乾久美子 - そっと建築をおいてみると (現代建築家コンセプト・シリーズ 3)

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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872751512

感想・レビュー・書評

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  • 10年以上前の著書であるが再読。
    今ではかなり偉くなってしまったがこの頃の乾さんは棘がありながらも主張の強い建築がおおかったように思う。
    小説的で感覚的なようで、しっかりとしたロジックを大事にするが、そこからデザインに昇華させるときの手法は女性特有の繊細さを感じることができる
    芸術的でありながらも、やはりロジックに沿っているのが建築家らしいデザインの仕方だと感じた

  • なんというかライトノベルならぬライト建築小説(小説ではないけれど)というような感じ。だけれども,乾の考え方はなんとなくではあるけれども伝わってくるし,なによりやさしく包み込んむような建築の考え方,スタイルというものが頭にすっと入ってくる。すぐに読み終えることる。ふわふわっとしているけれども一貫性をもった建築論そんな感想。

  • ちょっと前に既に読み終わっているのですが。

    とても素敵な本でした。
    ご本人も素敵な方です。

    建築を進める時、設計者の頭の中で目まぐるしく起こっているあの思考の嵐は凄まじいものです。
    でも実際に指先で表現を始める頃にはその思考のほんの数%程度しか表現されません。
    そこまで追い詰めて煮詰めて更に追い詰めてようやっと滲み出てきたものだから当り前と言えばそうなのでしょうが、私のようなヒヨッコはその過程が見たい。

    その欲求を難しい言葉達ではなくとても自然に伝えてくれる本でした。

    きっと建築に携わらない方が読んでも、その思考展開の仕方やプロジェクトに対するアプローチ方法など楽しめるものだと思います。

    是非。

  • 文体、構成などから和やかというか優しい雰囲気、人柄が伝わってくる。
    ダイアグラムによって解いた建築が多いがそこに硬さでなくて柔らかさを感じるのは、先生の個性なんだろうか。
    アパートメントIの講義で目にしたプレゼンテーションに用いられていたイラストなどもそうだけれど、女性として共感する部分がたくさんある。

  • 乾氏の文章には、たびたび小説やマンガなどサブカルチャーからのとあるシーンを建築的な発想のエピソードとて挿入される。
    それは、建築の知覚的で繊細な距離感のようなものを、すっと体験できるような、建築本には珍しい軽やかでカジュアルに綴られる。

  • 「私にとって建築とは、それをおくことで世界を更新するようなものなのではなく、そのなかに世界の新しい表情を見つけるようなものだ。私は、建築をおくことを通して私たちの周りにひっそりと潜んでいる秩序みたいなものをできるだけたくさん見つけたいと思っている。」(P.6)

    という冒頭の文章からわかるように、乾久美子さんにとって建築とは「フィルター」であり、そのフィルターを通して世界を見ることで新しい秩序を見つけることだそうです。文章は物語性があってわかりやすく、親しみの持てる建築家だということがすごく伝わってくる。
    でも正直に言うと、それは建築家として当たり前のことなんじゃないかとも思う。それをもっと自分の身近なところについて考えてみたってだけ。環境というのはすぐ変わるものだし、施主が建築家に頼んだその時はそうだったものが、次の年にはガラッと変わってしまうことだってある。秩序ってのはそんなものでしかないの?

    勉強をしていると、今までは知らなかった世界の秩序を見つけて感動することがあるけど、そういうことが言いたいのだと思う。
    僕も、色んな視点で物事を見たいと思うし、それによって世界が違う見え方をするならそれほどわくわくすることはないと思う。だからこそ色々と本を読んだり、たくさん旅をしたいと思うし、ひたすら歩いたりしてるんだけど、そんなところに建築家が現れてこんな秩序もありますよって言われても、自分で見つけるからこそ意味があるんじゃないのかと思う。だから、そういう考え方に共感は持つけれど、それは他人に押し付けるものではないと思う。
    それに、建築家として、建築の形に興味はないっていうのはどうなんだろう。


    P.138
    世界は調和など望むべくもないというようにコントロールを欠いていて、いってみれば大自然のようなものとして横たわっている。そうした世界を総体としてきちんとイメージすることは、いま、とても難しい。だから、事前に世界の姿を思い浮かべて、その姿を前提として、段階的に設計のスタディを進めるといった方法は生産的ではない。その代わりにスタディ案という仮説を世界に投げ込むことで、逆に世界を発見するような方法を試すくらいしかないのではないだろうか。当てずっぽうというわけではないけれど、仮設的な案を仮にそっとおいてみて、その案を通して、周囲に展開する謎めいた世界に「何を発見するのかをじっくりと観察してみる」というように。

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著者プロフィール

乾 久美子:乾久美子建築設計事務所主宰、横浜国立大学大学院教授

「2017年 『Creative Neighborhoods』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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