人間物語 (とぴか)

著者 :
制作 : トムズボックス 
  • 芸術新聞社
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本棚登録 : 59
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (75ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875861966

作品紹介・あらすじ

思いあがった人間が、生きものや、自然からチクチクと毎回しっぺ返しをうける物語。長新太の15コマ漫画。

感想・レビュー・書評

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  • めちゃくちゃだが誠実でもあり

  • 全33回の15コマの漫画ではある。毎回 つづくで終わるのだが最後はオワリとなっていた。あまりにも、意味があるのかあるのか、ないのかないのか、バカにしているのか、少し読むのにつかれてきた。

  • とにかくぶっ飛んだ内容。著者は執筆当時は60~70歳代だったと思うが、その年でこの内容のマンガを描けるのが凄い。絵のシンプルさと内容の乖離が面白い。

  • 長新太さんの、見開き二ページ16コママンガ。どの話も深遠な人間文明批判に、なってないようでなってるようで、やっぱりなってないくらいのデタラメさで、オチもそんなにつかない。ナンセンスを堪能できる最高の一冊です。

  • 見開き(2ページ)で1話完結の15コマ漫画。全33話。作者は長新太さん。
    1話で1冊ずつシリーズ化して絵本が作れちゃいそうなレベルのお話だが、今回は漫画という体裁だからか有り難いことに1冊の中にすべてがギュッと凝縮してまとめられている。つまり、33冊の絵本をいっぺんに読むようなお得感がこの本にある、ということが言いたいのである。

    紐のような線で描かれた人間のオジサンがとりあえずこの漫画の主人公らしい。垂れた大きな鼻が特徴的で、いつも帽子を被っている。表情はよく見えないが、なかなかユーモラスな性格のようだ。この人間の特殊能力には聖徳太子(『日出処の天子』を参照)もビックリだろう。例えば、首をハサミで切っても死なない(第2話)。骨盤が体から出てしまってもなんとか歩ける(第12話)。アイスクリームに舐められ頭がなくなっても喋れる(第25話)。旅する脱腸と会話ができる(第33話)。

    長さんからのメッセージが冒頭に据えられているので、一部引用する。

    「この漫画は、
    思いあがった人間が、
    生きものや、自然からチクチクと毎回
    しっぺ返しをうける物語です。」

    まさにそのとおりで、人間はさまざまなしっぺ返しをうけている。第1話「ゾウをダンゴにしてはイカンの巻」を例に見てみよう。この話では、人間がゾウを転がしてダンゴにしていたらいつの間にか人間もそのダンゴの中に巻き込まれてしまう。人間はそのまま寝てしまうが眠りから覚めても出るに出られず、ライオンに吼えられたり、大蛇に舐められたり、蠍の尻尾のトゲに刺されそうになったり、お化けに恨まれたり、大雪で死にそうになったりし、やがてトホホとうなだれてしまう。最終的にはダンゴにされた優しいゾウに助け出されて1日が終わるのだ。
    全体的によくわからないが、よくわからなければよくわからないなりに色々と考えさせられるし、しっぺ返しのバリエーションも豊富で、作者の発想力に圧倒される。突拍子もない設定に驚いたり、地球規模の大胆なオチにクスリと笑ったり、生きものたちとの交流にほんのり温かく切ない気持ちにさせられたり、しみじみと感じいったり…先が読めない展開に何度となく振り回されるが、次第にそれがクセになっていくので面白い。

    私の好きなお話を少し紹介する。
    ☆第3話「暗黒世界の巻」…腹黒い人間が吐き出す黒い液体がだんだん世界を黒く染めていく。そこに墨を吐くイカやタコも参加し、人間イカタコ大戦争が勃発する。墨を吐くときに出るビューッという音が爽快。そこら中でビューッビューッやっている姿には笑えるが、最後の真っ黒な世界にはなんとなく唖然としてしまう。現代人の末路を見せられたような気がして恐ろしくもなる。このままいったら本当に世界は黒く染まってしまうのではないか?という気がする。

