- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784872906943
感想・レビュー・書評
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世界文化遺産に認定された、群馬県富岡製糸場のビジュアルガイドブック。
幕末から開国に始まり、製糸工場建設に至るまでの社会情勢や経済状況などを、豊富な写真や図版と、雑学も交えて簡潔に解りやすく解説している。
技術立国ニッポンの先駆けとなる近代の官営工場の実態を通して、明治とは如何なる時代であったか、歴史的背景を把握できる。
工女の給金や勤務体制、医療設備など恵まれた待遇についての紹介の他、当時の産業界を率いたのが、かつては朝敵とされた旧幕臣たちであったことも述べられ、当時の時代背景も含めて全体的に学べる入門書として適している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
●タイトルに「明治のニッポン」とあるように、富岡製糸場の時代の日本がどういう暮らしぶりだったのかも交えた解説をしている。
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登録番号:11328 分類番号:632.133ク
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明治の日本に興味がわきます。
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「ズームアップ。ズームバック。富岡製糸場から明治を見てみよう! 」
近代国家の仲間入りを目指した明治日本が、その殖産興業の旗印として建設した製糸の官営模範工場・富岡製糸場。今年めでたく世界遺産の登録を果たしたこの製糸場を切り口として、明治という時代の日本の素顔をあきらかにする。
日本の近代国家の幕開けとなったのはペリーの黒船来航でしたが、その上陸地三浦半島久里浜には「ペリー上陸記念碑」が建てられています。揮毫は伊藤博文でよくよく見ると碑文には「記」念碑ではなく「紀」念碑と刻まれています。
糸へんの「紀」が使われた理由について、製糸業が日本の近代国家への原動力となったという意味でこれは糸へこめたオマージュであるとのまことしやかな話を聞いたことがあります。明治日本の近代化はその多くを外国からのシステムや技術の輸入に頼っていました。当時良質な生糸は日本の花形輸出品であり、極端な話、これらによって外貨を稼ぐことなくしては、鉄道もレンガもガス灯も実現しなかったかもしれません。
国の命運を賭けて、フランスから技師を招き莫大な官費と当時の先端技術を以って明治政府が富岡に建設したこの製糸場には、そうした当時の日本の意気込みがあったのでした。ましてやこの製糸場が昭和62年まで現役操業していたという事実には、その明治日本の意気込みが確かに存在していたのだということを身近に感じて、改めて驚嘆せずにはいられません。
本書は著者が前書きで述べているように、通りいっぺんの富岡製糸場の観光ガイドではなく、まずは幕末から富岡製糸場建設に至るまでを俯瞰し、その歴史的背景を知ることが出来るようになっており、次にズームアップして「富岡製糸場と絹産業遺産群」とは実際どのようなものかを写真や地図を用いて解説しています。さらにそこからズームバック、もう一度視点を引いて果たしてそういう富岡製糸場を生んだ明治とはどのような時代であったかを経済や世相、風俗に関する雑学を交えながら中学生でも読みこなせるつくりになっています。
ちなみに富岡製糸場のあまりのハイテクさに当時の人々の感覚からすると妖術を使っているとしか理解できず「工場の機械は、集められた工女の生き血で動いている」という噂が広がり当初は工女が集まらなかったそうな。電信を「悪魔の所業」だとして電線を切っちゃったり、マッチの火をお化けのヒトダマと勘違いして気絶したり、いやはや文明開化は前途多難。明治の人たちのトンデモぶりに萌えます。