カナダはなぜイラク戦争に参戦しなかったのか

著者 :
  • 高文研
3.82
  • (3)
  • (3)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 29
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874983447

作品紹介・あらすじ

イラク戦争に派兵せず、米国主導のミサイル防衛にも参加しない-多国間協調主義を掲げるカナダの外交戦略。建国以来、自立路線を追求してきたカナダ外交の歴史から学ぶ、超大国アメリカとの「つきあい方」!2004/05カナダ首相出版賞審査員特別賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • カナダについてはあまりよく知らず、海外旅行好きなのに、いとこが永住してるのに、ほとんど興味がなかった。ただ、最近は、トルドー首相っていい首相だなと注目していたが、本書で「トルドー首相」が出て来て、「あれっ?今の首相トルドーって私覚え間違い?」と思うくらいの注目だった。今、息子だということがわかった。そして、この本を読んで、急に素晴らしい首相が出現したわけではなく、カナダは以前から素晴らしい首相を輩出していたということを知った。
    本書は2005年の出版だし、この12年の間のカナダのことは知らないのだが、2018年の今こそ読むべきだと思う(そのように紹介されていたから、私も読んだのだが)。
    何もかもがアメリカ追随になっている日本。日本国民が大事なのか、アメリカが大事なのか、全くわからない政策、外交をとる日本。ほとほと嫌になっている。
    でも、トルドーを選んだのがカナダ国民なら、トランプを選んだのもアメリカ国民、安倍首相を選んだのも日本国民。自分たち相応のリーダーしか選べないのだ。
    アメリカからいつになったら独立できるのか。
    再び焼け野原にならないうちに、他国を焼け野原にしないうちになんとかしないと。
    残された時間はどれくらいなのだろう。

  • アメリカ・トランプ大統領が難民の一時受け入れを制限する
    大統領令にサインした時、カナダ・トルドー首相は「信仰に
    関係なく、迫害やテロ、戦争から逃れた人をカナダは歓迎する。
    多様性はわが国の強みだ」とTwitterで呟いた。

    アメリカと約9000kmの国境を接するカナダは、アメリカの弟分
    と思われることが多い。だが、アメリカの言うことに何でも追随
    するのではない。

    現在のトルドー首相もトランプ大統領のアメリカには批判的だが、
    カナダはそれ以前にも「アメリカの大義」に従わなかったことが
    ある。そのいい例が本書で取り上げているイラク戦争だ。

    9.11アメリカ同時多発テロ後、カナダも子ブッシュのアメリカが
    掲げた「テロとの闘い」には賛同した。アフガニスタン戦争には
    軍も派遣した。しかし、それに続くイラク戦争には参戦をしてい
    ない。

    アメリカとイギリスが主張した、イラクの大量破壊兵器保有に対し
    てカナダは懐疑的だった。国連査察の結果を待て。それがカナダ
    の反応だった。

    イラクがアルカイダを支援しているとの証拠もなく、大量破壊兵器
    保有の事実も証明されなかった。サダム・フセインを力で排除する
    ことが真に正しいことなのか。国連主導で国連軍で動くのならいい
    が、有志連合でイラクを攻撃するには理由はない。

    正論だと思う。勿論、カナダ国内でもイラク戦争賛成派はいた。アメ
    リカに反旗を翻したのなら、後々、アメリカに報復される…と。

    分からぬでもない。軍事でも経済でも、アメリカが最大のパートナー
    であるカナダにとってアメリカからの報復は大打撃だろう。しかし、
    それでもカナダは不参戦を選んだ。

    「アメリカ様がおっしゃるなら、その通り」なんてことはしない。
    それはひとえにカナダが国連憲章を重視し、多国間協調の外交を
    展開しているからだ。

    見事だと思った。自国の利益を考えて多国間での調和を図るか、
    多国間の調和を考えながら自国の利益を守るか。似ているようで
    違うのだよね。カナダは後者なのだろう。

    アメリカが批准していない条約を批准し、人権と自由を尊重する。
    勿論、カナダの歴史の中でも差別はあった。第二次大戦中の日系人
    の強制収容や、イヌイットに対する差別だ。

    日系人に対しては謝罪と補償をし、先住民の権利を保護する法律も
    ある。現在のトルドー首相が言うように、多様な文化を認め、誰も
    が人間の尊厳を認められる。

    理想主義と言えばそうなのかもしれない。でも、そんな国があって
    もいいんじゃないかと思う。だって、カナダが自分の言うことを聞
    かなくてもアメリカは報復しようとはしなかったのだから。

    本書はカナダとアメリカの独立の過程の違いから、カナダ歴代首相
    とアメリカ大統領との丁々発止のエピソードもあり、非常に近い
    両国であるのに相違点が覆うことを分かりやすく解説している。

    2005年の発行なので、軍事費や貿易などのデータは少々古いが、
    カナダが世界の中で占めている地位が理解しやすい。

    日本は…見習ってほしいけど、ダメだろうな。アメリカ様様だも
    のね。それに、カナダは「アメリカの弟分」だけど、日本は属国
    だから。

    余談だが、カナダ人は優しいんだよな。まったく英語が出来ないのに、
    プライベートでの初めての海外旅行はカナダだった。何を聞かれて
    いるかは分かるのに、英語でどう答えていいか分からない。そんな
    時もカナダ人は絵を描いて教えてくれたり、どうしたら私が理解
    できるかを一生懸命考えてくれた。

    バンクーバーの空港のバスのカウンターのおばちゃんは、私が乗る
    べきバスの乗り場まで腕を引っ張って連れて行ってくれたっけ。
    感謝、感謝である。

  • 2003年3月20日、米英を中心とする「有志連合」がイラク侵攻を開始、小泉首相も直ちに「米国の武力行使開始を理解し、支持いたします」と表明した。しかし、今やこのイラク戦争に正当性がなかったことは誰の目にも明らかだ。それでは、開戦当時に知り得た情報の範囲内では、イラク戦争支持はやむを得ない選択だったのだろうか。そんなことはない。戦争反対の声は世界中に渦巻いていたし、イラク戦争不支持を表明した国々もあった。その一つがカナダである。カナダは、「テロとの戦い」を支持しアフガニスタンの「不朽の自由作戦」にも参加しながら、国連を重視する多国間協調主義の立場からイラク戦争には反対した。一方で日本は、カナダとは異なり対米追従外交を選択した。日本とカナダでは事情が異なるという意見もあるだろう。しかしそれなら、イラク国民に大きな犠牲者を出したその「事情」をなぜ問い直さないのか。小泉元首相はじめ、当時イラク戦争を支持した人々には特に本書のご一読を薦めたい。

  • intersting!

  • カナダがどのように隣国の巨大な影響力に抗して、自国のアイデンティティ形成を行ってきたのか。イラク戦争不参加をめぐるカナダ国内の議論についてもうちょっと読みたかった。

全5件中 1 - 5件を表示

吉田健正の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×