用して体制を作っていくという話は多くの地域で参考になる事例だと感じた。検索してもあまり出てこないのは、やはりキラキラ事例ではないからかと思うが、日本全体が人口減少している中ではまさにこういった「限界まで元気な地域・集落づくり」が求められてきているのだと思う。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1376207

  • とても面白かった。
    地域で活動したり地域課題の解決を考える上で漠然と問題だと感じていたことが理路整然と示されている。

    本書では、人口減少が前提となる地域の再生における最大の問題は地域住民の主体性の欠如であり、関係人口が地域課題の解決に向けて動き出す過程で地域住民が主体性を取り戻すことが不可欠だと述べている。
    関係人口を救世主(スーパースター)として地域を救ってくれるのを待つ受け身の姿勢ではなく、関係人口と一緒に自分たちの手で地域課題を解決していく姿勢こそが、地域に増やさなくてはいけないもの(エネルギー?)なのだ。

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著者プロフィール

島根県浜田市生まれ。大阪大学文学部卒。1999年、山陰中央新報社に入社し、琉球新報社との合同企画「環(めぐ)りの海−竹島と尖閣」で2013年新聞協会賞を受賞。2014年秋、同社を退職し、フリーのローカルジャーナリストとして、変わらず島根に暮らしながら、地域のニュースを記録している。
主な著書に『関係人口をつくる―定住でも交流でもないローカルイノベーション』(2017年、木楽舎)、『未来を変えた島の学校―隠岐島前発ふるさと再興への挑戦』(共著、2015年、岩波書店)など。2018年度総務省ふるさとづくり大賞奨励賞受賞。2020年、大阪大学大学院人間科学研究科後期課程修了。博士(人間科学)。2021年4月、島根県立大学地域政策学部准教授に着任。また、過疎の発祥地から「過疎は終わった!」と問い、百年続けることを掲げる年刊誌『みんなでつくる中国山地』プロジェクトも仲間と始めた。

「2021年 『関係人口の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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