- Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
- / ISBN・EAN: 9784875023050
感想・レビュー・書評
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図書館の除籍本
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こういう考える精神に触れられることはやっぱり楽しいし、どこか安心する。
物理学的に考えると、どうしたって、原子の不確定な動きというものは避けられない。そういう不確定なゆらぎ、統計的に様々な状態になる可能性を想定しなければほんとうではない。それが彼のスタート地点だと思う。
だが、そういう不確定なゆらぎに裏打ちされているにもかかわらず、わたしたちは考えているし、まるで一本の矢のように後から先へ進んでいるように感じている。いったいこれは何なのだろうか。不確定なゆらぎにしたがっているはずのこの自分が、不確定なゆらぎを考えてしまっているのだ。彼はそれを「波動」だと見て取った。波動を方程式として、ある意味で固定したのだ。
この点をブラックボックスとして置き去りにしてきてしまっているところに科学の限界があると説く。カントがそれを物自体と言ったあたりから罪があると思っている。
物理学だけでなく、科学全般が人間の「考える」作用の営みであってそれ以上のものではない。客観というのを考えるのも主観の作用なのである。彼はとうにそのことを知っていた。 -
世界的な科学者と言われる方々は語ることが明晰である。しかも、断定的である。しかし、おそらくそれは反論を拒まない開かれた心持ちを持たれたうえで、熟慮に熟慮を重ねた自分の考えに自信を待つことができるからなんだろうなと思った。
精神は科学では扱えない。というのがシュレディンガーさんの考えのようである。なので「主体と客体はひとつである。」という本書の結論は宗教的なものである。と著者自らがおっしゃっている。
良い流れでこの本を読めてよかった。
Mahalo