    ☆第7話「脳テン博士の巻」…主人公の頭がボンヤリして困っていると、脳の中味を教えてくれる脳テン博士が登場する。どうやら近頃人間の脳ミソに異変が起きているらしく、主人公の脳は半分タコヤキになっているという。ある人は脳ミソの代わりにクリームあんみつがつまっており、ある人には毛虫が、またある人にはゆでタマゴが、タヌキのしっぽが、毒薬が、辛子明太子がつまっているのだという。少し前に流行っていた脳の中味を漢字で表現する脳内メーカーを思い出す。脳テン博士自身には童話やマンガの本がいっぱいつまっているそうだ。もしかしたら、この脳テン博士は長さん自身なんじゃないかしらと思う。私の脳も見て欲しいけれど、変なものがつまっていたら嫌だなあ。

    ☆第11話「空の彼方への巻」…ある男がいた。この男は「ああイヤダイヤダつくづく人間がいやになった」といつも思っていた。すると、ある日突然、手がタコになり、足がゾウになり、背中はラクダに、おなかはカバに、頭にはアイベックスの角が生え、鼻はゾウアザラシのオスに、首はキリンに、尻尾はクジラに、目と舌はカメレオンに、ライオンの鬣が生え、ヒョウの模様になり、シマウマの模様になり、ヤマアラシのトゲが生え、コンドルの羽が生え、空の彼方へ飛んでいってしまった。人間、生きていれば不満に思うこともあるだろう。だからと言って、こんなわけのわからない生きものには絶対になりたくない。空は飛んでみたいけれど。このまま普通の人間でいいじゃないか、そうとも、普通の人間で十分だ、と心の中で念を押してしまった。

    ☆第18話「秋深しの巻」…主人公が山のほうへ行ってみると、なにやら怪しいものを発見する。草の中へ隠れたそれをよく調べると、人間についているボーコーであった。何故ボーコーが勝手に歩いているのか理由を聞くと、ボーコーは「オシッコは自由に外へ出ていくけどわたしは人間から出られないの」「それで自由をもとめてとび出したわけです」と言う。しかし、ボーコーのいなくなった人間は困っているにちがいないと主人公が諭すと、ボーコーはジャーと涙(たぶん尿)を流して泣き出し、「わたしはやっぱりかえります」と言い、主人公と仲良く手をつなぎ持ち主の元へと帰っていくのだった。この話はリアルだとかなり気持ち悪い構図のはずだが(何にせよ相手は膀胱だ)、長さんの手に掛かるとかなり愛らしい様子に見え、まるで迷子の少年を家族の元へ送り届けるような感慨深さがあった。

    ☆第20話「ワニに住むの巻」…ある日、主人公が散歩をしていると、子どもたちが大きなワニを虐めていた。そこで子どもたちに百万円をやってワニを助けてやった。浦島太郎のように。助けたワニが「おなかに入ってごらん」と言うのでそのようにすると、何とも具合が良いのであった。ある日、ワニが川の方へ行くとメスのワニにあった。どうやらワニの恋が始まったらしく、邪魔になった主人公は追い出されてしまったが、やがて失恋したワニは可哀想にガリガリにやせ細ってしまった。しかし、やっと元気になって主人公はまたワニの中に住んでいるのだった。ワニの体に窓が開いていてカーテンまでついている絵は凄いとしか言えない。長さん以外の誰にも考えつかないだろうな。失恋したワニは可哀想だが、ちょっぴり可愛かった。ワニを助けるために子どもたちに百万円を与える辺りが特にブラックで笑えた。

    ☆第26話「ひっぱる犬の巻」…犬が人間の皮をひっぺがすと、人間の正体が明らかになる。ある女はハゼであり、ある男はダンゴ虫であり、ある人はバフンウニであった。この犬は人間の皮のコレクターだろうか?それとも神の使いだろうか?また人間をねらっている。その人の正体はなんと犬であった。犬たちは仲良しになり二匹連れだってどこかへ消えていった。主人公はこれでとうぶん人間は安全だろうとホッとする。犬は仲間を探していたのかしら。ちょっぴり可愛い。それにしても、洗濯物か干物であるかのように、人間の皮がズラリと並んでいる絵には何とも言いがたいものがある。

