ことばと心理―言語の認知メカニズムを探る

著者 :
  • くろしお出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874243336

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  • 【目次】
    目次 [ii-v]
    はしがき [i]

    第1章 音声 
    1.1. 母音と子音の体系と獲得
    1.2. 音節とモーラの認識と生成
      1.2.1. モーラの実在性
      1.2.2. 音節の認識と生成
    1.3. アクセントの認識と生成
      1.3.1. アクセントとは
      1.3.2. 日本語話者による英語のストレスアクセントの認識
    1.4. リズムの認識と生成
      1.4.1. ことばのリズムの類型
      1.4.2. 英語学習者によるリズムの生成と認知
      1.4.3. ことばのリズムと分割
    1.5. 擬音語・擬態語
    1.6. 親はどのように子どもの名前をつけるのか

    第2章 語と文字 
    2.1. 心内辞書の構造 
      2.1.1. 意味による結びつき
      2.1.2. 形による結びつき
      2.1.3. 子供の言い間違いからの示唆
      2.1.4. プライミング法による心内辞書構造の研究
    2.2. 文字の認識 
      2.2.1. ストループ効果
      2.2.2. 語の読み
      2.2.3. 語の記憶
      2.2.4. 「空書」行動
      2.2.5. 文字中心の言語と音声中心の言語

    第3章 文と文章の理解 
    3.1. 文の記憶 
    3.2. 文章の理解 
    3.3. 物語の構造と理解 
    3.4. 聞くこととノート・テイキング 
    3.5. 比喩の理解 
      3.5.1. Metaphors We Live By
      3.5.2. 比喩の理解に関する実験

    第4章 母語の獲得 
    4.1. リズムと音声の獲得 
      4.1.1. 胎児の音声経験
      4.1.2. 5ヵ月児の言語の弁別
      4.1.3. 9ヵ月児のストレスパターンへの好み
      4.1.4. 8ヵ月児の語の取り出し
      4.1.5. 乳児の音声知覚に関する実験手法
    4.2. からだの機能
    4.3. 意味の把握
    4.4. 会話の機能

    第5章 外国語の習得・学習 
    5.1. 第2言語の記憶と概念
    5.2. 繰り返しの効果と語彙の学習
    5.3. 音声英語の学習
      5.3.1. リスニングにおけるポーズの役割
      5.3.2. スピーキングにおけるプロソディーの特徴
    5.4. 英語の読みと音韻
      5.4.1. 読解における構音抑制の影響
      5.4.2. 読みにおけるリズム
    5.5. ことばの時間制御機構とリスニング
      5.5.1. 2つの音声処理機構がリスニングに果たす役割
      5.5.2. 聴解単位の特定化
    5.6. 話すことと聞くことの関係
    5.7. 外国語効果

    第6章 言語と脳・思考・文化 
    6.1. 脳と失語症
      6.1.1. 脳の半球左右差と機能
      6.1.2. 失語症と言語聴覚士
    6.2. 言語獲得の臨界期
      6.2.1. 母語獲得の場合
      6.2.2. 第2言語習得の場合
    6.3. 言語と思考
      6.3.1. サピア・ウォーフの仮説
      6.3.2. 色の区別と言語
      6.3.3. 物体と物質の区分と言語形式
    6.4. 言語と文化
      6.4.1. パラグラフ構造にみる文化思考パターン
      6.4.2. 説明における思考スタイルと文化差
      6.4.3. 自己観と認知的行為
      6.4.4. 文化と言語発達



