世界文化遺産富岡製糸場と明治のニッポン

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  • WAVE出版
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872906943

感想・レビュー・書評

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  • 登録番号:11328 分類番号:632.133ク

  • 明治の日本に興味がわきます。

  • 写真が豊富、記述もさっぱりしてわかりやすい。
    世界遺産に指定された富岡製糸場のガイドブック。序盤は統幕があって明治維新があって殖産興業がどうたら、という教科書的な概説がありますが、製糸場や当時の生活については明快に書かれてある。

    『女工哀史』から工女=過酷な出稼ぎに出された貧しい娘というイメージがあったのだけど、官営工場であったためか、手取りもよく有給休暇もあり、ゆったり働いていたらしい。規則は厳しいが子女の躾にはよかった。

    明治の産業界のリーダーになったのは、意外にも朝敵だった旧幕臣たち。当時の大学は旧帝大で全国に五つしかなく、私大はそもそも専門学校。バイリンガルでの授業が必死で、今とは比べ物にならないほど学生のレベルが高かった。

    国民一丸となって国を強くしていこうという気概が感じられる。

  • 「ズームアップ。ズームバック。富岡製糸場から明治を見てみよう! 」

    近代国家の仲間入りを目指した明治日本が、その殖産興業の旗印として建設した製糸の官営模範工場・富岡製糸場。今年めでたく世界遺産の登録を果たしたこの製糸場を切り口として、明治という時代の日本の素顔をあきらかにする。

     日本の近代国家の幕開けとなったのはペリーの黒船来航でしたが、その上陸地三浦半島久里浜には「ペリー上陸記念碑」が建てられています。揮毫は伊藤博文でよくよく見ると碑文には「記」念碑ではなく「紀」念碑と刻まれています。

     糸へんの「紀」が使われた理由について、製糸業が日本の近代国家への原動力となったという意味でこれは糸へこめたオマージュであるとのまことしやかな話を聞いたことがあります。明治日本の近代化はその多くを外国からのシステムや技術の輸入に頼っていました。当時良質な生糸は日本の花形輸出品であり、極端な話、これらによって外貨を稼ぐことなくしては、鉄道もレンガもガス灯も実現しなかったかもしれません。

     国の命運を賭けて、フランスから技師を招き莫大な官費と当時の先端技術を以って明治政府が富岡に建設したこの製糸場には、そうした当時の日本の意気込みがあったのでした。ましてやこの製糸場が昭和62年まで現役操業していたという事実には、その明治日本の意気込みが確かに存在していたのだということを身近に感じて、改めて驚嘆せずにはいられません。

     本書は著者が前書きで述べているように、通りいっぺんの富岡製糸場の観光ガイドではなく、まずは幕末から富岡製糸場建設に至るまでを俯瞰し、その歴史的背景を知ることが出来るようになっており、次にズームアップして「富岡製糸場と絹産業遺産群」とは実際どのようなものかを写真や地図を用いて解説しています。さらにそこからズームバック、もう一度視点を引いて果たしてそういう富岡製糸場を生んだ明治とはどのような時代であったかを経済や世相、風俗に関する雑学を交えながら中学生でも読みこなせるつくりになっています。

     ちなみに富岡製糸場のあまりのハイテクさに当時の人々の感覚からすると妖術を使っているとしか理解できず「工場の機械は、集められた工女の生き血で動いている」という噂が広がり当初は工女が集まらなかったそうな。電信を「悪魔の所業」だとして電線を切っちゃったり、マッチの火をお化けのヒトダマと勘違いして気絶したり、いやはや文明開化は前途多難。明治の人たちのトンデモぶりに萌えます。  

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著者プロフィール

1970 年神奈川県生まれ。フリーライター。歴史探究家。近著は『教科書には載っていない! 戦争の発明』(彩図社)、『幕末明治動乱「文」の時代の女たち』(双葉社)、『テレビではいまだに言えない昭和・明治の「真実」』(遊タイム出版)、『世界文化遺産富岡製糸場と明治のニッポン』(WAVE出版)。週刊誌専属記者などを経て2005 年から著述家に。歴史全般のほか社会時事、スポーツ、芸能、ペットなど、ジャンルにより複数のペンネームを使い分けて活動し、自著は現在30 冊近く。また、企業の公式サイトやフリーペーパーなど多岐にわたるメディアで執筆している。

「2016年 『110のキーワードを読み解く2ページでわかる日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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