    ☆第28話「悩めるゾウにあうの巻」…トリがたくさん飛んでくる。と思ったら何やら様子が違う。ネズミ色をしている。山に張り付き、また飛んでいく。それから妙にツルツルしたゾウがやって来る。「はやくもとにもどってチョーダーイ」。どうやらトリのような群れはゾウのシワだったらしい。シワが逃げ出してツルツルピカピカになったゾウは仲間から笑われてしまい悲しくなってシワを追いかけて来たのだ。シワたちは気の毒になって元に戻ったのであった。ゾウはゾウらしく。人間は人間らしく。それが一番だ。ツルツルピカピカなゾウも一匹くらいいたって別にいいとは思うが、たぶんそれは不自然なことなのだろう。ゾウにとってはシワというものがアイデンティティのような欠くべからざる何か大切なものなのだろう。が、人間のメスである私としてはシワは少ない方がやっぱり嬉しい。人間にとってのゾウのシワに当たるものとはいったい何なのだろう?うーん、誰か教えてください。

    ☆第31話「夜の子どもの巻」…夜、子どもがやって来て、手からビヨーンと巨大なとび出しナイフを取り出し、「かねをだせーっ」「みぐるみぬいでおいていけ!パンツもぬげーっ」「べんきょうせいよべんきょうべんきょうだ!」などと叫ぶ。主人公が腰を抜かすと、青白い光を放つナイフは「この子はけっしてわるい子ではありません」「まねをしているだけなのです」と弁解する。やがて子どもはナイフの舟に乗って空へ帰って行った。どうやらナイフが月で、人間の真似をする子どもは月の王子様だったらしい。話自体は面白かったけれども、人間ってヤツは、他の星の人から見たらこんなに物騒なものなのかしらと少し危機感のようなものを覚えた。

    他にも色々面白い話はあるけれど、長くなるので取り敢えず以上で終わりにします。

  • いつも大好きな長さんの世界。

    ナンセンスでどこに行くの?ってわくわくしながら読んでいる。

    今回はちょっぴり大人な苦い要素も加わっていて、それはそれで
    物凄く楽しめた。

    私は膀胱のくだりがとってもかわゆくて好き。
    一緒にてをつないで歩きたい。

  • くだらなく面白い。

  • 『人間物語』は、しばらく前に本屋でみかけて、チョーさんの本や~と手にとった。中を見ると、チョーさん漫画。これが『やわらかい頭』風なのだった。買ってしまうかとしばし迷ったが、『やわらかい頭』とかなり似てるナーと思って、そっちをもう一度読んでからにしようと棚に戻して帰った。

    私は『やわらかい頭』が好きで、好きで、好きで、そのむかし古本屋で手に入れたチョーさんの『怪人通信』(これも笑える本で、とくに「ええっ、何だって?」という、おかしな人生相談風のQ&Aが私は好きなのだった)とともに、にやにやとしながらよく読んでいた。貸出の旅にもよく出ていたせいか、あるとき見あたらなくなってしまい、無くしたかと探しまわって悲しんでいたが(版元のリブロポートはもうない会社なのである)、大事にしまい込んでいたものが先日発見された。

    Weフォーラムから帰ってきて、図書館をぶらついてみると、『人間物語』があったので、いそいそ借りて帰る。『人間物語』と『やわらかい頭』は、似ているけれど(脱腸がうろうろしていたり、チェーンソーがなんでもかんでも切りまくっていたり)、別の漫画だった。

    巻頭に、チョーさんの字が刷ってある。

    前略 この漫画は、
    思いあがった人間が、
    生きものや、自然からチクチクと毎回
    しっぺ返しをうける物語です。

    そうか、チクチクとしっぺ返しか、と思いながらぴらぴらと読むチョーさん漫画の楽しさ。

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著者プロフィール

1927年、東京に生まれる。漫画、絵本、イラストレーション、エッセイなどさまざまな分野で活躍。絵本に、『おしゃべりなたまごやき』(文芸春秋漫画賞)、『ぞうのたまごのたまごやき』(小学館絵画賞)、『ふゆめがっしょうだん』(絵本にっぽん大賞・以上福音館書店)、『はるですよふくろうおばさん』(講談社出版文化賞絵本賞・講談社)、『さかさまライオン』(絵本にっぽん賞)、『ゴムあたまポンたろう』(日本絵本賞・以上童心社)、『キャベツくん』(絵本にっぽん大賞・文研出版)など多数ある。巌谷小波文芸賞受賞。路傍の石幼少年文学賞受賞。

「2018年 『やまがあるいたよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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