月島物語ふたたび

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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875023999

作品紹介・あらすじ

1988年、ニューヨーク帰りの批評家が、東京湾に浮かぶ月島で、長屋暮らし始めた。植木が繁茂する路地、もんじゃ焼の匂い漂う商店街、鍵もチャイムもいらない四軒長屋…。昔ながらの下町の面影を残すこの街だが、実は日本の近代化とともに作られた人工都市だった。モダニズムがノスタルジアに包まれた街-批評家はそのベールを一枚ずつはがし、月島の全体像を浮かび上がらせていく。日本近代化論、文学論、都市論を縦横に駆け巡る傑作エッセイの待望の復刊。第一回斎藤緑雨賞を受賞した単行本版、文化人類学者・川田順造氏との対談を含む文庫版補遺に加えて、書き下ろしエッセイ、建築史家・陣内秀信氏との対談、各時代の月島風景などを収録した決定版。

感想・レビュー・書評

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  • ひょんな成行きで月島の長屋に住むこととなった著者が、馴染みゆく次第に歴史を紐解き深く考察するに至る。月島は本来の下町とは違う、まだ100年そこそこの埋立による新開地である。国家による都市改造の元、地方から人が集まり歴史により変貌しゆく様は逞しく力強い。水に囲まれた土地の閉塞感と開けっ広げな住民性の混濁が面白い。路地の持つ異空間的な迷路性に人情が絡まり特有の風景を生み出す。比較文学者の肩書を持つ著者による月島所縁の文学の挿話も興味深い。東京という都市が持つ微かな可能性を信じたい。誰彼無しにお薦めしたい一冊。

    *登場する主な文学者は、きだみのる、大泉黒石、大岡昇平、島崎藤村、小山内薫、石川淳、吉本隆明などなど。

    水に囲まれた生活というのは/いつでもちょっとした砦のような感じで/夢のなかで掘割はいつもあらわれる/橋という橋は何のためにあつたか?/少年が欄干に手をかけて身をのりだして/悲しみがあれば流すためにあつた (「佃渡しで」吉本隆明)

    「木下杢太郎よ、パンの会よ、明治の大川端趣味よ、おれがこの風景にとどめを刺してやるとおもって、『佃渡し』という詩をかいた」 (「佃んべえ」『文学論Ⅱ』吉本隆明)

  • 文学や映画関連の批評・著作で有名な四方田犬彦。彼の原点ともいえる作品「月島物語」。単行本版・文庫版の対談を収録し、更に書き下ろしエッセイ、建築史家 陣内秀信氏との対談などを加えた決定版。豊洲のお隣、月島の町の情感をたっぷり味わい、また四方田を深く知る事ができる、充実の一冊。(スタッフ中村おすすめ)

  • 課題用にざっと読んだけど、
    じっくり読みたくなったところもある。

  • 92年の「月島物語」にその後を追加。
    冒頭の人生がパタっと変わった導入から月島に漂着した著者の経験とたぐり寄せた月島の過去が見事に絡んでいい味になっている。15年の時を経て、月島はさらに壊れ、変化していく。その姿を感じる。

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プロフィール

1953年大阪生まれ。東京大学人文系大学院博士課程修了。明治学院大学教授として長らく映画史を講じた後、現在は映画と文学を中心に批評活動に専念。研究対象は映画史、漫画論、記号学など多岐にわたる。漫画研究では、1994年に『漫画原論』を、2004年には『白土三平論』を発表。共著等も含めると著作は120冊を超える。斎藤緑雨賞、サントリー学芸賞、日本エッセイスト・クラブ賞、桑原武夫学芸賞などを受賞。

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