    【抜き書き】

       はしがき

     人は、ことばを、母語であれば特別な努力なしに、話したり聞いたりすることができる。音や文字の特徴を知り、多くの語を蓄え、文法をマスターし、他人の発する文の意味や意図を知ることができる。さらに外国語を習得することも可能である。このような言語能力は、いかに獲得され、使われているのであろうか。その心理的メカニズムはどのようなものであろうか。
     本書は、ことばがどのように獲得、生成、理解、使用されるのか、その認知的・心理的メカニズムを解明しようとする試みを紹介し、課題について考察する。ことばが実際どのように処理されるのかという問題について、「音声」「語と文字」「文と文章の理解」「母語の獲得」「外国語の習得・学習」「言語と脳・思考・文化」という角度から考える。
     執筆にあたっては、客観的データに基づいた実証的な研究を具体的に紹介することに努めた。ことばの処理に関する心理学的実験というものがどのようなものであるかを知ってもらうことも目的としている。言語の事象について心理学的に検討するには観察や実験が欠かせない。そこから得られた結果をどう考察するか、どのような課題が残っているか、どのように発展させられるかを、読者と一緒に考えたい。京都女子大学英文学科で担当した「心理言語学」、および、関西学院大学文学部で担当した「言語心理学」の講義内容が本書の基となっている。授業内外での学生からの質問やコメントは、内容を発展させるのに大いに役に立った。また、学生との議論では回答に窮することも少なくなかったが、問題となることについてさらに考察するきっかけとなった。学生の中には、授業で紹介した論文の原著に自ら当たり、小さな実験を試み、課題に対する自分なりの考察を行う者もいて、大変うれしく思っている。
     本書の出版に際し、関西学院大学の門田修平先生には、様々なご助言を頂いた。記して感謝申し上げたい。くるしお出版の池上達昭氏には、何度も原稿に目を通していただき、多くの適切なコメントを頂いた。御礼申し上げる。






    □47頁

    Bransford & Johnson(1972)は、文脈情報が単に利用されているだけでなく、ある種の事前知識(prior knowledge)が文章理解には不可欠であることを示す実験を行った。まずは次の文章を、理解しようと努めて、読んでいただきたい。

    The procedure is actually quite simple. First you arrange things into different groups depending on their makeup. Of course, one pile maybe sufficient depending on how much there is to do. If you have to go somewhere else due to lack of facilities that is the next step, otherwise you are pretty well set. It is important not to overdo any particular endeavor. That is, it is better to do too few things at once than too many in the short run this may not seem important, but complications from doing too many can easily arise. A mistake can be expensive as well. The manipulation of the appropriate mechanisms should be self-explanatory, and we need not dwell on it here. At first the whole procedure will seem complicated. Soon, however it will become another facet of life. It is difficult to foresee any end to the necessity for this task in the immediate future, but then one never can tell.

    内容は理解できたであろうか。彼らの研究では、この文章を、3つの条件で3つのグループに提示した。

    ① No Topic group:文章だけを聞いた。
    ② Topic After group:文章を聞いた後、その文章のトピックを与えられた。
    ③ Topic Before group:文章を聞く前に、トピックを与えられた。

    この後、文章の理解度(comprehension)と記憶(recall)が測定された。理解度は7ポイントのスケールを使って答えさせた。1が理解するのが大変難しかったことを示し、4は中間で、7がとても簡単であったことを示すとした。また、再生されたアイデア数を記憶量と見なした。結果は表3.2.のようであった。

    [表は省略]

     ③[文章を聞く前にトピックを与えられたグループ]は、①[トピックを与えられなかったグループ]と②[文章を聞いた後でトピックを与えられたグループ]よりも、理解度においても記憶量においても優れている。トピックは後から与えられても全く役に立たなかったことも、注目すべき点であろう。

     ちなみに、上記文章のトピックは“washing clothes”であった。トピックが分からないと、理解が困難であることを体験できたのではないだろうか。また、トピックを与えられた後、改めて文章を読むと、よく理解できたのではないだろうか。上記の研究のTopic After groupは、トピックを与えられた後は、再度文章を読む機会は与えられず、理解と記憶に関するテストを受けたわけで、その成績が悪かったことは、トピックは情報を処理する前か、処理する最中に与えられないと利用できないことを示している。
     文章を理解する際の、情報の処理の方向には、文章中の1語1語から情報を得て、文や文章という大きい単位の理解へ進んでいくbottom-up processing と、文脈・既存知識などを使って推論しながら理解を進めるtop-down processingが考えられる。トピックは文脈の一種とみなされるため、トピックを先に与えるということは、top-down processingを容易にするのであろう。top-down processingに利用される既存知識のうち、経験などに基づき、記憶に構造化された慣習的な知識はスキーマ(schema)と呼ばれている。例えば、大学生なら、大学スキーマというものを持っているであろう。その中には、キャンパスの風景、講義の様子、ゼミの進め方、単位のとり方、などが既存知識として含まれている。そのため、他大学の学生の話を聞いても容易に理解できる(「ゼミって何?」などと尋ねなくても済む)。

  • ことばに対する認知の仕方、ことばに対するからだの働き、こどもはどのようにことばを獲得するのかなど詳しく書かれていてとても理解に役立った。

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