自衛隊という密室: いじめと暴力、腐敗の現場から

著者 :
  • 高文研
3.63
  • (2)
  • (2)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 16
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874984284

作品紹介・あらすじ

警察予備隊発足から60年、核武装を主張し、空自イラク派遣の違憲判決に「そんなの関係ねえ」とうそぶく航空幕僚長が出現、そして、突出する自殺者数・暴行事件・脱走…。いま、自衛隊の中で何が起きているのか-。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ずっと自衛隊員の自殺を追いかけて来た三宅氏の最新刊。その元凶を自衛隊の「腐敗した軍隊体質」にあるというまで突き詰めているのが本書である。

     自衛隊の自殺者は多い。2004年度が100人、05年度101人、06年度101人と3年続けて過去最悪を記録し、2006年度の10万人あたりの自殺率は38.6で、一般職国家公務員の自殺率17.1の2倍以上にあたるという。

     また、2007年度の数字を見ると、暴力事件での懲戒処分80人。わいせつ事件での懲戒処分60人。脱走による免職326人、そのうち半年以上も行方が分からず免職になった自衛隊員は7人。病気で休職している自衛隊員は500人にのぼっている。

     自衛隊という組織の中にある「暴力の闇」。男性の自衛隊員から殴打も含む虐待を受け、声を出すこともできなくなり自殺に追い込まれた女性自衛隊員。異動のはなむけとして15人を相手に格闘訓練と称したリンチを受け亡くなった自衛隊員。先輩の暴行を受け左目を失明した自衛隊員。上司からセクハラされた上に退職強要を受けた女性自衛官の裁判闘争。その上、“臭いものにフタ”をして隠蔽する。

     また、制服幹部一佐の年収は1,000万円以上、退職金は4,000万円。そして納入業者に役員待遇で再就職。防衛省との契約高トップの15社に在籍しているOBは2006年4月に475人もいて、三菱電機98人、三菱重工62人、日立製作所59人、川崎重工49人などとなっている。2008年度の1年間で、防衛省と取引のある企業に再就職した制服幹部一佐以上は80人。三菱重工と防衛省との年間契約高は2,700億円にのぼっている。その中で、氷山の一角が贈収賄事件として暴かれている。

    そして、そのさらに上に、国会議員になったヒゲの隊長の佐藤正久や田母神空幕長などの組織を私物化する体質と「愛国心の鼓舞」がある。

    これらが全て戦前の軍隊組織の体質だと著者は云う。だから、いじめの末の自殺は、結局はこの体質自体を変えない限り止むことはない、というのが素人の私でもわかる処方箋だろう。しかし、その体質は民主党の「政権交代」があっても少しも揺るがなかった。むしろ強化された。ならば、せめて普天間基地の日本からの撤退まで行くような徹底的な「政策交代」が必要だろう。
    2013年7月12日読了

  • 3冊目。一章は暴行殺人事件についてと暴行による被害者原告へのインタビュー。二章は上層部の腐敗について。なぜこんな異常が習慣として咎められないか?は、旧日本軍の体質いまだに残しているから、とトップであった田母神俊雄の発言を引いている。女性自衛官をホステス代わりにする?いやこのおっさんには引きますね。
    情報非公開を盾にずっと正されない不正の伝統には暗澹とした気持ちになります。こういう指摘を継続する報道は大事だと思う。

  • 自衛隊という密室―いじめと暴力、腐敗の現場から 単行本 – 2009/9/1

    ドイツにある軍事オンブズマン制度が自衛隊に必要である
    2018年10月16日記述

    ジャーナリスト三宅勝久氏の著作。
    2009年9月18日第1刷発行。
    本書は週刊金融日、MyNewsJapan掲載記事に大幅な加筆をしたもの。
    自衛隊という組織がいかに身内の犯罪に甘いのかということを痛感させられた。
    また小さな新聞記事になった事件もあるが、大半は初めて知る。
    もっとメディアは大きく報道するべきであろう。
    2008年9月9日の江田島にある第1術科学校での集団暴行事件。
    1人対15人のはなむけ格闘訓練・・
    北海道の陸自で起きたパワーハラスメント
    一番問題だと思われるのは暴力は無かったと一点ばりの回答をする自衛隊。
    証拠がなければ動くこともない。
    面倒でも録音を取るなど証拠を常に取る事が重要であろう。
    脱走の事を自衛隊は旧日本軍と同じように脱柵と言う。
    臭いものにフタをしようとする組織。
    先輩隊員による暴行、すぐに病院に搬送しなかったために
    失明した隊員。
    パワーハラスメントで退職した空自の隊員の台詞で
    自衛隊で生き残る人間は2種類しかいません。
    すごく悪くてずる賢い人か、ものすごくまじめな人。
    中途半端は弾かれます。

    後半には佐藤正久議員の選挙のおかしさと田母神氏の
    とんでも論文や無駄使いとも言える出張に関して。
    田母神氏は都知事選の政治資金問題でほぼ失脚したから良いものの佐藤正久氏は未だに現役国会議員だ。
    自民党というのは(特に参議院員)問題人物を国会議員にし過ぎであろう。
    ワタミの渡邉美樹氏を国会議員にしていることもでも明らか。
    自民党が権力を握っているままでは軍事オンブズマン制度を作るのは難しいのでないだろうか。

  • 自衛隊内の暴力やいじめ、腐敗などについて。いじめとかは片方の見解以外の事情があったんだろうとも思うけど、まぁ田母神やら佐藤正久なんかの腐りっぷりはありえんとしか思えんな。自衛官が軍人で軍人は偉いとでも思っているのか?

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

ジャーナリスト、ブログ「スギナミジャーナル」主宰。
1965年岡山県生まれ。フリーカメラマンとして中南米、アフリカの紛争地を取材。『山陽新聞』記者を経て現在フリージャーナリスト。「債権回収屋G 野放しの闇金融」で第12回『週刊金曜日』ルポルタージュ大賞優秀賞受賞。2003年、『週刊金曜日』連載の消費者金融武富士の批判記事をめぐり同社から損害賠償請求訴訟を起こされるが、最高裁で勝訴確定。著書に『サラ金・ヤミ金大爆発 亡国の高利貸』『悩める自衛官 自殺者急増の内幕』『自衛隊員が死んでいく 自殺事故〝多発地帯〟からの報告』(いずれも花伝社)『武富士追及 言論弾圧裁判1000日の闘い』(リム出版新社)』『自衛隊という密室 いじめと暴力、腐敗の現場から』(高文研)『自衛隊員が泣いている 壊れゆく〝兵士〟の命と心』(花伝社)『日本を滅ぼす電力腐敗』(新人物文庫)『債鬼は眠らず サラ金崩壊時代の収奪産業レポート』『司法が凶器に変わるとき 「東金女児殺害事件」の謎を追う』(いずれも同時代社)『税金万引きGメン』(若葉文庫)『日本の奨学金はこれでいいのか』(共著、あけび書房)など。

「2018年 『大東建託の内幕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三宅勝久の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×